この異世界は、かつて私が創造した世界

「悪川シリーズ」

「鬼火」壱之巻

水本耕二みずもとこうじは、辺りを見回していたが、私はその場所を知っていた。
もちろん、時代こそ異なるが、取材も兼ねてここに寄ることが多かった。
「鬼火」は、実際の歴史の流れとは異なる。
神西暦373年と、西暦1600年にもなるのに、織田信長や豊臣秀吉が生存していている。もっとも、信長は、本能寺から逃げ延びた後、一時的に記憶を失い、その間に当時の勢力はほぼ秀吉や家康のものとなっていて、かなり乱れた世界となっているのだが。「鬼火」の読者からは、架空史として本来の歴史との差異を考えるのを楽しんでもらえたようで好評を得ていた。
ここは、岡山県を中心に兵庫県・鳥取県が治める浦上成宗うらがみしげむねの本拠地・鬼ノ城きのじょう…

西暦1574年…神西暦になおすと347年…3月に同盟関係にあった宇喜田直家うきたなおいえの離反したことにより、開始された戦いで、天神山城てんじんやまじょうを退去した浦上宗景うらがみむねかげは、息子の成宗などとともに、大和朝廷時代の古代城である鬼ノ城に移り住んだ。
数年前に一度宇喜田直家に離反された経験を持つ浦上宗景は、信頼のおける部下や信長からの支援により鬼ノ城を巨大要塞として密かに改築していた。
さらに内通していた織田信長の勢力も借り、尻尾を出した宇喜田直家を討ち取ることに成功する。一部の謀反人は討ちもらし、毛利方に逃げられてしまうも、織田信長への恩義は忘れず、1582年…神西暦になおすと355年に成宗に家督が譲られたが、その直後、本能寺の変により信長が消息を絶ってからも秀吉や家康につかず、一つの大きな勢力を保ち、信長発見後、南九州の医師のもとに行き回復させ、京都を中心に再び信長が勢力を広げるのを支援した。

そのため、岡山県（備前）は浦上宗景が治め、隣国の織田信長や毛利元就とは友好な関係を保っていた。
信長は他にも畿内の豊臣秀吉や東海の今川氏真、さらには、北部九州で記憶喪失の信長を発見した立花宗茂とも同盟を結び、各国への牽制をし、征夷大将軍まであと一歩というところまで近付いていた。
本来なら、徳川家康もこの中に入ったかもしれない…いや、実際に、「鬼火」内では、信長や今川と同盟を結んでいた。
しかし、西暦1600年…つまり、今いる現在において、家康は、北の上杉・武田・北条・最上、南部九州の 島津、四国の長宗我部と内通し、日本各地で同時に戦を仕掛ける…
海波洋一みなみよういちの持っていた歴史書によると、「慶長5年の管理統治」に勝利した徳川家康によって、織田信長の同盟関係にあった国は家康により統治されることとなり同盟関係の他の国々もそれに従うこととなる。これにより、慶長8年（西暦1603年）…神西暦376年に徳川家康が征夷大将軍となり、江戸時代が開始されることなる。

「鬼火」の物語の開始は、西暦1574年…幼き少年・赤井義経が鬼ノ城地下にいた本物の鬼と出会ったことから開始される。そこから日本各地で魔族を倒すための旅をしていた。「神西暦シリーズ」と繋げるのであれば、これ自体は阻止しなくていい。
西暦1574年から西暦1600年までの26年間の旅は、魔身血社まじんけっしゃと呼ばれる13体の魔族の秘密結社との戦い…本来ならその後で、旅の終わりにその魔身血社を陰から操っていた存在を終わるはずだった。