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5 救世主
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ホテルを出た俺だが、ここがどこなのか全くわからなずオロオロとあたりをうろついていた。スマホはホテルに置いてきてしまって連絡する手段がない。
「くそ、まじで最悪だ」
交番にでも行こうかと考えたが、手錠をした男が現れたら何事かと大騒ぎになりそうだし、男に襲われそうになったなんて恥ずかしくてとてもじゃないが言えない。
諦めた俺はどこかの公園のトイレの個室にはいり、便座に座る。未だにあいつの触った感触が残っていて気持ち悪い。人生最大の汚点になってしまった。
ズボンを下ろすとあんなクズに触られたのに俺の性器は少しだけ反応してしまっていた。
「くっそ、後ろ濡れてる、まじ最悪」
おもむろに自身の後ろに手を伸ばすと少しだけ愛液で濡れていた。
──そう俺はオメガだ。
俺の双子の弟である日向はアルファ、両親も共にアルファだ。
ついでに悪友の凛もアルファだ。ヤバキタに通ってるクセにアルファとか腹立つ。
世間ではオメガを劣等種として扱われる。しかし、御子柴家にオメガへの偏見なんてなく、日向同様に愛情たっぷりに育てられた俺は、オメガだからと下に見られることが許せなかった。
だから不良になってアルファだろうがベータだろうオメガだろうがムカつく奴はボコボコにしてきた。
オメガだからアルファと番になる気も子どもを産む気もない。俺は俺だからオメガなんて関係ない。
俺以外の家族全員と悪友がアルファだからなのか、俺はかなりアルファに対して耐性がある。
だからアルファにちんこを触られたぐらいでフェロモンを出したりなんかしない。発情期も全然酷くなくて薬を飲んでればいつも通り過ごせている。
そのお陰で今のところ家族と悪友の凛にしか俺がオメガだと言うことはバレていない。
だが、オメガの本能には逆らえないのも正直なところある。フェロモンは出ずとも反応はしてしまうのはオメガだからではなく男の性ってもんだ。だが、後ろが濡れるのはオメガだけある。
一人でする時もついつい後ろに手が伸びてしまうことが嫌で嫌でしょうがなかった。
「あ"ぁぁぁ、あいつまじ次会ったらぶっ殺す!!!」
男子トイレの個室でパンツを下ろした状態で俺は叫んだ。
次、正義の姿であったらボコボコにしてやろうと決意する。だがまぁ、日向がこんな思いしないで済んだのは不幸中の幸いだろう。
しかし、どうしたもんか。日向や凛に電話して迎えに来てもらうにもスマホはないしお金もない。途方に暮れているとトイレの外の方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい! 正義ー!」
あぁ、幻聴だろうか。クズ野郎と一緒にいたから耳が腐ったのかも……と思っている俺だったが、間違いないこの声は弟の日向の声だ。俺はパンツを履き直しトイレから出てあたりを見渡す。
「! 日向、それに凛も」
「正義! 大丈夫だった? って大丈夫じゃないよね」
なんと日向と凛がこちらにやって来るではないか。日向は俺に気づくとそのまま全力で走ってきて俺に抱きついた。
手錠をしている俺はうまくバランスが取れずそのまま後ろへ尻もちをついた。
なんで俺がここにいることを知っているんだ。あとなぜ俺が大丈夫じゃないことも知ってんだよ。
もうダメかと思っていたのにまさかの助けに驚きを隠せないでいた。
「よかった、これ付けておいて」
日向は涙目になりながら俺の髪についている、朝付けたピンを外した。
「なんでお前ら俺の居場所わかったんだよ……」
「このピン盗聴器付きの高性能機器なんだー、凛がもしものためにって用意してくれたんだよ」
「感謝しろよー、でもまさか本当に久住がおまえに手を出すとはなー」
──そんなことより今、盗聴器って言わなかったか?
「おい、盗聴器って……」
「安心しろ、お前の喘ぎ声はもちろんしっかり聞いていないからな」
ぜってー聞いてんじゃん! まじ最悪!
