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9 初体験
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──くそ、朝の電車ってこんなに混んでるのかよ
俺は今、人生初めてとなる満員電車を経験していた。前も後ろも右も左も人だらけでうざすぎる。
日向はこんな目に遭いながら毎日学校に行っていたのかと思うとシンプルに尊敬する。
それにしても同じ星学の制服を着た生徒が全然見当たらない。そういえば日向はいつも俺たちが学校へ行く時間よりも、1時間ほど早く家を出ていたような気がする。時間を間違えているわけでは無いはずだが少し心配になる。
いつもだったら学校に遅刻することなんて普通だし、時間通りに学校に着く方が珍しい。
星学の制服を着ているだけでなんだか、優等生にならなくてはと思ってしまう。
一駅止まるごとに電車から人が降りて行くのだがそれと同じぐらいに人が入ってきて、永遠に続くこの窮屈な空間にうんざりしている時、お尻に変な感触を感じた。
──ん? これはもしかして人の手か?
まさかと思い、顔を下げて後ろをチラリと見るとスーツを着た中年男が俺のお尻に手の甲を当てていた。
俺は、男が男に痴漢とか有り得ない。
昨日の出来事のせいで男同士ということに敏感になってしまっているだけだろう。満員電車だし偶然かと思いとりあえず放っておくことにした。
一駅分様子を見ていたが、これは認めたくは無いがおそらく俺は今痴漢に遭っている。手の甲だったのがいつのまにか手のひらでナチュラルに俺の尻を揉んできている。
殴りたい、殴りたいのだが……俺は今星宮学園の制服を着た優等生なのだ。不祥事を起こすわけには行かないし、男が痴漢に遭ったなんて知られたら一生の恥だ。
必死で殴りたい気持ちを抑え、降りる駅まで我慢をする。
あと一駅っというところで痴漢野郎は俺の耳元で何かを囁き始める。
「君、星宮学園の生徒でしょ? 可愛いね、学校サボっておじさんと楽しいことしな」
──殴りたい、我慢、殴りたい、我慢
痴漢野郎の声を聞かないようにとにかく殴りたい気持ちと、我慢しなければという気持ちが俺の脳を埋め尽くし、葛藤している。
反抗しない俺をいいことに痴漢野郎の手が大胆にも前の方に移動して、俺の大事なムスコを触り始める。
「……っ、くそっ、やめろ」
「ふふ、可愛いねぇ」
その時ちょうど俺の降りる駅に電車が到着して扉が開いた。ホッとした俺は急いで電車を降りようとしたが、そのまま降りるのもシャクなので痴漢野郎の足の先を思いっきり踏んで出て行ってやった。
痴漢野郎はあまりの痛さにうずくまっていた。本当は殴ってやりたいところをあれだけで済ませてやったんだ感謝してほしい。
なんとか大事には至らずに安心した俺だが、まさか男に痴漢されるとはと今更ながらショックである。
日向のフリをしているが見た目は俺なわけで、痴漢に遭ったのも俺なのだ。ヤバキタの御子柴と恐れられている俺がまさか男に痴漢されるなんて情けなさすぎる。
オメガじゃあるまいし……まぁ、オメガなんだけどさ。
落ち込みながら駅を出て、目的地である星宮学園に向かった。
◇◇◇
駅を出てからは無事に学校に着いた。
日向から教えてもらった教室へ向かうと教室内には俺以外のクラスメイトが全員おり、5分前にも関わらずきっちり席に着いていた。
まじか……5分前に着くとか俺優等生じゃね、とか思ってたのにこいつら化け物かよと不良と喧嘩する時よりも怖かった。
一つだけ空いている席を見つけた俺は、おそらくそこが日向の席だろうと迷わずに席に座った。
「おはよう日向くん! 今日は遅かったね」
「あ、うん、ちょっとね」
「休みかと思って心配したよ」
「今日も可愛いね」
「あ、ありがとう」
なんか俺が席に着いた途端にクラスメイト達が続々と朝の挨拶をしてくる。平気で可愛いとか言ってきて、本当に怖いんだけど……
これを毎日、日向はしているのかと思うとやはり尊敬する。
俺、一週間持つかなと心配になった。
俺は今、人生初めてとなる満員電車を経験していた。前も後ろも右も左も人だらけでうざすぎる。
日向はこんな目に遭いながら毎日学校に行っていたのかと思うとシンプルに尊敬する。
それにしても同じ星学の制服を着た生徒が全然見当たらない。そういえば日向はいつも俺たちが学校へ行く時間よりも、1時間ほど早く家を出ていたような気がする。時間を間違えているわけでは無いはずだが少し心配になる。
いつもだったら学校に遅刻することなんて普通だし、時間通りに学校に着く方が珍しい。
星学の制服を着ているだけでなんだか、優等生にならなくてはと思ってしまう。
一駅止まるごとに電車から人が降りて行くのだがそれと同じぐらいに人が入ってきて、永遠に続くこの窮屈な空間にうんざりしている時、お尻に変な感触を感じた。
──ん? これはもしかして人の手か?
