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第一章 転移編
19 ギルバードにお願い
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次の日俺が目を覚ますと既にアルの姿はなかった。
もう王都に向かってしまったのかと飛び起きた俺は、急いで服を着てテントの外へ出た。
テントの外は朝日が少し顔を出し始めたところで、まだ辺りは薄暗かった。
「あれ、サタローおはよう、起こしてしまったかな?」
「アル、おはよう……」
テントの外には荷物を持ったアルが立っていた。その横には眠たそうにしているパスカルと、相変わらず険しい顔をしたギルバードが立っていた。
「なんだ、サタローもアルの見送りか……ふぁあ」
「こんな早くに出るのか?」
「王都までは結構距離もあるし、国王に呼び出されているからね」
「そっか」
こんな朝早くから出なくてはいけないというのに、昨晩も俺のために時間を取ってくれたのだと思うと感謝してもしきれない。
王都に戻れば自室で寝られるだろうしゆっくりしてもらいたいものだ。
そうなると俺は別の相手を探さないといけなくなるのだが、そこは自分でどうにかするしかない。
一番候補のギルバードは相変わらず俺のことは、いないかのように無視している。
俺、嫌われるようなことしたかな……
「師団長そろそろ向かいましょう」
王都に共に向かう兵士がアルを呼びに来た。
「あぁ、すぐ行くよ。じゃあねサタロー」
「うん、気をつけてねアル!」
「ギルとパスカルもあとは頼んだよ」
「ふぁ~、任せておけ」
「ああ、気をつけろよ」
俺たちに言葉をかけたアルは兵士達と共に王都に向かって歩いて行った。確かテントから少し離れた場所には馬もいた気がするが歩いて行くようだ。
「さてともうひと眠りするかのー」
パスカルは目を擦りながら自身のテントへと戻っていった。
パスカルがいなくなったその場所には俺とギルバードだけが立っていた。
これは、魔力を貰えないかと頼むチャンスではなかろうか。あと、助けてもらったお礼も言わなくてわ!
ギルバードも自分のテントに戻ろうと俺に背を向ける。早く言わなければギルバードが帰ってしまうと俺は急いで声をかける。
「あ、あの! ギルバードさん!」
「んだよ」
ひー、なんか不機嫌だ。めちゃめちゃ怖い。
「いや、そのー」
「用があるんだったらさっさと言えよ」
すっごい睨んできている。なんでこんなに不機嫌なんだ。いつも不機嫌そうな顔しているが今日は特に不機嫌な気がする。あまりの不機嫌オーラに俺は言葉を詰まらせる。
「いえ、なんでもないです……」
「ちっ、まだ早いしお前もテントに戻って休め」
「は、はい」
イラつきながらそう言ったギルバードは、自分のテントに戻っていった。なんか不機嫌な割には俺のことを気にかけてくれていたような。怖いけど話してみると意外と優しいんだよな。
見た目はアルとは違ったかっこよさがある、ただ目つきが少々悪いんだよな……嫌だいぶかな。
あと口が悪い。前世で言うヤンキーかっ! と思うぐらい口が悪い。
彼に頼むのはヤンキーと話をするみたいなものだ。
真面目で優等生だった俺はヤンキーなんかと連んだことは勿論なかったわけで、ギルバードに頼むのはだいぶハードルが高く憂鬱になる。
俺は憂鬱になりながら、とりあえずアルのいない彼のテントへ戻る。朝食までまだ時間があったのでもう一度眠りにつくことにした。
◇◇◇
「おーい、サタロー起きろー飯だぞー」
「んんー、もう少しだけぇ」
「はぁ、さっさと起きろ!」
「……いでっ!」
俺の頭を容赦なく引っ叩くパスカル。俺はあのあと寝ようとしたのだが、ギルバードにどうやって頼もうかと悩んでいて結局ほとんど寝ることが出来ずだいぶ眠い。
朝食の準備ができたようで俺を起こしに来てくれたらしい。俺は渋々起き上がる。
パスカルもいることだし、相談相手にはちょうどいいだろう。俺は二人で食べようと提案し、パスカルもすぐに首を縦に振り二人分の朝食を持ってきてくれた。
