この異世界は、かつて私が創造した世界

時雨竜

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「悪川シリーズ」

「業火」六之巻

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何故、魔物でもない水本耕二みずもとこうじが操られたのか…いくつか可能性は考えられたが、その答えは直ぐに服部半蔵によって提示された。
「…魔族とは元々、神に仕える者たち…その加護が無い離反者たち…そういった面では、この者も神に力を与えられながら神の加護から離れた離反者…不安定な状態の力を洗脳するなど造作もないこと…」
おそらく火の神の入れ知恵か…
「その能力も修行で手に入れたと?」
「…まだ能力を使いこなせていないようでしたので…水面に写ったものを感じとる能力…実際は水を操る事もできるはずなのに…感知特化になっていましたから…」
確かに、水本耕二は、水面や鏡面による感知だけなく、水も操る事ができる。それは「ナイト」終盤で、海波洋一みなみよういちの死後、水や時間を操る事で水の神を倒している事からもわかる。
しかしまあ、余裕ぶって語っているが、実際は服部半蔵は大変なはず…水本耕二を操作しながら自分も会話などをしなければならない…脳を2倍活用するとまではいかないかもしれないが…それなりに負担はあるはずであった。
実際、操る事だけに洗脳して自身は伊賀の国なり武蔵の国なりに身を隠していればよかったのに…これには、服部半蔵の性格設定が原因しているのだろう…服部半蔵は、洗脳している者であろうと、他人を信用しない…どういう状況であろうと、とどめは自らの手で刺しにくる。
まあ、だからこそ、ここに服部半蔵が現れることは予想が着いていた。…水本耕二が操られるというのは予想外だったが、人質なりとして連れて来ることは予想していた。
そのため、服部半蔵には悪いが、すでに対策は立ててある。魔物の誰かが再び操られたとき用の対策を…
「この男の洗脳をときたい…」
私の言葉を合図に、風とバット・ズーが、私と水本の体をそれぞれ移動させ距離を開けさせた。
水本にタックルする形となった風は、そのまま凍った水の巨人に突っ込んでいった。
「…!…そうだ!氷、解かさないと…」
風やバット・ズーに遅れて、サラマンダー・ズーが作戦の意図に気付き、炎を出して氷を解かした。
水の巨人の成分は、真の隠し湯…身体を正常に戻す効果を持つ。この隠し湯が洗脳を解く効果があることはわかっていた。
「鬼火」で負傷したバット・ズーが、ウルフ・ズーに担がれ、真の隠し湯に入ったときに、一度、洗脳が解けている。その後、洗脳されたふりをして、服部半蔵を裏切り、義経に情報をもらしていたが、最期はそれがわかり再び洗脳され義経に斬られることになった。
水本は、解けた水の巨人の中に入った。
「水を操る者を、水に入れるなど…まさに水を得た魚…無意味にもほどがある。」
服部半蔵はそう言いながら、ウルフ・ズーと義経に何十本ものクナイを投げつけた。
だが、それが当たることは無かった。
正気を取り戻した水本が、水の巨人の中からクナイを投げ、その軌道を変えていた。
「修業で、力を開花させてくれたことには感謝する…」
触れる事で相手を洗脳する服部半蔵にとって、水を操作できるようになった水本は相性が最悪であった。
水の遠隔操作というだけでも攻略が難しいのに、水の巨人を纏われては、直接触れる事など不可能に近かった。
服部半蔵は水の巨人の中でもがいていたが、水本は、水の巨人の中の水流を操作し、そこから出る事は困難だった。
「…ガハ!…飼い犬に手を噛まれるとはこのことか……が、直ぐにあの方からの神の制裁が来るであろう…」
それが服部半蔵の最期の言葉だった。服部半蔵はそのまま意識を失った。
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