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第二章 本部編
28 ギルの部屋
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王都に戻ってきてから数日が経った。
本部に戻った次の日には俺の部屋が用意されていて、仕事が早くて驚いた。その日にギルから魔力を貰ったがそこからさらに四日が経った。つまり魔力を貰わないといけない日になったと言うことだ。
明日でもいいんだけど、死ぬ直前にもらうのはやはりどこか怖いので一日前に貰うようにしていた。
前回貰った時はギルが俺の部屋に来てくれたのだが、今回は前回来てくれた時間を過ぎてもギルは部屋に現れなかった。
というか、この四日間ギルの姿を全然見ていない。パスカルもだが二人ともとても忙しそうにしている。アルも全然帰ってこないし、フィルは任務やトレーニングで忙しい様子だった。
この世界の友達が全然いない俺は、食堂で料理人にレシピを教えるか、裏庭でぼーっとしているかの二つしかすることがなくとにかく暇だった。
あれ以来、裏庭のベンチに座っていても王女様は現れなかった。
忙しいギルに頼むのも気がひけるのだが、頼まない方が後から彼に怒られるので、そーっと部屋を出た俺は一人薄暗い廊下を歩きギルの部屋に向かった。
ギルの部屋に着くと扉の隙間からは明かりが漏れており、まだ寝ていないのがわかる。時刻は十一時を回っている。朝の早い兵士達はもう就寝している時間だ。
俺は軽くノックすると、ギルの入れという声が聞こえた。俺はそーっと扉を開け中に入ると、彼は机に向かって何かの書類にペンを走らせていたその手を止めてこちらを向く。
「あぁ、サタローかどうした」
「あの、その、魔力が、欲しくて」
やはり自分から頼むのは恥ずかしい。ギルは俺の言葉に机に置いてあったカレンダーを見る。
「ああ、もうそんな日か、すまないがベッドでちょっと待っていてくれ」
「う、うん」
ギルは止めていたペンをまたスラスラと走らせる。やっぱり忙しんだよな、なのに文句も言わずに俺に時間を割いてくれる。有難いのだが申し訳なさがどんどん積もっていく。
俺はギルに言われた通り置かれていたベッドに座った。何気にギルの部屋に入るのは初めてだ。キョロキョロと部屋を見渡してみると、綺麗に整頓されているというか無駄なものが何もないギルらしい部屋だった。
そんなことよりもやっぱり忙しそうなギルに、今日はやめた方がいいのかと尋ねようとしたがきっと明日も忙しいだろうから言うのを止める。
別の人を探せばいいのかもしれないが、本部を歩き回っていても訓練やらトレーニングやらで人が全然見つからない。
王都アダマスの魔法軍の本部にはアルが師団長を務める第一師団が配備されており、第一師団には第一連隊から第三連隊までが存在しているらしい。
唯一の友達であるフィルは第三連隊に所属しているのだが、連隊長が相当の変わり者らしく忙しいらしく、そのせいなのか最近全然会えていない。
第一と第二連隊も別の任務で出かけているらしい、正確にいえばその中にも細かく隊が分かれているため全員が本部を離れているわけではないらしいが、俺にはよくわからない話だった。
「すまない待たせたな」
「あ、いや大丈夫」
ギルの仕事も一段落したようで、俺の座っているベッドに近づいてきた。その顔はやはりどこか疲れているようだ。
疲れを取るための魔法とかが俺に使えたらいいのだが、そんなものがあるのかもわからないし、例えあったとしても俺には使えない。
もどかしさと申し訳なさとで俯く俺の顎にギルは手を添えると上を向かせる。所謂、顎クイってやつだ。
「どうした悩みごとでもあるのか?」
