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第二章 本部編
63 天使登場
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「おはようございまーす」
次の日、俺は朝食を食べた後、研究所へ行き実験室の扉を開けた。
「おはようございます! サタローくん」
「……」
「ロキくんあいさつは大切ですよ!」
「わかったから! 触るな!……はよ」
相変わらず思春期丸出しのロキとそんなロキに説教するラケルさんが俺を出迎えた。
昨日は爆発を見ただけでこれといったことはしていないが、今日からは本格的に手伝いをすることとなるわけだ。朝からウッキウキだった。
「それで今日は何をすればいいんですか?」
「今日はポーションを作ってもらいます!」
そう言ったラケルさんはポーションの役割と作り方を説明してくれた。
この世界におけるポーションとは、主に体力回復や治癒薬として使われているらしい。
「作り方はとても簡単です。薬草と聖水を鍋に入れて混ぜながらほんの少し魔力を加えるだけです!」
「魔力を入れる量とその人物が持つ魔力の質で、出来上がるポーションの質も変わってくる」
「質?」
「ポーションの質は大きく分けて3段階あります。簡単な傷を治せるC級ポーション、体力回復と治癒薬を兼ね備えるB級ポーション、そして骨折なんかの重症な怪我も治せるA級ポーションですね」
ラケルさんの説明に前世でのRPGのゲーム解説を聞いているような気分になり、俺の心はワクワクしていた。
しかし、ロキの魔力という言葉にハッとなる。
「でも、俺魔力ないんだけど……」
「? 何言ってんだよお前にはちゃんと魔力が流れているだろ」
「そうですよ?」
俺の言葉にロキとラケルさんは首を傾げている。
そっかギルとアルにもらった魔力があるからその魔力を使えばいいのか。二人はハーフエルフと獣人だから、俺の魔力も敏感に感じ取れるようだ。
でも、せっかくもらった魔力をポーション作りに使ったら俺の寿命が縮んでしまうのではと心配になる。なぜパスカルは俺にこの役割を与えたのか疑問に思った。
不安が浮かび上がる俺の気持ちとは裏腹にラケルさんがポーション作りの準備に取り掛かる。
「それじゃあ早速ポーション作り……あぁぁぁ!!」
「どうしたんですか!?」
ラケルさんが薬草と書かれた箱を開けるや否や大きな悲鳴声をあげた。
驚いて俺がラケルさんに近づき箱の中を見ると中身はすっからかんだった。
「こっちも空っぽだ……」
実験室の別の場所からロキの声が聞こえて、そちらを振り返ると棚の中にあった空っぽの瓶を持っていた。おそらくその中にポーションに使われる聖水が保管されていたのだろう。
「昨日で使い切っちゃったですね」
「はぁ、とりに行かないとな……」
どうやら昨日の実験で薬草とポーションを使い切ってしまったらしい。二人は大きなため息をついている。
採りに行くだけなら簡単なのではと嫌そうな顔をしている二人の姿を不思議に見ている俺。
すると実験室の扉が開きパスカルが入ってきた。
「どうだ? ポーション作りははかどっているか……って何を項垂れているんだ?」
二人の姿を俺と同じように不思議そうに見ているパスカルだが、俺が事情を話すとパスカルも二人の姿に納得した。
「なら、わしがとってきてやろう。ついでにサタローも連れて行こう」
「本当ですか!? パスカルさん、サタローくん!」
「まじかよ、いいのか!?」
パスカルの言葉に目を輝かせて俺に詰め寄る二人。別に薬草と聖水を採ってくるぐらい俺にでもできるし、ポーションの作り方を教えてもらうんだから俺が取ってくるのが礼儀だろう。
「べ、べつにいいですけど」
俺の返答にいつも喧嘩している二人が手を取り合って感動している。あまりの大袈裟な反応に怖くなる俺。パスカルの方を見るとニヤニヤしている。
──やばいな、なんか嫌な予感がする……
パスカルがこんな反応する時は大抵俺にとって良くないことがことしか起きないのが定番だ。
でも、いいって言っちゃったしこれからきっと採りに行くこともあるだろうから今更やめるなんていえなかった。
「で、薬草と聖水ってどこにあるんだよ?」
ロキとラケルさんを実験室に残して研究所の外に出たら俺とパスカル。
「ここから少し離れた森にあるが、薬草と聖水の場所は少し離れているから薬草採りと聖水汲みでそれぞれ人手が必要だ。だからこいつらを呼んでおいた」
そう言ったパスカルの言葉を合図に遠くから小さい子どもが三人俺のところへ駆け寄ってきた。
というか、「呼んでおいた」ってこうなることがわかっていたかのような物言いに眉間にしわをよせ怪しむ俺。
しかし目の前からくる三人のうちの一人にはだいぶ見覚えのある天使がいたものだから、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。
「サタローにいちゃーん!」
「マオ!」
可愛い猫耳としっぽをゆらゆら揺らしながら俺の胸に飛び込んできたのは猫の獣人のマオだった。
こう見えても魔法軍の第一連隊の隊員だ。
そしてマオとは別に青い髪と赤い髪をした男女のちびっ子が俺の近くまで駆け寄ると不思議そうに俺の顔を見上げていた。
マオを抱っこしたまま二人を見下ろすと二人の額からは白いツノが2本生えていることに気づく。
「もしかして! マオが言ってたサタロー?!」
「おねぇちゃん、目上の人にはさん付けしないと失礼だよ……」
俺のことをまんまるなお目目でジーッと見つめているのは赤髪のポニーテールの女の子。そしてその女の子をお姉ちゃんと呼んでいるのは青髪の男の子だった。
