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24 久住からの忠告
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──ムカつく、ムカつく、ムカつく
久住に失せろと言われて、大人しくその場を後にしてしまった俺は自分に腹が立ち部室棟の裏に屈みうずくまっていた。
何だったんださっきのあれは、不良と喧嘩した時には感じたことのない鋭くて冷たい目つき。いつもの俺だったらあのぐらいで怯んだりしないのに情けない。
日向との入れ替わりも今日で折り返し地点である。あのまま帰るわけにもいかず久住が一人になるまでじっと座って待っていることにした。
今日は最悪の一日だった。
昨日も一昨日も先一昨日も最悪の一日だった。きっと明日も最悪の一日になるだろう。アイツとの関わりがある限り俺の大切な一日は、最悪なものとなるのだ。
だから今日中にケリをつけなければと待っている次第である。
◇◇◇
「おい、き、ろ!」
「んっ……」
──あれ? 俺寝てたのか
どうやら、久住を待っていたら眠ってしまったらしく、誰かが俺を起こしてくれたようだ。クラスメイトあたりだろうとぼーっとしながら顔を上げる。
「わりぃ、ありが……久住!」
「よお、まさか待ってるとはな、どんだけ俺のこと好きなんだよ」
「す、好きじゃねーわ! お前には言いたいことがたくさんあんだよ!」
目の前にいたのは俺が待っていた人物の久住だった。宿敵の相手に寝ている姿を見られるとは、何たる不覚と猛省する。
寝起きで少し頭が働かないし、さっきの冷たい目を思い出して久住のことが怖くなる。
しかし今の久住は俺を鬱陶しそうに見ているだけで、先ほどの冷徹な瞳はしていなかった。
「用があるならさっさと言え」
「用って……お前自分がやったことわかってるだろ!」
俺の言葉に心当たりが無いかのように、とぼけた顔をする久住。
「何のことだ」
「お前の子分の二人が! 今日小森にしたことだよ!」
「……子分? あぁ、馬場と鹿島のことか」
あの二人そんな名前だったのか……初めて知った。別に知りたくもなかったけど、これからは馬鹿コンビと呼んでやろう。
久住の反応は相変わらず薄い。
しらを切り通すつもりだろうか、そうは行くかとさらに詰め寄る。
「とぼけんなよ、お前が指示したことはわかってんだよ!」
「本当に何のことかわからないんだが」
「だから! 昼休みに小森を空き教室に連れ出したんだろうが!」
何を言ってるんだコイツ見たいな顔してきたので、ことの流れの全てを丁寧に教えてやる。これで言い逃れはできないであろう。
「俺はそんなこと指示した覚えはない」
「……」
これだけ言っても久住の反応は変わらなかった。この感じはきっと本当に久住の仕業ではないのだろう。そもそもコイツは今までも何一つ誤魔化したり、隠したりすることなく堂々と嫌がらせをしていた。今更、隠したりする必要もないのだ。
となるとだ。あの馬鹿コンビが勝手に小森に手を出したことになる。
「じゃあ、あの馬鹿コンビが勝手にやったってことかよ」
「さぁな、ただ俺がやっていないことは確かだ。それにそもそもあの二人は子分でも何でもない」
「でも、最初に空き教室に小森を連れ込んだ時着いてきてたじゃねーか」
「アイツらが勝手に小森を呼び出したんだ。俺は着いてきてほしいと言われたから着いていっただけだ」
「そんな嘘、誰が信じるかよ……」
だって久住は次のターゲットは小森だと言っていた。なのにあの二人が久住の話を聞かずに勝手に実行したとでもいうのだろうか。でも馬鹿コンビが久住の子分じゃないってことは、それもあり得る話だ。
出会って数日しか経っていないコイツらの関係なんて俺に分かるわけがない。久住は何がしたいんだよ。
頭を抱える俺の姿を見ていた久住がため息をつきながら口を開く。
「お前が小森を守ってやるんじゃなかったのか」
「それは……」
もちろん守る気満々で今日学校に登校してきた。守れるとも思っていた。でも、それは久住から守るという意味であの二人は久住とセットで近づいてくるとばかり思っていた。
「所詮、口だけの男だったのか」
「違う! 毒島の相談を受けてたらアイツらが小森を連れて行ったんだ」
必死で言い訳をする。どんな言い訳をしたって守れなかったのは事実なのに本当に情けない。
俺の必死の言い訳を久住は嘲笑うのだと思っていた。でも、久住の反応は違っていた。
「毒島だと、アイツがお前に近づいてきたのか」
「あ、あぁ、相談があるって昨日助けたこともお礼言われたし……」
「はぁ、なるほどな。何となくわかってきた」
毒島の名前が出てくることで、何かが変わってくるのだろうか。馬鹿コンビと毒島とは関わりがないはずだ。
久住の反応に首を傾げる。
「いいか、とにかく毒島とは関わるな」
「なんでだよ?」
「アイツはお前が思っているようなひ弱なやつじゃない。ロクでもない野郎だからな」
それお前がいうのかよと心底思ったが、久住の顔がすごく真剣だったから少しだけ本当なのかもと思ってしまった。
「お前の言葉を信じろっていうのかよ」
「そうだな、信じるか信じないかは自由だが、自分の身を守りたいなら肝に命じておけ」