まさかと思い、顔を下げて後ろをチラリと見るとスーツを着た中年男が俺のお尻に手の甲を当てていた。
俺は、男が男に痴漢とか有り得ない。
昨日の出来事のせいで男同士ということに敏感になってしまっているだけだろう。満員電車だし偶然かと思いとりあえず放っておくことにした。
一駅分様子を見ていたが、これは認めたくは無いがおそらく俺は今痴漢に遭っている。手の甲だったのがいつのまにか手のひらでナチュラルに俺の尻を揉んできている。
殴りたい、殴りたいのだが……俺は今星宮学園の制服を着た優等生なのだ。不祥事を起こすわけには行かないし、男が痴漢に遭ったなんて知られたら一生の恥だ。
必死で殴りたい気持ちを抑え、降りる駅まで我慢をする。
あと一駅っというところで痴漢野郎は俺の耳元で何かを囁き始める。
「君、星宮学園の生徒でしょ? 可愛いね、学校サボっておじさんと楽しいことしな」
──殴りたい、我慢、殴りたい、我慢
痴漢野郎の声を聞かないようにとにかく殴りたい気持ちと、我慢しなければという気持ちが俺の脳を埋め尽くし、葛藤している。
反抗しない俺をいいことに痴漢野郎の手が大胆にも前の方に移動して、俺の大事なムスコを触り始める。
「……っ、くそっ、やめろ」
「ふふ、可愛いねぇ」
その時ちょうど俺の降りる駅に電車が到着して扉が開いた。ホッとした俺は急いで電車を降りようとしたが、そのまま降りるのもシャクなので痴漢野郎の足の先を思いっきり踏んで出て行ってやった。
痴漢野郎はあまりの痛さにうずくまっていた。本当は殴ってやりたいところをあれだけで済ませてやったんだ感謝してほしい。
なんとか大事には至らずに安心した俺だが、まさか男に痴漢されるとはと今更ながらショックである。
日向のフリをしているが見た目は俺なわけで、痴漢に遭ったのも俺なのだ。ヤバキタの御子柴と恐れられている俺がまさか男に痴漢されるなんて情けなさすぎる。
オメガじゃあるまいし……まぁ、オメガなんだけどさ。
落ち込みながら駅を出て、目的地である星宮学園に向かった。
◇◇◇
駅を出てからは無事に学校に着いた。
日向から教えてもらった教室へ向かうと教室内には俺以外のクラスメイトが全員おり、5分前にも関わらずきっちり席に着いていた。
まじか……5分前に着くとか俺優等生じゃね、とか思ってたのにこいつら化け物かよと不良と喧嘩する時よりも怖かった。
一つだけ空いている席を見つけた俺は、おそらくそこが日向の席だろうと迷わずに席に座った。
「おはよう日向くん! 今日は遅かったね」
「あ、うん、ちょっとね」
「休みかと思って心配したよ」
「今日も可愛いね」
「あ、ありがとう」
なんか俺が席に着いた途端にクラスメイト達が続々と朝の挨拶をしてくる。平気で可愛いとか言ってきて、本当に怖いんだけど……
これを毎日、日向はしているのかと思うとやはり尊敬する。
俺、一週間持つかなと心配になった。
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