この異世界は、かつて私が創造した世界

「ポーン（兵士）」

「PAWN」2

渡房太郎わたりぼうたろうの話によると、房太郎の翼の傷も突然、生存者の中で神になろうと思い立った者たちにより、背後から撃たれたとのことだった。
攻雲こううんも「僧正」ではそういった人間たちからの裏切りに合い、バット・ズーの血を飲み魔物へ姿を変えた。
私たちは、バット・ズーの治療をするとともに、攻雲をその岩山に関わらせないように、ソラに見送らせた。
バット・ズーは、数百年ぶりに見た赤井義経あかいよしつねに驚いていたが、直ぐに状況を把握した。
攻雲に血を与えなくとも、神を裏切り、神の加護を失った元天使には死期が近付いていることを伝え、去っていった。

***

バット・ズーの傷が癒えるとほぼ同時期に、渡房太郎や水本耕二みずももこうじも傷を回復させた。
バット・ズーに別れを告げ、水本耕二に正確な時刻を神西暦15年（西暦1242年）6月10日にたどり着いた。
ただし、時刻は、私や水本耕二が未来に行くことりなる1時間前…
昔見た「ザ・フューチャー」という映画であったように、時間移動開始の少し前に行き、時間移動開始時のトラブルを解決すればいい。いや、まあ、「ザ・フューチャー」では結局その方法は間に合わず別の要因で歴史改変されるのだが…まあやってみる価値はある…「ザ・フューチャー パート1」のように防弾チョッキは用意できないが、「ザ・フューチャー パート3」のように鉄板をゲルに着けさせれば銃弾を防ぐ事ができるかもしれない。

***

神西暦15年（西暦1242年）6月10日6時56分…
場所は多少誤差が生じてしまっていたが、カステル・デル・モンテから近い…
私の足はともかく、渡房太郎なら余裕でたどり着ける距離…飛行可能な風田哲也かぜたてつややソラ、忍の修行をした水本耕二みずももこうじでも間に合うほどであった。いや、水本耕二はやめておこうか…「ザ・フューチャー」で語られるような宇宙の崩壊は起こらないかもしれないが、同一人物が出逢うことにより過干渉による本人の消滅ぐらいは起きるかもしれない。
「そう簡単に時の流れが変えられては、多重の記憶を有するこの水の神にはいい迷惑だ…」
そう言いながら、水の神が現れた。

水の神のモデルは、五行で水を表す玄武であるが、他にも、水に関連するポセイドンやオーディンの要素も含んでいる。
能力としては、能力バトルものによくある水操作に加えて時間操作…
「まずい。」
水の神は、そう思う瞬間すら与えなかった。まさに刹那…だが、その刹那があまりにも長く続いた。
水の神は、すぐさま私たちがいた一帯の時間を止めた。
「何をしているのですか？このまま攻撃すればいいのではないのですか？」
時間を止め動けない私たちの前に金の神が現れた。
金の神のモデルは、白虎。金属を操るという設定から巨大な大砲を背負っている。
金星がヴィーナスに該当することから、「ナイト」書き下ろしでデザインしたときは、当初、人間の女性の姿に変わる事も可能にしようとしたが、どうもイメージと合わずその設定は使用しなかったが…
「今、その内部とこちらは全く別に時間の流れ…貴方の自慢の大砲でも貫けないのです。この水の神に負担がかかるだけです。」
「試しもせずに何故そう言い切れるのですか？」
金の神は、女性の姿となり両腕の大砲を私たちに向けた。