「……ギル疲れてるのにごめん、俺のこんなことに付き合わせちゃって」
俺の言葉に深くため息を吐いたギルは、俺の顎から手を離すとそのままデコピンしてきた。この痛みは前にも感じたことあるなと思いながら、額を手で抑える。
「痛い……何すんだよ」
「馬鹿か、俺の仕事はどうにでもなるがお前の身体はそうはいかんだろうが」
「そう、だけ、ど」
「ガキがいちいち心配してんじゃねぇ」
「ゔぅ、ごめんなさい」
俺の謝罪に優しい顔をして、俺の顔に手を添えるとそのまま口付けをする。
ゆっくりとだが深く濃厚なキスを……。
「んっ……ふ、──ふはぁ」
「はは、気持ちよさそうな顔しやがって、キスがそんな好きか?」
「す、きぃ」
キスをするとギルの魔力が込められた唾液が口の中に広がって身体が熱くなるのがわかる。俺の身体は魔力が送られてくるだけで喜んでしまうのだ。そして、すぐ感じてしまうことも相まって、頭がほわほわして恥ずかしくて普段絶対言わないような言葉も平気で言ってしまう。全く困った身体である。
「……たっく、いちいちエロいんだよ」
「ん゛ん……っん」
さっきの優しいキスとは違い、今度は噛み付くような荒っぽいキスをしてくる。俺は必死でそれに応えるために舌を絡ませる。
少し前まで息をするので必死だったのに、我ながら慣れたもんだと思う。キスの最中にそんなことも考えられるぐらいに余裕を持てるようになってきていた。
ギルが俺から唇を離すと二人の荒い息が部屋に聞こえた。
「はぁ、随分と慣れたようだなキスの最中に考え事とは……」
「な、なんで、わかったの……」
「やっぱりな、ならたっぷり可愛がってやるよ」
これはまんまとギルの言葉にはめられてしまったようだ。実際他のことを考えてしまったのは事実なのだが、目の前にいるギルは少し不満そうな顔をしている。
彼の言葉に身体がゾクゾクと疼くのがわかる。
この後にどんなことをされるのかと、想像するだけでこれから彼を受け入れる場所がじわりと濡れるのがわかった。
本部に戻った次の日には俺の部屋が用意されていて、仕事が早くて驚いた。その日にギルから魔力を貰ったがそこからさらに四日が経った。つまり魔力を貰わないといけない日になったと言うことだ。
明日でもいいんだけど、死ぬ直前にもらうのはやはりどこか怖いので一日前に貰うようにしていた。
前回貰った時はギルが俺の部屋に来てくれたのだが、今回は前回来てくれた時間を過ぎてもギルは部屋に現れなかった。
というか、この四日間ギルの姿を全然見ていない。パスカルもだが二人ともとても忙しそうにしている。アルも全然帰ってこないし、フィルは任務やトレーニングで忙しい様子だった。
この世界の友達が全然いない俺は、食堂で料理人にレシピを教えるか、裏庭でぼーっとしているかの二つしかすることがなくとにかく暇だった。
あれ以来、裏庭のベンチに座っていても王女様は現れなかった。
忙しいギルに頼むのも気がひけるのだが、頼まない方が後から彼に怒られるので、そーっと部屋を出た俺は一人薄暗い廊下を歩きギルの部屋に向かった。
ギルの部屋に着くと扉の隙間からは明かりが漏れており、まだ寝ていないのがわかる。時刻は十一時を回っている。朝の早い兵士達はもう就寝している時間だ。
俺は軽くノックすると、ギルの入れという声が聞こえた。俺はそーっと扉を開け中に入ると、彼は机に向かって何かの書類にペンを走らせていたその手を止めてこちらを向く。
「あぁ、サタローかどうした」
「あの、その、魔力が、欲しくて」
やはり自分から頼むのは恥ずかしい。ギルは俺の言葉に机に置いてあったカレンダーを見る。
「ああ、もうそんな日か、すまないがベッドでちょっと待っていてくれ」
「う、うん」
