上 下
60 / 60
「ポーン(兵士)」

「RESPAWN」

しおりを挟む
溶けたマグマで覆われているものの、彼女が火の神の力でも使っているのか熱くはない。
「今頃は、あの時代のアタシが、各時代の主人公に、水の神ちゃんと木の神ちゃんの力の一部を配り終えてる頃かしらねぇ。本来の力の八分の一だから、時間を超えることはできないどころか時間移動したら酔うままだけど、記憶は改竄されないはず…若返ることなんてなく歳も普通に重ねるけど、戦場で少しぐらいならタフになれるはず…」
これで根元である土の神の力を封じ込めることができれば、水の神以外の4神は存在自体が消える。
「そう、アッタリ~。そして、役目を終えた主人公たちから力を回収してしまって、最後は先生に渡せばお終い。まあ、けっこうヒント与えてたのに、先生、なっかなか気付かないだもん。歴史の影響受けないのを主人公補正なんて本っ気で思ってたの?そもそもさ、過去で決着付けちゃったら、水の神ちゃんの力待ってないと記憶や関係リセットされるぢゃない。かといって、未来で戦うとなると、誰かが封じてないと前のときみたいに予想外の反撃されちゃうし、先生そこまで考えてなかったでしょ?」
そう言われると辛いものがある。確かにアレは予想外だったが、あれは彼女が…
「あれ?アタシのせいにしようとしてる?言っとくけど、アタシだけぢゃなくて土の神ちゃんだろうと、水の神ちゃんだろうと、時空歪んだらわかっちゃうからね。そんな対策しなくて倒せると思ってたの?やっぱり、先生、アタシいないと少し抜けてるよねぇ。」
言われてみれば、水の神は「ナイト」や「キング」で歴史改変を認識していた。
そんな話をしながら進むと、黄色に輝く卵型の岩があった。
「これが?」
「そう。これが、土の神ちゃんになって、後々4神を生み出すの…かなりの力を持ってはいたのに、一手だけ読み間違えたのね。それがアタシ…自分が倒される可能性を考えた土の神ちゃんはアタシを影武者にしようとしたの。正史の第9部で土の神ちゃん追い詰める決め手が、土の神ちゃんと同じ力を持つ主人公っていうのにねぇ。」
私が話を聞き終わ前に、彼女は土の神の卵に手を触れた。
「アタシが、土の神ちゃんの力封じるから、先生は…」
そのとき、黒い光とともに空間が割れ、黄金の龍が現れた。
「んもう!やっぱり来たのね。せっかくの先生との別れのシーンなのに。でもまあ、あの子たちも来てるんでしょうから、もう終わるわよね。」
その黄金の龍を追うように、ソラ・風田哲也・水本耕一・赤井隆・赤井義経・海波洋一・渡房太郎・ゲルが現れた。
ソラが風で黄金の龍の動きを止め、風田哲也が青い炎で黄金の龍を殴りつけ、水本耕一が大量のクナイを投げつけた。
赤井隆が銀の弾丸で黄金の龍に傷をつけると、赤井義経はその傷口からエネルギーを奪い大剣を刺し込んだ。
海波洋一が傷の出来た箇所のみの時空を歪め傷を負う苦しみを何度も与え続けると、渡房太郎が白い翼で素早く動き、ゲルから渡された特殊プレートで能力を封じていった。
どれもこれも彼女が土の神の能力を封じてくれていたおかげだったのだろう。
黄金の龍…モデルは五行で土を現す黄龍(応龍)か…
「よし。これで終わりっと…ぢゃあね、先生……」
彼女は私の中の木の神と水の神を使い、私たちを未来に送った。

歴史が変わった紀元前799年7月、ソラは彼女とともに巨大な蛇の魔物などを倒すと、「空白」とは異なり、眠りにつかずその時代を守っていくこととなる。
歴史が変わった西暦1192年8月、ゲルは「ルーク」と異なり、カステル・デル・モンテの設計図をフリードリヒ2世に送りつけると、イタリアを去り再び世界を旅した。
歴史が変わった西暦1574年12月以降、「鬼火」と異なり、魔物がいない世界で、赤井義経は父の赤井義朝とともに、日本各地で武勲を積み、最終的に九州の肥後(熊本)に移り住んだ。
歴史が変わった西暦1989年6月、「ナイト」と異なり、水の神から力は得なかったが、彼女から力を得ていた水本耕一は、自分を裏切る前に会社を辞め平穏な時を過ごしていった。
歴史が変わった西暦1999年2月、「GAME」と異なり天使がいない世界で、風田哲也は料理人として真美とともに小さなレストランを経営していた。
歴史が変わった西暦1999年3月、「SAME」での組織の矛盾を知った赤井隆は、アメリカから日本の長崎県に渡った。
歴史が変わった西暦2001年11月18日、「キング」と異なり海波洋一が家族を奪われることはなかった。
歴史が変わった西暦2027年1月、「VANE」と異なり、魔物の力を受け継ぐ者のいない世界で渡房太郎は大阪で家族とともに暮らしていた。
そして、
同じく歴史が変わった西暦2027年、私は宮崎県延岡市の祝子川ほうりがわの堤防で倒れていた。ブックスヒュウガが残っていた事は嬉しかったが、私の作品は販売されていなかった。
これまで描いてきたものが全て消えた事にショックを受けていた私に一人の少女が声をかけていた。
「先生、商業誌ぢゃなくてこっちでしょ。全く、先生、アタシいないとダメダメねぇ。」
少女は私に同人誌の「ソラ シロ シリーズ」を差し出した。
「御子ちゃん、先生じゃなくておじいちゃんでしょ。」
そこには、私とともに歳を重ねた飾薫がいた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...