「「いただきます」」
アルのいないテントで二人朝食を食べる。
相談すると言ってもなんて話を切り出せばいいのか悩む。パスカルは俺の悩んでいることなどつゆ知らず、山盛りの朝食を口いっぱいに頬ばって食べている。毎度毎度幸せそうに食べるなコイツ……。
目の前に座っている少年の食べっぷりに呆れながら感心していると、俺の視線に気づいたパスカルが手を止めて俺の顔を見る。
「なんだ、人の顔をじっと見て……悩み事か?」
「えっ、いや……そのー」
「まぁどうせ、ギルにどうやって魔力を貰おうか悩んでるんだろうけど」
「な、な、何でわかったんだ」
「はは、サタローの考えていることぐらいすぐわかるぞ」
コイツやっぱりよく見ているな……侮れない。
俺が分かりやすすぎるのかもしれないが……今はそんなことはどうでもいい。わかっているのなら話は早い。
「まさにそのことなんだけど、どうすればいいと思う」
「普通にセックスしてくれって言えばよくない?」
「よくねーよ! よくねーから相談してるんだろ!」
そんなことギルバードに言ったら、あの険しい顔がもっと険しくなるのが容易に想像できる。
相変わらず恥じらいもなくそう言うことを発言するパスカルにげんなりする。
「冗談だよ、でも素直に言えばあいつならオッケーしてくれると思うぞ」
「……いや、でもなー」
「なんだ、なんでそんな嫌がる?アルの方が好みなのか?」
「な! そう言うことじゃないけど」
例えば同じクラスの強面で口が悪いほぼ関わりのないクラスメイトに、突然俺とセックスしてくれって言ってこいと言われて、言えるだろうか……俺には無理だ。
選り好みできるような立場にないことぐらいわかっているが、タイミングと心の準備が必要だ。
うだうだと考えている俺にパスカルが何か思いついたと言わんばかりの、にやけ顔をする。
俺はその顔を見て嫌な予感がした。
「ならあれだな」
「なんだよ……」
「ギルバードに可愛くおねだり♡大作戦しかないな!」
「……なんじゃそれ」
パスカルは満面の笑みで俺に変な作戦を提案してきた。明らかにコイツ楽しんでいるなと思ったが、今はパスカルに頼ることしかできないないのでとりあえず話を聞くことにした。
もう王都に向かってしまったのかと飛び起きた俺は、急いで服を着てテントの外へ出た。
テントの外は朝日が少し顔を出し始めたところで、まだ辺りは薄暗かった。
「あれ、サタローおはよう、起こしてしまったかな?」
「アル、おはよう……」
テントの外には荷物を持ったアルが立っていた。その横には眠たそうにしているパスカルと、相変わらず険しい顔をしたギルバードが立っていた。
「なんだ、サタローもアルの見送りか……ふぁあ」
「こんな早くに出るのか?」
「王都までは結構距離もあるし、国王に呼び出されているからね」
「そっか」
こんな朝早くから出なくてはいけないというのに、昨晩も俺のために時間を取ってくれたのだと思うと感謝してもしきれない。
王都に戻れば自室で寝られるだろうしゆっくりしてもらいたいものだ。
そうなると俺は別の相手を探さないといけなくなるのだが、そこは自分でどうにかするしかない。
一番候補のギルバードは相変わらず俺のことは、いないかのように無視している。
俺、嫌われるようなことしたかな……
「師団長そろそろ向かいましょう」
王都に共に向かう兵士がアルを呼びに来た。
「あぁ、すぐ行くよ。じゃあねサタロー」
「うん、気をつけてねアル!」
「ギルとパスカルもあとは頼んだよ」
「ふぁ~、任せておけ」
「ああ、気をつけろよ」
俺たちに言葉をかけたアルは兵士達と共に王都に向かって歩いて行った。確かテントから少し離れた場所には馬もいた気がするが歩いて行くようだ。
「さてともうひと眠りするかのー」
パスカルは目を擦りながら自身のテントへと戻っていった。
パスカルがいなくなったその場所には俺とギルバードだけが立っていた。
これは、魔力を貰えないかと頼むチャンスではなかろうか。あと、助けてもらったお礼も言わなくてわ!
