この異世界は、かつて私が創造した世界

「ポーン（兵士）」

「PAWN」1

私たちが目覚めると、そこは神西暦546年だった。最初は、そこが中国文化を持ついつかの時代ということしかわからなかった。

そこが、神西暦546年とわかったのは、攻雲こううんがいたためだった。
攻雲…神西暦546年に魔物からバット・ズーを助けたために、運命が変わった大僧正である。
最後に傷を癒すためにバット・ズーの体液を飲み魔物に変わる姿や、その世界観の設定は、読み切りながら読者の心にトラウマとして植え付けられたらしい。
岩山に登った魔物たちに無数の弓矢で攻撃されるバット・ズー…
この場所は特定していないが、岩山のモデルは、映画「バター」でもモデルとして使われた武陵源である。
「狩れ！狩れ！」
バット・ズーが素早く移動しようとしたが、既に翼に傷を負っていたため上手く飛べずに当たってしまった。

「ボクと同じだ…」
渡房太郎わたりぼうたろうがその光景を見ながら蹲った。
「そういえば、まだ話を聞いてなかったな…」
房太郎の話を聞く必要もあったが、大僧正攻雲が魔物となるのを避けるために、赤井義経あかいよしつねとソラに動いてもらった。
水本耕二みずももこうじと風田哲也かぜたてつやには傷を癒すために休んでもらった。
房太郎の話を聞くのほ、私と赤井隆あかいたかし…
「あの神西暦772年の戦いの後、何が起きた？」
赤井隆が渡房太郎に問う。
「ボクもあの時は幼かったため、正確には覚えてないため…生存者たちの話を集めたものになるのですが…」
渡の話によると、状況は「VANE」のときよりも悪化していた。
あの木の神との戦いから1ヶ月経った神西暦772年7月…つまり、西暦1999年の7の月…「ノストラダムスの大予言」を思わせるように、恐怖の大王ならぬ恐怖の神として土の神が現れ、水の神・金の神・火の神とともに世界の破壊を開始するとともに、傷を負ったはずの木の神を回復させた。
その際に地球のエネルギーを使用した事で地球は一気に荒廃した。
もちろん、それだけが理由ではない。神兵たちや四神たちにより魔族の主要都市は一掃された。
「VANE」内では荒廃しながらも守るべきものが残されていたが、あの未来には街どころか人間すらほとんど残されていなかった。
神の糧である人間がいなくなったわけではない。渡房太郎が守る人間たちとは別に、神は天使の血を人間に与え、魔物に近い姿に変えることでより栄養度の高い糧を作り出していた。
ヴィクターによるその実験は、神西暦772年の戦いよりも前に既に行われていたらしい…
それがわかったのは、渡房太郎の話からではなかった。
神西暦546年のこのとき、魔物たちを扇動する者として若きヴィクターがいたのだ。
「僧正」にも「VANE」にもこんなシーンは描いたことがない。
ヴィクターの若き姿自体は「VANE」で契約を描いたときにデザインしていたが…
ヴィクターは、既に魔物となった人間たちに矢を射たせたが、ソラが矢を止めた。
赤井義経が岩山を駆け上がり、ヴィクターに剣を向けた。
「さて…」
ヴィクターは、赤井義経をまじまじと見つめ観察すると、ニヤリと笑った。
「さてさて。あのお方から伝えられたのとは別の展開となりましたか…つまり貴方たちが、あのお方のおっしゃられていた歴史改変者たち…」
ヴィクターは、薬を噛み砕くと、私たちに情報をあたえないようにか塩となって消えていった。