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第二章 本部編
56 不意打ち
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「全く油断も隙もないわ! あなた達もわかってるならサタローを出迎えに来させるんじゃないわよ!」
キースさんがエドガー王子を連れて行った後、リズは男たちの前に立ち腰に手を当てて文句を言い始めた。
「わしは止めた」
「俺も止めたぞ、こいつが勝手に連れてきたんだ」
「げっ! バラすなよギル!」
「ふーん、あんたの仕業ねレオ」
リズはレオの方に顔を向け、目を細め眉間にシワを寄せ険しい顔をしている。流石のレオも怒ったリズには敵わないようで、目を泳がせながら言い訳し始める。
「いやー、まさかエドガー様があそこまでサタローに興味持つとは思わなくて……」
「はぁ、ったくしっかり守ってあげなさいよね。私のように」
魔法軍の団長、副団長、第一連隊長にそんな言葉を言えるのはこの国においてリズぐらいであろう。しかし今の俺にはそんな逞しい男たちがいる中でもリズが一番頼りになるんじゃないかと思ってしまった。
誇らしげに胸を張るリズにずっとそばにいたソフィさんが口を開く。
「助けるのはいいのですが、仮にもこの国の姫が実の兄に向かって飛び蹴りは流石にはしたなさすぎます」
「……いいじゃない、一番やりやすかったのよ」
凄い勢いで吹っ飛ばされてるとは思ったが、まさか飛び蹴りしていたなんて、それもあんな走りにくそうなヒールの靴を履いてだ。この国の姫はあまりにも逞しすぎると思った。
「そうだぞ、あれは流石に王女としてというか女の子としていただけないな」
パスカルもリズに対して注意をする。
「ぶー、何よ私の可愛いサタローに手を出したりするからよ! 注意するのはこの腑抜け男子共よ!!!」
「「「はい、すみません」」」
いつのまにリズのものになったのだろうか、そんなことよりも軍の中でもトップの者たちがいるというのに、誰一人リズに逆らえる者はおらずアルもギルもレオでさえも素直に謝っている。クラスの学級委員長みたいだ。
俺がパスカルの注意を無視して来てしまったのに、申し訳ないがなんか面白いもの見れた。
「まったく、うちの男どもは……さ、帰るわよソフィ」
「え、もう戻られるんですか?」
「そう、戻るわよ」
意外にもあっさり戻ろうとするリズに渋ったのはソフィさんの方だった。渋っているソフィさんの腕を引っ張って城の方に帰って行った。
颯爽と現れて俺を助けて去って行ったリズは、まるで王子様のようだった。
「なんだったんだ……」
「お前、レオわざとじゃないよなぁ」
「いだだだだっ、わざとじゃないって! 忘れてたんだよ! ほんとごめんって!」
「俺じゃなくてサタローに謝れ!」
リズが去ったのを確認したギルはレオのこめかみを拳でぐりぐりし説教する。
レオが怒られているが、俺が二人の言うことを聞かずにここに来てしまったのでレオに謝られるような立場ではない。
「ギル、いいよ。俺も二人の言うこと聞かずに来ちゃったし」
「サタローもこう言ってるだろ!」
「ったく」
なんとか俺の言葉でレオにぐりぐりするのをやめてくれた。
「そんなことはいいからさっさと本部に戻るぞ」
パスカルの声で辺りを見回すと、さっきまで大量にいた兵士たちの姿はもうそこにはなかった。俺たちがわちゃわちゃしている間に皆移動したようだ。
アルの出迎えに来たはずなのに、一体何をしているんだ。
アルの方を見ると苦笑いをしていた。
俺以外が本部の方に向かって歩き始める。
俺もみんなの後に続き歩き出すが、アルにまだちゃんとおかえりの挨拶ができていなかったのを思い出す。
アルの方に小走りで近寄り、服の後ろを少し引っ張る。
「アル!おかえりなさい、あとお疲れ様」
「あぁ、サタローただいま、元気にしてたかい?」
「うん、なんとかやってこれてるかな。みんなに助けられてるけど」
「そうか……」
俺が照れながらみんなに助けられながらなんとかやっていけていると報告をする。でも何故かアルは整った顔を少し歪ませた。
なんか俺変なこと言っちゃったかなと心配になる。
「アル?」
「あぁ、わたしがいない間、よく頑張ったね」
アルはそういうと俺の頭に手を置き優しく微笑んだ。なんだか親のような言い方で、まるで俺を子ども扱いしているようだ。
「俺だって、みんなに頼んで魔力もらったんだよ! 迷惑もかけちゃったけど、少しは成長したんだ」
「成長したなら、さっきのキスぐらいちゃんと拒否しなくちゃダメだよ」
「あれは! 不意打ちだったから……わかってればよけれっ!? ──んっ! ンンッ」
アルがさっきのエドガー王子とのキスのことを言い出したので、反論しようとしたら急にキスされた。
あまりにも不意打ちだったので、交わすことも出来ずアルのキスを受け入れる。
久しぶりのアルのキスは、少し荒々しく俺の覚えているアルのキスとは少し違っていた。
先程の時のように、胸を押すがびくともしない。
「っふ……んっ、はぁ」
「上書き、もうダメだよ勝手にキスされちゃ」
「……っ、ぅん」
訳もわからずアルの言葉に頷いた。
