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「チェスシリーズ」
「ルーク」3
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まあ、ゲルは今はイタリア語で話しているが、それほど心配する必要はなかった。
神西暦になれば、火の神によって強制的に言葉は統一されるし、ゲルは…
「貴様、その異常な能力、神から能力を得たのか?」
そんな事を考えている内に、海波洋一が動いた。
背面飛びをするとともに、抜いていた妖刀村正をゲルの首に向けて止めた。
この脊髄反射っぷりが「キング」の物語の流れを作ったと考えているが、この行動はいただけない。まだ、ゲルの見せ場や語りの途中だし、結論を急ぎすぎだ…まあ、そんな程度の攻撃に屈するゲルではないが…
「日本語か…懐かしいな…数年前に東を旅した時に、モンゴル語や中国語などとともに学んだものだ…」
そう言いながら、ゲルは右手で村正を掴み左手でそれを撫でている。
海波が動かそうと、村正をガタガタと揺らしているが、その切っ先は少しも動くことは無かった。
ゲルの右腕には、先ほどの八角形のプレートが刺さっていた。
「日本語が話せるのか!」
「その剣、見事なものだが、日本に行ったときの技術で考えると、少なくとも300年はかかるはず…それだというのに、剣は、かなり年季が入っている。お前たち、未来から来たのだな…そして、お前たちの姿や言動から考えると、お前たちも神を追っているのだな…」
ゲルは話が早くて助かる。
「話を聞いてやる。さあ、研究室に来るがいい!」
ゲルが、草むらに隠していた装置にプレートを入れると、地面は反転し洞窟内部ような外壁の研究室が現れた。
ゲルに連れられてその中に入ると、ゲルは本棚にプレートを入れ、再び地面は反転する。
さっきまで床だった地面が天井となって、私は本当の地面に頭をぶつけた。いくら漫画で描いていて、反転するとわかっていても、体験したことのないこんな現象にいきなり対処する方がおかしい…はずなのだが、海波洋一と水本耕二は、上手く着地し、ゲルは慣れたもので、反転の瞬間に、プレートを入れた場所にあるロープを掴み、ゆっくりとこちらに降りてきた。
「で、誰から話す?」
ゲルの言葉に、海波と水本の視線が、ぶつけた頭を痛がる私に向けられる。
まあ、2人をここへ連れて来たのは私だし、当然か…
「君の察しの通り、私たちは神を追ってここに来た。時間が無いため、説明は省くが、私たちはこの先の800年ほど後の未来で、人と神が対立する事を知っている。」
「なるほど…事情は後でいい。どちらというのを私は知りたい。」
そのときだった。ゲルのセンサーに何かひっかかったのか、金属をガンガンと叩く音が鳴り響いた。
ゲルは、プレートを使い、こちらに向かっている者に眼を剥ける。
「なるほど…フェデリーコ2世か…この地に来る可能性は考慮していたが、今来るとは…で、どちらがいい?」
ゲルは、私の反応を待たず、話を進める。
「まず、未来を知っているという点は信じている。つまりこれから起きる過去も、ある程度は把握している。その上で、このフェデリーコ2世が来るこの時点を選んだということは、ここがある種の分岐点なのだろう?」
「その通りだ。君とフリードリヒ2世との接点となるのが、この時点…資料として呼んだイタリア史の資料にも、ローマ皇帝となった翌年のこの年に、不思議な錬金術師とであったという記録もある。接点は作ってほしいし、カステル・デル・モンテも作ってほしい。」
「机上の空論だった陸の上の王冠が、できるとは…その上で神の情報は渡さないでほしいと?」
「ああ。フリードリヒ2世は、最初は各地の錬金術師と協力して神の力を封じる方法をさぐるが、結局、野心に溺れ神に成り代わろうと研究成果を奪いにくる。本来の歴史と違う話だからな、もし、あまり興味を示さなければ…そうだな…1999年に現れた魔王の話でも話してやればいい。」