それだけ言った久住は、俺から離れていった。
「なんだよ……意味わかんねぇ」
久住という男がよくわからなくなった。
久住に失せろと言われて、大人しくその場を後にしてしまった俺は自分に腹が立ち部室棟の裏に屈みうずくまっていた。
何だったんださっきのあれは、不良と喧嘩した時には感じたことのない鋭くて冷たい目つき。いつもの俺だったらあのぐらいで怯んだりしないのに情けない。
日向との入れ替わりも今日で折り返し地点である。あのまま帰るわけにもいかず久住が一人になるまでじっと座って待っていることにした。
今日は最悪の一日だった。
昨日も一昨日も先一昨日も最悪の一日だった。きっと明日も最悪の一日になるだろう。アイツとの関わりがある限り俺の大切な一日は、最悪なものとなるのだ。
だから今日中にケリをつけなければと待っている次第である。
◇◇◇
「おい、き、ろ!」
「んっ……」
──あれ? 俺寝てたのか
どうやら、久住を待っていたら眠ってしまったらしく、誰かが俺を起こしてくれたようだ。クラスメイトあたりだろうとぼーっとしながら顔を上げる。
「わりぃ、ありが……久住!」
「よお、まさか待ってるとはな、どんだけ俺のこと好きなんだよ」
「す、好きじゃねーわ! お前には言いたいことがたくさんあんだよ!」
目の前にいたのは俺が待っていた人物の久住だった。宿敵の相手に寝ている姿を見られるとは、何たる不覚と猛省する。
寝起きで少し頭が働かないし、さっきの冷たい目を思い出して久住のことが怖くなる。
しかし今の久住は俺を鬱陶しそうに見ているだけで、先ほどの冷徹な瞳はしていなかった。
「用があるならさっさと言え」
「用って……お前自分がやったことわかってるだろ!」
俺の言葉に心当たりが無いかのように、とぼけた顔をする久住。
「何のことだ」
「お前の子分の二人が! 今日小森にしたことだよ!」
「……子分? あぁ、馬場と鹿島のことか」
あの二人そんな名前だったのか……初めて知った。別に知りたくもなかったけど、これからは馬鹿コンビと呼んでやろう。
久住の反応は相変わらず薄い。
しらを切り通すつもりだろうか、そうは行くかとさらに詰め寄る。
「とぼけんなよ、お前が指示したことはわかってんだよ!」
「本当に何のことかわからないんだが」
「だから! 昼休みに小森を空き教室に連れ出したんだろうが!」
何を言ってるんだコイツ見たいな顔してきたので、ことの流れの全てを丁寧に教えてやる。これで言い逃れはできないであろう。
「俺はそんなこと指示した覚えはない」
「……」
これだけ言っても久住の反応は変わらなかった。この感じはきっと本当に久住の仕業ではないのだろう。そもそもコイツは今までも何一つ誤魔化したり、隠したりすることなく堂々と嫌がらせをしていた。今更、隠したりする必要もないのだ。
となるとだ。あの馬鹿コンビが勝手に小森に手を出したことになる。
「じゃあ、あの馬鹿コンビが勝手にやったってことかよ」
「さぁな、ただ俺がやっていないことは確かだ。それにそもそもあの二人は子分でも何でもない」
「でも、最初に空き教室に小森を連れ込んだ時着いてきてたじゃねーか」
「アイツらが勝手に小森を呼び出したんだ。俺は着いてきてほしいと言われたから着いていっただけだ」
「そんな嘘、誰が信じるかよ……」
だって久住は次のターゲットは小森だと言っていた。なのにあの二人が久住の話を聞かずに勝手に実行したとでもいうのだろうか。でも馬鹿コンビが久住の子分じゃないってことは、それもあり得る話だ。
出会って数日しか経っていないコイツらの関係なんて俺に分かるわけがない。久住は何がしたいんだよ。
頭を抱える俺の姿を見ていた久住がため息をつきながら口を開く。
「お前が小森を守ってやるんじゃなかったのか」
「それは……」
もちろん守る気満々で今日学校に登校してきた。守れるとも思っていた。でも、それは久住から守るという意味であの二人は久住とセットで近づいてくるとばかり思っていた。
「所詮、口だけの男だったのか」
「違う! 毒島の相談を受けてたらアイツらが小森を連れて行ったんだ」
必死で言い訳をする。どんな言い訳をしたって守れなかったのは事実なのに本当に情けない。
俺の必死の言い訳を久住は嘲笑うのだと思っていた。でも、久住の反応は違っていた。
「毒島だと、アイツがお前に近づいてきたのか」
「あ、あぁ、相談があるって昨日助けたこともお礼言われたし……」
「はぁ、なるほどな。何となくわかってきた」
毒島の名前が出てくることで、何かが変わってくるのだろうか。馬鹿コンビと毒島とは関わりがないはずだ。
久住の反応に首を傾げる。
「いいか、とにかく毒島とは関わるな」
「なんでだよ?」
「アイツはお前が思っているようなひ弱なやつじゃない。ロクでもない野郎だからな」
それお前がいうのかよと心底思ったが、久住の顔がすごく真剣だったから少しだけ本当なのかもと思ってしまった。
「お前の言葉を信じろっていうのかよ」
「そうだな、信じるか信じないかは自由だが、自分の身を守りたいなら肝に命じておけ」
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