酸欠でフラフラきている俺を胸に抱き寄せて息が整うまで、アルに支えられながら二人でその場に立ち尽くしていた。
キースさんがエドガー王子を連れて行った後、リズは男たちの前に立ち腰に手を当てて文句を言い始めた。
「わしは止めた」
「俺も止めたぞ、こいつが勝手に連れてきたんだ」
「げっ! バラすなよギル!」
「ふーん、あんたの仕業ねレオ」
リズはレオの方に顔を向け、目を細め眉間にシワを寄せ険しい顔をしている。流石のレオも怒ったリズには敵わないようで、目を泳がせながら言い訳し始める。
「いやー、まさかエドガー様があそこまでサタローに興味持つとは思わなくて……」
「はぁ、ったくしっかり守ってあげなさいよね。私のように」
魔法軍の団長、副団長、第一連隊長にそんな言葉を言えるのはこの国においてリズぐらいであろう。しかし今の俺にはそんな逞しい男たちがいる中でもリズが一番頼りになるんじゃないかと思ってしまった。
誇らしげに胸を張るリズにずっとそばにいたソフィさんが口を開く。
「助けるのはいいのですが、仮にもこの国の姫が実の兄に向かって飛び蹴りは流石にはしたなさすぎます」
「……いいじゃない、一番やりやすかったのよ」
凄い勢いで吹っ飛ばされてるとは思ったが、まさか飛び蹴りしていたなんて、それもあんな走りにくそうなヒールの靴を履いてだ。この国の姫はあまりにも逞しすぎると思った。
「そうだぞ、あれは流石に王女としてというか女の子としていただけないな」
パスカルもリズに対して注意をする。
「ぶー、何よ私の可愛いサタローに手を出したりするからよ! 注意するのはこの腑抜け男子共よ!!!」
「「「はい、すみません」」」
いつのまにリズのものになったのだろうか、そんなことよりも軍の中でもトップの者たちがいるというのに、誰一人リズに逆らえる者はおらずアルもギルもレオでさえも素直に謝っている。クラスの学級委員長みたいだ。
俺がパスカルの注意を無視して来てしまったのに、申し訳ないがなんか面白いもの見れた。
「まったく、うちの男どもは……さ、帰るわよソフィ」
「え、もう戻られるんですか?」
「そう、戻るわよ」
意外にもあっさり戻ろうとするリズに渋ったのはソフィさんの方だった。渋っているソフィさんの腕を引っ張って城の方に帰って行った。
颯爽と現れて俺を助けて去って行ったリズは、まるで王子様のようだった。
「なんだったんだ……」
「お前、レオわざとじゃないよなぁ」
「いだだだだっ、わざとじゃないって! 忘れてたんだよ! ほんとごめんって!」
「俺じゃなくてサタローに謝れ!」
リズが去ったのを確認したギルはレオのこめかみを拳でぐりぐりし説教する。
レオが怒られているが、俺が二人の言うことを聞かずにここに来てしまったのでレオに謝られるような立場ではない。
「ギル、いいよ。俺も二人の言うこと聞かずに来ちゃったし」
「サタローもこう言ってるだろ!」
「ったく」
なんとか俺の言葉でレオにぐりぐりするのをやめてくれた。
「そんなことはいいからさっさと本部に戻るぞ」
パスカルの声で辺りを見回すと、さっきまで大量にいた兵士たちの姿はもうそこにはなかった。俺たちがわちゃわちゃしている間に皆移動したようだ。
アルの出迎えに来たはずなのに、一体何をしているんだ。
アルの方を見ると苦笑いをしていた。
俺以外が本部の方に向かって歩き始める。
俺もみんなの後に続き歩き出すが、アルにまだちゃんとおかえりの挨拶ができていなかったのを思い出す。
アルの方に小走りで近寄り、服の後ろを少し引っ張る。
「アル!おかえりなさい、あとお疲れ様」
「あぁ、サタローただいま、元気にしてたかい?」
「うん、なんとかやってこれてるかな。みんなに助けられてるけど」
「そうか……」
俺が照れながらみんなに助けられながらなんとかやっていけていると報告をする。でも何故かアルは整った顔を少し歪ませた。
なんか俺変なこと言っちゃったかなと心配になる。
「アル?」
「あぁ、わたしがいない間、よく頑張ったね」
アルはそういうと俺の頭に手を置き優しく微笑んだ。なんだか親のような言い方で、まるで俺を子ども扱いしているようだ。
「俺だって、みんなに頼んで魔力もらったんだよ! 迷惑もかけちゃったけど、少しは成長したんだ」
「成長したなら、さっきのキスぐらいちゃんと拒否しなくちゃダメだよ」
「あれは! 不意打ちだったから……わかってればよけれっ!? ──んっ! ンンッ」
アルがさっきのエドガー王子とのキスのことを言い出したので、反論しようとしたら急にキスされた。
あまりにも不意打ちだったので、交わすことも出来ずアルのキスを受け入れる。
久しぶりのアルのキスは、少し荒々しく俺の覚えているアルのキスとは少し違っていた。
先程の時のように、胸を押すがびくともしない。
「っふ……んっ、はぁ」
「上書き、もうダメだよ勝手にキスされちゃ」
「……っ、ぅん」
訳もわからずアルの言葉に頷いた。
酸欠でフラフラきている俺を胸に抱き寄せて息が整うまで、アルに支えられながら二人でその場に立ち尽くしていた。
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