それを聞くなり、ゲルがニヤリと笑い、ギザ歯が見えた。
「直ぐに済ませてこよう。」
神西暦になれば、火の神によって強制的に言葉は統一されるし、ゲルは…
「貴様、その異常な能力、神から能力を得たのか?」
そんな事を考えている内に、海波洋一が動いた。
背面飛びをするとともに、抜いていた妖刀村正をゲルの首に向けて止めた。
この脊髄反射っぷりが「キング」の物語の流れを作ったと考えているが、この行動はいただけない。まだ、ゲルの見せ場や語りの途中だし、結論を急ぎすぎだ…まあ、そんな程度の攻撃に屈するゲルではないが…
「日本語か…懐かしいな…数年前に東を旅した時に、モンゴル語や中国語などとともに学んだものだ…」
そう言いながら、ゲルは右手で村正を掴み左手でそれを撫でている。
海波が動かそうと、村正をガタガタと揺らしているが、その切っ先は少しも動くことは無かった。
ゲルの右腕には、先ほどの八角形のプレートが刺さっていた。
「日本語が話せるのか!」
「その剣、見事なものだが、日本に行ったときの技術で考えると、少なくとも300年はかかるはず…それだというのに、剣は、かなり年季が入っている。お前たち、未来から来たのだな…そして、お前たちの姿や言動から考えると、お前たちも神を追っているのだな…」
ゲルは話が早くて助かる。
「話を聞いてやる。さあ、研究室に来るがいい!」
ゲルが、草むらに隠していた装置にプレートを入れると、地面は反転し洞窟内部ような外壁の研究室が現れた。
ゲルに連れられてその中に入ると、ゲルは本棚にプレートを入れ、再び地面は反転する。
さっきまで床だった地面が天井となって、私は本当の地面に頭をぶつけた。いくら漫画で描いていて、反転するとわかっていても、体験したことのないこんな現象にいきなり対処する方がおかしい…はずなのだが、海波洋一と水本耕二は、上手く着地し、ゲルは慣れたもので、反転の瞬間に、プレートを入れた場所にあるロープを掴み、ゆっくりとこちらに降りてきた。
「で、誰から話す?」
ゲルの言葉に、海波と水本の視線が、ぶつけた頭を痛がる私に向けられる。
まあ、2人をここへ連れて来たのは私だし、当然か…
「君の察しの通り、私たちは神を追ってここに来た。時間が無いため、説明は省くが、私たちはこの先の800年ほど後の未来で、人と神が対立する事を知っている。」
「なるほど…事情は後でいい。どちらというのを私は知りたい。」
そのときだった。ゲルのセンサーに何かひっかかったのか、金属をガンガンと叩く音が鳴り響いた。
ゲルは、プレートを使い、こちらに向かっている者に眼を剥ける。
「なるほど…フェデリーコ2世か…この地に来る可能性は考慮していたが、今来るとは…で、どちらがいい?」
ゲルは、私の反応を待たず、話を進める。
「まず、未来を知っているという点は信じている。つまりこれから起きる過去も、ある程度は把握している。その上で、このフェデリーコ2世が来るこの時点を選んだということは、ここがある種の分岐点なのだろう?」
「その通りだ。君とフリードリヒ2世との接点となるのが、この時点…資料として呼んだイタリア史の資料にも、ローマ皇帝となった翌年のこの年に、不思議な錬金術師とであったという記録もある。接点は作ってほしいし、カステル・デル・モンテも作ってほしい。」
「机上の空論だった陸の上の王冠が、できるとは…その上で神の情報は渡さないでほしいと?」
「ああ。フリードリヒ2世は、最初は各地の錬金術師と協力して神の力を封じる方法をさぐるが、結局、野心に溺れ神に成り代わろうと研究成果を奪いにくる。本来の歴史と違う話だからな、もし、あまり興味を示さなければ…そうだな…1999年に現れた魔王の話でも話してやればいい。」
それを聞くなり、ゲルがニヤリと笑い、ギザ歯が見えた。
「直ぐに済ませてこよう。」
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