ギルバードも自分のテントに戻ろうと俺に背を向ける。早く言わなければギルバードが帰ってしまうと俺は急いで声をかける。
「あ、あの! ギルバードさん!」
「んだよ」
ひー、なんか不機嫌だ。めちゃめちゃ怖い。
「いや、そのー」
「用があるんだったらさっさと言えよ」
すっごい睨んできている。なんでこんなに不機嫌なんだ。いつも不機嫌そうな顔しているが今日は特に不機嫌な気がする。あまりの不機嫌オーラに俺は言葉を詰まらせる。
「いえ、なんでもないです……」
「ちっ、まだ早いしお前もテントに戻って休め」
「は、はい」
イラつきながらそう言ったギルバードは、自分のテントに戻っていった。なんか不機嫌な割には俺のことを気にかけてくれていたような。怖いけど話してみると意外と優しいんだよな。
見た目はアルとは違ったかっこよさがある、ただ目つきが少々悪いんだよな……嫌だいぶかな。
あと口が悪い。前世で言うヤンキーかっ! と思うぐらい口が悪い。
彼に頼むのはヤンキーと話をするみたいなものだ。
真面目で優等生だった俺はヤンキーなんかと連んだことは勿論なかったわけで、ギルバードに頼むのはだいぶハードルが高く憂鬱になる。
俺は憂鬱になりながら、とりあえずアルのいない彼のテントへ戻る。朝食までまだ時間があったのでもう一度眠りにつくことにした。
◇◇◇
「おーい、サタロー起きろー飯だぞー」
「んんー、もう少しだけぇ」
「はぁ、さっさと起きろ!」
「……いでっ!」
俺の頭を容赦なく引っ叩くパスカル。俺はあのあと寝ようとしたのだが、ギルバードにどうやって頼もうかと悩んでいて結局ほとんど寝ることが出来ずだいぶ眠い。
朝食の準備ができたようで俺を起こしに来てくれたらしい。俺は渋々起き上がる。
パスカルもいることだし、相談相手にはちょうどいいだろう。俺は二人で食べようと提案し、パスカルもすぐに首を縦に振り二人分の朝食を持ってきてくれた。
「「いただきます」」
アルのいないテントで二人朝食を食べる。
相談すると言ってもなんて話を切り出せばいいのか悩む。パスカルは俺の悩んでいることなどつゆ知らず、山盛りの朝食を口いっぱいに頬ばって食べている。毎度毎度幸せそうに食べるなコイツ……。
目の前に座っている少年の食べっぷりに呆れながら感心していると、俺の視線に気づいたパスカルが手を止めて俺の顔を見る。
「なんだ、人の顔をじっと見て……悩み事か?」
「えっ、いや……そのー」
「まぁどうせ、ギルにどうやって魔力を貰おうか悩んでるんだろうけど」
「な、な、何でわかったんだ」
「はは、サタローの考えていることぐらいすぐわかるぞ」
コイツやっぱりよく見ているな……侮れない。
俺が分かりやすすぎるのかもしれないが……今はそんなことはどうでもいい。わかっているのなら話は早い。
「まさにそのことなんだけど、どうすればいいと思う」
「普通にセックスしてくれって言えばよくない?」
「よくねーよ! よくねーから相談してるんだろ!」
そんなことギルバードに言ったら、あの険しい顔がもっと険しくなるのが容易に想像できる。
相変わらず恥じらいもなくそう言うことを発言するパスカルにげんなりする。
「冗談だよ、でも素直に言えばあいつならオッケーしてくれると思うぞ」
「……いや、でもなー」
「なんだ、なんでそんな嫌がる?アルの方が好みなのか?」
「な! そう言うことじゃないけど」
例えば同じクラスの強面で口が悪いほぼ関わりのないクラスメイトに、突然俺とセックスしてくれって言ってこいと言われて、言えるだろうか……俺には無理だ。
選り好みできるような立場にないことぐらいわかっているが、タイミングと心の準備が必要だ。
うだうだと考えている俺にパスカルが何か思いついたと言わんばかりの、にやけ顔をする。
俺はその顔を見て嫌な予感がした。
「ならあれだな」
「なんだよ……」
「ギルバードに可愛くおねだり♡大作戦しかないな!」
「……なんじゃそれ」
パスカルは満面の笑みで俺に変な作戦を提案してきた。明らかにコイツ楽しんでいるなと思ったが、今はパスカルに頼ることしかできないないのでとりあえず話を聞くことにした。
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