久住に襲われただけならまだしもその声を二人に聴かれるとか恥ずかしすぎるだろ。腹が立つよりも恥ずかしさが勝つ。
「大丈夫だよ! 正義の声すごく可愛かったから」
「ばっか! うれしくねぇわ!」
なんでも俺の身が危険なことがわかった二人は、俺がいそうなところを探し回っていてくれたらしい。
「お前スマホの位置情報オンにしとけよな、探すの大変だったんだぞ」
「知るか! んなこと」
とりあえず二人が来たことで帰る手段ができた俺は、二人と共に愛しの我が家に帰った。
「くそ、まじで最悪だ」
交番にでも行こうかと考えたが、手錠をした男が現れたら何事かと大騒ぎになりそうだし、男に襲われそうになったなんて恥ずかしくてとてもじゃないが言えない。
諦めた俺はどこかの公園のトイレの個室にはいり、便座に座る。未だにあいつの触った感触が残っていて気持ち悪い。人生最大の汚点になってしまった。
ズボンを下ろすとあんなクズに触られたのに俺の性器は少しだけ反応してしまっていた。
「くっそ、後ろ濡れてる、まじ最悪」
おもむろに自身の後ろに手を伸ばすと少しだけ愛液で濡れていた。
──そう俺はオメガだ。
俺の双子の弟である日向はアルファ、両親も共にアルファだ。
ついでに悪友の凛もアルファだ。ヤバキタに通ってるクセにアルファとか腹立つ。
世間ではオメガを劣等種として扱われる。しかし、御子柴家にオメガへの偏見なんてなく、日向同様に愛情たっぷりに育てられた俺は、オメガだからと下に見られることが許せなかった。
だから不良になってアルファだろうがベータだろうオメガだろうがムカつく奴はボコボコにしてきた。
オメガだからアルファと番になる気も子どもを産む気もない。俺は俺だからオメガなんて関係ない。
俺以外の家族全員と悪友がアルファだからなのか、俺はかなりアルファに対して耐性がある。
だからアルファにちんこを触られたぐらいでフェロモンを出したりなんかしない。発情期も全然酷くなくて薬を飲んでればいつも通り過ごせている。
そのお陰で今のところ家族と悪友の凛にしか俺がオメガだと言うことはバレていない。
だが、オメガの本能には逆らえないのも正直なところある。フェロモンは出ずとも反応はしてしまうのはオメガだからではなく男の性ってもんだ。だが、後ろが濡れるのはオメガだけある。
一人でする時もついつい後ろに手が伸びてしまうことが嫌で嫌でしょうがなかった。
「あ"ぁぁぁ、あいつまじ次会ったらぶっ殺す!!!」
男子トイレの個室でパンツを下ろした状態で俺は叫んだ。
次、正義の姿であったらボコボコにしてやろうと決意する。だがまぁ、日向がこんな思いしないで済んだのは不幸中の幸いだろう。
しかし、どうしたもんか。日向や凛に電話して迎えに来てもらうにもスマホはないしお金もない。途方に暮れているとトイレの外の方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい! 正義ー!」
あぁ、幻聴だろうか。クズ野郎と一緒にいたから耳が腐ったのかも……と思っている俺だったが、間違いないこの声は弟の日向の声だ。俺はパンツを履き直しトイレから出てあたりを見渡す。
「! 日向、それに凛も」
「正義! 大丈夫だった? って大丈夫じゃないよね」
なんと日向と凛がこちらにやって来るではないか。日向は俺に気づくとそのまま全力で走ってきて俺に抱きついた。
手錠をしている俺はうまくバランスが取れずそのまま後ろへ尻もちをついた。
なんで俺がここにいることを知っているんだ。あとなぜ俺が大丈夫じゃないことも知ってんだよ。
もうダメかと思っていたのにまさかの助けに驚きを隠せないでいた。
「よかった、これ付けておいて」
日向は涙目になりながら俺の髪についている、朝付けたピンを外した。
「なんでお前ら俺の居場所わかったんだよ……」
「このピン盗聴器付きの高性能機器なんだー、凛がもしものためにって用意してくれたんだよ」
「感謝しろよー、でもまさか本当に久住がおまえに手を出すとはなー」
──そんなことより今、盗聴器って言わなかったか?
「おい、盗聴器って……」
「安心しろ、お前の喘ぎ声はもちろんしっかり聞いていないからな」
ぜってー聞いてんじゃん! まじ最悪!
久住に襲われただけならまだしもその声を二人に聴かれるとか恥ずかしすぎるだろ。腹が立つよりも恥ずかしさが勝つ。
「大丈夫だよ! 正義の声すごく可愛かったから」
「ばっか! うれしくねぇわ!」
なんでも俺の身が危険なことがわかった二人は、俺がいそうなところを探し回っていてくれたらしい。
「お前スマホの位置情報オンにしとけよな、探すの大変だったんだぞ」
「知るか! んなこと」
とりあえず二人が来たことで帰る手段ができた俺は、二人と共に愛しの我が家に帰った。
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