異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第二章 本部編

36 レオンハルト登場

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 誰もいないはずの裏庭で叫んだ俺の愚痴に後ろの方から返答の声が聞こえ、俺は驚きベンチから飛び上がる。辺りを見回すと、ベンチの後ろに耳と尻尾が生えた獣人の男が腕を頭の後ろで組み笑って立っていた。なんかこの場面デジャヴ……とか一瞬思った。

 そんなことよりもこの男なんて言った?
 俺のこと探してると言っていた気がする。もしかするとレオンハルトなのだろうか。目の前の男をよく観察すると小さな丸い耳と長い尻尾がゆらゆらと揺れている。ライオンの耳と尻尾はたぶんこんな感じだった気がするが、動物園に行ったのなんて小学生以来で記憶もかなり曖昧だ。
 聞いたほうが早いので恐る恐るレオンハルトらしき人物に尋ねてみる。
 
「あのー、もしかしてレオンハルトさんですか?」
「いえーす!俺が百獣の王の獣人レオンハルト様でーす!」

 ──やっぱりそうだった。それにしてもテンション高いな。
自身をレオンハルトと言った男はベンチを軽々と飛び越え腰を下ろす。

「とりあえず座りなよ、話をしよう!」
「え……あ、はい」

 彼は笑顔でベンチの空いている場所を手で叩き、そこに座るように俺に促した。
 登場の仕方がいきなりだったので、びっくりしたが優しい人で少し安心した俺は彼の隣に座った。

「話はリズから聞いてるよ~、面白い身体してるんだってね、えっとなんて名前だっけ……」
「サタローです!」
「あぁ、そうそうサタローくんね」

 彼は終始笑顔で俺に話しかけてくれており、俺の想像していた恐ろしい部分など皆無だった。パスカルもフィルも微妙な顔してたけど全然いい人ではないか!ぶっちゃけ初対面だとギルのほうがよっぽど怖かった。

 どうやら昨日の約束通りリズはレオンハルトに俺の話をしておいてくれたようで、彼も俺の体のことは承知してくれているので話がスムーズにできそうだ。

「それでレオンハルトさん……」
「ストーップ!レオンハルトなんて改まった言い方やめようぜー、俺たち年もたいして変わらないんだし、俺のことはレオでいいからさ俺もサタローって呼ぶし」
「うん、わかったよレオ」
「うんうん、素直でいい子じゃないか~」

 俺と年齢が大して変わらないと言ったレオの年齢を尋ねるとなんと18歳と俺と1歳しか年が変わらなかった。その年齢で隊長を務めているってことは相当優秀なんだろう。コミュ力も高いし何より耳と尻尾がふさふさしていて触りたい衝動に駆られる。
 アルやギルも親切でとても話しやすいがフィルやリズなどの同世代の者と話すのは、気楽に話せていいものだ。リズはこの国の王女だから本来気楽に話していい存在ではないのだけれど。

 歳が近いことを知りより頼みやすくなった俺はレオの方を向く。

「話はリズから聞いてると思うけど、俺は自分で魔力を作れないんだ。だから誰かに魔力をもらう必要があって、初対面でこんなこと言うのは本当に失礼なんだけど……レオの魔力を俺に分けてくれないかな」

 真剣な顔でレオに頼む俺だが、やはり自分から頼むのは恥ずかしい。
 アルの時は泣きべそ掻いてた俺に彼の方から言ってくれた。ギルの時も自分から言おうとパスカルと作戦を立てたのだが、どれも失敗に終わり結局ギルの方から来てくれた。今まで自分がどれだけ周りに救われてきたのかよくわかる。

 そして今回初めて自分から頼んでみたが、レオの反応が怖くて目線を下にし顔を見ないようにする。

 なんだこの告白して相手の返事を待つときのような緊張感は、前世での俺の最初で最後の告白は呆気なく散ったのは今も記憶に新しい。
 返事が遅く余計に怖くなった俺は、レオの表情を確認するために顔を上げる。

 彼は出会った時と全く表情は変わっておらず笑顔だった。

「もっちろーんいいよー!俺とサタローの仲じゃないのー」

 レオは俺の肩に手を回しテンション高くそう答えた。出会って数分の仲とは一体どんなものなのだろうか。俺の感覚では初対面からの抱かれたいに快くオッケーを出すものではないのだが、嫌な顔ひとつしない彼は他人と距離を詰めるのが早いようだ。

「ほんとか、ありがとう」

 照れながらもレオの答えに感謝する。するとレオは俺の肩を抱いたままベンチから立ち上がる。

「そんじゃ早速やりますかー」
「ちょちょちょっと待った! 今日じゃなくていいから!」

 レオの行動の速さに驚きながらも全力で拒否をする。昨日ギルから魔力をもらったばかりだからまだ魔力には余裕がある。今日は頼みを聞いてほしかっただけで、魔力まで貰うつもりはない。

「えー、そんなこといわずにさー、いいじゃん暇だし今からやろーよー」

 なんだこの軽い返しは、面倒くさいナンパ男みたいだ。やりたい時にやるのはなんか違う、これは生命維持のための行為であり、欲を満たすためのものではない。好きな時にやるようになってしまうのはよくない。そこはきっちり弁える必要があると思う。

「俺から頼んでおいて悪いんだけど今日じゃなくて大丈夫だから! 二日後もしくは三日後でいいんだ!」

 俺の肩を抱いていたレオの手を掴み下ろし、彼の申し入れを丁寧に断る。彼の好意はありがたいし、自分勝手で非常に申し訳ないのだがこれからずっと続くことだからちゃんとしなくてはいけない。

「うーん、今日の方がいいと思うよ? これはサタロー君のためだ」
「え?」
「まぁ、したいのもあるけどねー、俺男とするの初めてだから楽しみなんだー」

 俺の拒否も笑顔で意味深な返しをする。俺のためといったが彼の言っていることは本当なのだろうか……ずっと笑顔を絶やさないから逆に胡散臭く見えてきた。楽しみーとか言ってるし……

「ほんと、大丈夫だか、ら……」

 もう一度彼の誘いを断ろうとした俺だが、目の前が歪んで見え始める。

 ──なんだこれ? 
 おかしい、この症状は魔力が無くなった時に起こる現象だ。

 足がフラフラして立っていられず、裏庭の芝生の上に座り込む。視界がどんどん狭くなっていき全身から力がどんどん抜けていき、そのまま上半身も芝生の上に倒れ込む、

「ほら、だから言ったじゃん」

 薄れゆく意識の中でしゃがんで俺の顔を見ながらレオが相変わらずの微笑みのままそう言ったのが聞こえた。それを最後に俺は意識を手放した。



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