【完結】正義のオメガとクズアルファ

西胡瓜

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23 久住のもとへ

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 個室を出た俺はもう一度手を洗う。

 まさか学校のトイレの個室で一人でしてしまうとは、今更ながら恥ずかしさで死にそうだ。

 俺はとぼとぼ歩きトイレの出入り口の扉を開けると、目の前に制服をキッチリと着た小森が立っていた。

「日向くん! 心配したよトイレから全然戻ってこないから」

「わ、わるい、ちょっとぼーっとしてた」

「ごめんね、僕のせいで本当にごめん」

 本当に申し訳なさそうに謝ってくるが、思い出すだけで恥ずかしさで今すぐにでも逃げ出したい衝動にかられるのでやめてほしい。

「いいから戻ろうぜ、六時間目が始まる」

「う、うん!」

 あんなことしてる間に五時間目の授業は終わってしまっていた。教室に戻った俺の周りにはクラスメイトがどっと集まって、心配そうに声をかけて来たが、大丈夫だと言って席に着いた。

 六時間目の授業は、さっきの出来事のイライラと恥ずかしさが相まって全く集中できなかった。もとより授業に集中したことなんて一度もないので問題はない。

 この授業が終わったら久住のところに殴り込みに行かなければと最終的にイライラとした時間が続いていた。



◇◇◇



「今日の授業はここまでです」

 授業の終わりのチャイムがなり、センコーが終わり合図をかける。不良校でも進学校でもチャイムの音だけはどこも一緒だ。

 俺はさっさと帰りの支度をして久住のところへ向かおうとしたが、2年の教室に乗り込むのも目立ってしょうがないと思いもう一度席に着いて考え直す。そもそも久住が何組なのか知らない。

 日向(抱きたい男一位)が久住(抱かれたい男一位)を探しているということがバレたら学園中が大騒ぎになりそうだ。
 できるだけ目立たないように、久住を見つけ出す方法。

 ダメだ……ややこしいこと考えると頭いなくなってくる。昨日みたいに部室にいてくれればいいんだけどな。

「そうか、部室に行けばいるかもしれない!」

「わあ! どうしたの日向くん」

「あ、小森……わりぃ、俺部活行くからじゃあな」

「う、うん、また明日」

 俺は勢いよく教室を飛び出して部室棟へ急いだ。
 日向は久住が部室に来るのは滅多にないと言っていたがもしかしたらと一筋の希望を信じ映画研究部の部室へ向かった。



◇◇◇



 何とまさかの部室棟の近くの道を久住と昨日一緒に部室へやって来ていた江古田が歩いていた。
 なぜこうも久住を簡単に見つけることができるのだろうか。まるで俺と久住は何かで引かれあっているかのようだ。
 全然嬉しくないな、それ。

 江古田は久住の腕に抱きつきべったりと歩いている。なんだろうアイツがくっ付いてると無性にイライラする。別にアイツに何かされたわけでもないのに、久住に感じるイライラとは違うイライラだ。

 このまま部室に入ればイチャコラするのは間違いない。だからその前に久住を捕まえなければならない。

 行くなら今しかないと後ろから久住に声をかける。江古田には俺が日向ではないとバレてはいけないから、汚い言葉は使わないように気をつけなければいけない。

「久住先輩!」

 俺の声に二人は立ち止まり、こちらを振り返る。

「あれ~、日向くんじゃんどうしたの?」

「江古田先輩どうも……あの、僕久住先輩に話があるんですけど、ちょっといいですか!」

 俺の言葉に少し驚いている久住とさっきまで可愛い顔してたのに眉間にシワを寄せあからさまに嫌な顔をする江古田。

「ほんとっ空気読めないね日向くんは~、無理だからさっさとどっか行ったら? ねー、竜二」

「あぁ、すまないが後にしてくれ」

 久住は江古田の言葉に同調し断ってきた。断られた俺を江古田はクスクスと笑っている。
 その顔にカチーンと来てしまった。人が仕立てに出てりゃ調子に乗りやがって……俺は言い返してやろうとした。

「おい! てめ」

「いいから、さっさと失せろ」

 俺の声に被せるように久住が声を上げた。驚いた俺は久住の顔を見ると今まで見たこともないような冷たい目をしていた。

 ──怖い

 これ以上は危険だと本能が訴えかけているようだった。

「……っ、わかりましたすみません」

 俺はそれだけ言って、その場を後にした。



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