【完結】正義のオメガとクズアルファ

西胡瓜

文字の大きさ
上 下
11 / 35

10 テスト返し

しおりを挟む
 朝のホームルームが終わりそのまま一時間目の授業が始まった。日向の言った通りテスト返しだ。

 日向に聞いたがこのクラスの3分の2はアルファらしい。残りはベータの奴ら、オメガなんてきっとこの学校にはいないだろう。
 もしここでオメガがヒートなんて起こした時には、一瞬で犯されて孕まされて最悪、番になってしまうだろう。
 まぁ、俺の場合はそいつら全員ボコボコにしてやるがな!

 こいつらは俺のことをアルファの日向だと思っている。
 俺がオメガだと気付かないエリート様たちを心の中で鼻で笑ってやった。

 解答用紙が次々に返却され、生徒たちは俺の勝ちだとか負けたーだの言い合っているのを聞き、アルファだろうがこういうところは俺の知っている男子高校生だなと思った。

 だが、よく聞いてみると90点だの86点だっただの、高得点で悔しがっている生徒の声が聞こえる。赤点を免れる点数さえ取れていれば上等だと思っている俺とは大違い、さすがは進学校レベルが違う。

 一時間目は数学だが、確か日向は数学は苦手だと言っていた。だったら点数もよくないはずだから、あまり他の生徒たちには言いふらさないようにしよう。
 
 名前を呼ばれて解答用紙を取りに行く。渡された解答用紙の右上を見ると「92点」の数字が見えた。

「はぁ!?」

「どうかしたか! 御子柴」

「あ、いえ、なんでもないです……」

 ──嘘だろ、苦手な教科で92点とかありえねぇ

 ていうかこんな数字初めてみた。
 俺の代わりにヤバキタのテストを受けてくれた日向だが、替え玉とバレないように赤点をギリギリ免れる点数を上手いこと叩き出してくれていた。

 点数も25点とか30点とかだった。ちなみにヤバキタの赤点ラインは平均点の半分なのだが、平均点が15点とかよくて25点なので二桁を取っていれば大体は大丈夫だ。

 だから、92点なんて俺には異次元の数字なわけで、驚きのあまり声を上げてしまった。
 急いで席に座って問題を見ると呪文? が並んでいて全く読めない。

「どうだった、日向くん」

 隣の席の生徒が話しかけてくる。もし、俺がこんな点数とったのなら学校中に自慢するのだが、日向は絶対そんなことしないだろう。

「数学は得意じゃ無いんだけど……92点だったよ」

「やっぱりすごいね日向くんは」

「ほんと、すごいよなー」

「アルファの中でもやっぱり日向君は優秀だよね」

 いつのまにか他の生徒も俺の周りに集まってきたていつのまにか目立ってしまった。
 日向がこんなに優秀だと言うことを初めて知った。なんか弟が褒められていると思うと素直に嬉しい。

「そんなこと、ないよ、今回はたまたま山が当たっただけだって……」

 「またまたー」とか「謙虚だなー」とか言っている周りを見るに対応は間違っていないようでホッとする。

 テストの返却が終わると残り時間はテストの見直しや自習時間になった。とにかく目立たないようにしなければ、ボロが出てしまう。

 しかしここで、絶体絶命のピンチに直面する。

「日向くん、ここ教えてくれないかな」

 クラスメイトの誰かが、テストの不正解の部分を教えてほしいと言いにきた。

 まぁ普通にわかるわけがない……だって俺日向くんじゃないし
 さて、どうしたものかと、日向の解答用紙を見ると教えてほしいと言われた部分には綺麗な丸が書かれている。

 算数の分数で挫折した俺が数学なんて未知なる分野できるわけがない。

「ご、ごめん。僕やりたいことがあるから他の人に教えてもらって……本当にごめんね」

「いいよ、いいよ! 日向くんのやりたいことをやって!」

 生徒は申し訳なさそうにして、自分の席に戻って行った。なんかすごく悪いことしたなと申し訳なく思う。でもまじでわかんないから……

 自習といっても特にすることもなく、教科書を見ても呪文にしか見えない俺は、窓の外をぼーっと眺めていた。

 初めて50分間、足を開かずに椅子にキチンと座っていた自分を褒めてやりたい。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

処理中です...