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第2話「気付いてやれなくて(完結)」
しおりを挟む「でもなんで絵がないんだろう」
やはり気にかかる。なにか理由があるはずだ。どれだけ探そうが答えを知る者がもういないのは確かだ。しかし、答え合わせができなくても答えを考えることはできる。
どんどん絵本を解読していった。
『お父さんとするキャッチボール
お母さんとするお料理』
きっと息子の理想なのだろう。母の私も父親が亡くなってから仕事ばかりの毎日であまりかまってやれなかった。父親とキャッチボールをやりたかっただろうに。おとなしい子と言ったが、それのせいもありわがままを言わない子だった。面と向かって言えない本当の気持ちを、絵本を通して伝えたかったのかもしれない。
息子は特別絵が上手いわけではない。だけど、他の絵本にはしっかり絵を描いている。
ここからは私の単なる考えだが、理想だから現実ではない。それをわかっている上で、絵を描かなかったのかもしれない。
「あの子の本当の気持ちかぁ…」
あの時はそんなこと少しも考えていなかった。私も成長した。だからこそわかる。四年経った今だからこそわかることもあるもんだ。
「絵本」
それは自分の本当の気持ちを表す、息子にとってはたった一つの道具だったのかもしれない。息子が死んで四年経ちやっと分かった。もう遅いかもしれないが
“気付いてやれなくてごめんね”
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