ギルは止めていたペンをまたスラスラと走らせる。やっぱり忙しんだよな、なのに文句も言わずに俺に時間を割いてくれる。有難いのだが申し訳なさがどんどん積もっていく。
俺はギルに言われた通り置かれていたベッドに座った。何気にギルの部屋に入るのは初めてだ。キョロキョロと部屋を見渡してみると、綺麗に整頓されているというか無駄なものが何もないギルらしい部屋だった。
そんなことよりもやっぱり忙しそうなギルに、今日はやめた方がいいのかと尋ねようとしたがきっと明日も忙しいだろうから言うのを止める。
別の人を探せばいいのかもしれないが、本部を歩き回っていても訓練やらトレーニングやらで人が全然見つからない。
王都アダマスの魔法軍の本部にはアルが師団長を務める第一師団が配備されており、第一師団には第一連隊から第三連隊までが存在しているらしい。
唯一の友達であるフィルは第三連隊に所属しているのだが、連隊長が相当の変わり者らしく忙しいらしく、そのせいなのか最近全然会えていない。
第一と第二連隊も別の任務で出かけているらしい、正確にいえばその中にも細かく隊が分かれているため全員が本部を離れているわけではないらしいが、俺にはよくわからない話だった。
「すまない待たせたな」
「あ、いや大丈夫」
ギルの仕事も一段落したようで、俺の座っているベッドに近づいてきた。その顔はやはりどこか疲れているようだ。
疲れを取るための魔法とかが俺に使えたらいいのだが、そんなものがあるのかもわからないし、例えあったとしても俺には使えない。
もどかしさと申し訳なさとで俯く俺の顎にギルは手を添えると上を向かせる。所謂、顎クイってやつだ。
「どうした悩みごとでもあるのか?」
「……ギル疲れてるのにごめん、俺のこんなことに付き合わせちゃって」
俺の言葉に深くため息を吐いたギルは、俺の顎から手を離すとそのままデコピンしてきた。この痛みは前にも感じたことあるなと思いながら、額を手で抑える。
「痛い……何すんだよ」
「馬鹿か、俺の仕事はどうにでもなるがお前の身体はそうはいかんだろうが」
「そう、だけ、ど」
「ガキがいちいち心配してんじゃねぇ」
「ゔぅ、ごめんなさい」
俺の謝罪に優しい顔をして、俺の顔に手を添えるとそのまま口付けをする。
ゆっくりとだが深く濃厚なキスを……。
「んっ……ふ、──ふはぁ」
「はは、気持ちよさそうな顔しやがって、キスがそんな好きか?」
「す、きぃ」
キスをするとギルの魔力が込められた唾液が口の中に広がって身体が熱くなるのがわかる。俺の身体は魔力が送られてくるだけで喜んでしまうのだ。そして、すぐ感じてしまうことも相まって、頭がほわほわして恥ずかしくて普段絶対言わないような言葉も平気で言ってしまう。全く困った身体である。
「……たっく、いちいちエロいんだよ」
「ん゛ん……っん」
さっきの優しいキスとは違い、今度は噛み付くような荒っぽいキスをしてくる。俺は必死でそれに応えるために舌を絡ませる。
少し前まで息をするので必死だったのに、我ながら慣れたもんだと思う。キスの最中にそんなことも考えられるぐらいに余裕を持てるようになってきていた。
ギルが俺から唇を離すと二人の荒い息が部屋に聞こえた。
「はぁ、随分と慣れたようだなキスの最中に考え事とは……」
「な、なんで、わかったの……」
「やっぱりな、ならたっぷり可愛がってやるよ」
これはまんまとギルの言葉にはめられてしまったようだ。実際他のことを考えてしまったのは事実なのだが、目の前にいるギルは少し不満そうな顔をしている。
彼の言葉に身体がゾクゾクと疼くのがわかる。
この後にどんなことをされるのかと、想像するだけでこれから彼を受け入れる場所がじわりと濡れるのがわかった。
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