「えーっと、だれかな?」
次の日、俺は朝食を食べた後、研究所へ行き実験室の扉を開けた。
「おはようございます! サタローくん」
「……」
「ロキくんあいさつは大切ですよ!」
「わかったから! 触るな!……はよ」
相変わらず思春期丸出しのロキとそんなロキに説教するラケルさんが俺を出迎えた。
昨日は爆発を見ただけでこれといったことはしていないが、今日からは本格的に手伝いをすることとなるわけだ。朝からウッキウキだった。
「それで今日は何をすればいいんですか?」
「今日はポーションを作ってもらいます!」
そう言ったラケルさんはポーションの役割と作り方を説明してくれた。
この世界におけるポーションとは、主に体力回復や治癒薬として使われているらしい。
「作り方はとても簡単です。薬草と聖水を鍋に入れて混ぜながらほんの少し魔力を加えるだけです!」
「魔力を入れる量とその人物が持つ魔力の質で、出来上がるポーションの質も変わってくる」
「質?」
「ポーションの質は大きく分けて3段階あります。簡単な傷を治せるC級ポーション、体力回復と治癒薬を兼ね備えるB級ポーション、そして骨折なんかの重症な怪我も治せるA級ポーションですね」
ラケルさんの説明に前世でのRPGのゲーム解説を聞いているような気分になり、俺の心はワクワクしていた。
しかし、ロキの魔力という言葉にハッとなる。
「でも、俺魔力ないんだけど……」
「? 何言ってんだよお前にはちゃんと魔力が流れているだろ」
「そうですよ?」
俺の言葉にロキとラケルさんは首を傾げている。
そっかギルとアルにもらった魔力があるからその魔力を使えばいいのか。二人はハーフエルフと獣人だから、俺の魔力も敏感に感じ取れるようだ。
でも、せっかくもらった魔力をポーション作りに使ったら俺の寿命が縮んでしまうのではと心配になる。なぜパスカルは俺にこの役割を与えたのか疑問に思った。
不安が浮かび上がる俺の気持ちとは裏腹にラケルさんがポーション作りの準備に取り掛かる。
「それじゃあ早速ポーション作り……あぁぁぁ!!」
「どうしたんですか!?」
ラケルさんが薬草と書かれた箱を開けるや否や大きな悲鳴声をあげた。
驚いて俺がラケルさんに近づき箱の中を見ると中身はすっからかんだった。
「こっちも空っぽだ……」
実験室の別の場所からロキの声が聞こえて、そちらを振り返ると棚の中にあった空っぽの瓶を持っていた。おそらくその中にポーションに使われる聖水が保管されていたのだろう。
「昨日で使い切っちゃったですね」
「はぁ、とりに行かないとな……」
どうやら昨日の実験で薬草とポーションを使い切ってしまったらしい。二人は大きなため息をついている。
採りに行くだけなら簡単なのではと嫌そうな顔をしている二人の姿を不思議に見ている俺。
すると実験室の扉が開きパスカルが入ってきた。
「どうだ? ポーション作りははかどっているか……って何を項垂れているんだ?」
二人の姿を俺と同じように不思議そうに見ているパスカルだが、俺が事情を話すとパスカルも二人の姿に納得した。
「なら、わしがとってきてやろう。ついでにサタローも連れて行こう」
「本当ですか!? パスカルさん、サタローくん!」
「まじかよ、いいのか!?」
パスカルの言葉に目を輝かせて俺に詰め寄る二人。別に薬草と聖水を採ってくるぐらい俺にでもできるし、ポーションの作り方を教えてもらうんだから俺が取ってくるのが礼儀だろう。
「べ、べつにいいですけど」
俺の返答にいつも喧嘩している二人が手を取り合って感動している。あまりの大袈裟な反応に怖くなる俺。パスカルの方を見るとニヤニヤしている。
──やばいな、なんか嫌な予感がする……
パスカルがこんな反応する時は大抵俺にとって良くないことがことしか起きないのが定番だ。
でも、いいって言っちゃったしこれからきっと採りに行くこともあるだろうから今更やめるなんていえなかった。
「で、薬草と聖水ってどこにあるんだよ?」
ロキとラケルさんを実験室に残して研究所の外に出たら俺とパスカル。
「ここから少し離れた森にあるが、薬草と聖水の場所は少し離れているから薬草採りと聖水汲みでそれぞれ人手が必要だ。だからこいつらを呼んでおいた」
そう言ったパスカルの言葉を合図に遠くから小さい子どもが三人俺のところへ駆け寄ってきた。
というか、「呼んでおいた」ってこうなることがわかっていたかのような物言いに眉間にしわをよせ怪しむ俺。
しかし目の前からくる三人のうちの一人にはだいぶ見覚えのある天使がいたものだから、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。
「サタローにいちゃーん!」
「マオ!」
可愛い猫耳としっぽをゆらゆら揺らしながら俺の胸に飛び込んできたのは猫の獣人のマオだった。
こう見えても魔法軍の第一連隊の隊員だ。
そしてマオとは別に青い髪と赤い髪をした男女のちびっ子が俺の近くまで駆け寄ると不思議そうに俺の顔を見上げていた。
マオを抱っこしたまま二人を見下ろすと二人の額からは白いツノが2本生えていることに気づく。
「もしかして! マオが言ってたサタロー?!」
「おねぇちゃん、目上の人にはさん付けしないと失礼だよ……」
俺のことをまんまるなお目目でジーッと見つめているのは赤髪のポニーテールの女の子。そしてその女の子をお姉ちゃんと呼んでいるのは青髪の男の子だった。
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