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四章 一人ぼっちの君たちへ
第三十話 老将は笑う
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刹那、パチンとカストディオの指が鳴ると辺り一面に黒い靄がかかり始め、一気に見通しが悪くなっていく。
「これは、和解の意思がないってことで、受け取っていいんだね?」
「ふん、そもそも和解しようなんて鼻から思っていないくせに、何を言うか」
馬に乗っている所為か、ルイーヌの目にはもう足元すら見えなくなるくらいに靄がかかってしまっていた。
先天的に魔力の使用に長け、微細な変化すら感じ取るその探知能力で、勇者すら成し得なかった「結界の探知」に成功したのがルイーヌ。元々はただの一文官であったのに、その能力を買われヴィルヘルの私有軍の「魔騎兵」の長に抜擢された。
まるでその長所を逆手に取るように、カストディオの発生させた靄がルイーヌの探知能力を遮ってしまっている。
そして、先ほどまで目の前にいたカストディオの気配すらも感じられなかった。
「ちっ、逃がすかよ」
目を閉じて、手を合わせる。先ほどから魔力をソナーのように飛ばしているが、恐らくカストディオの高濃度の魔力をもとにした靄がそれを遮って周囲の状況が中々分からない。
加えて結界の中に入ってしまっている所為か、上手く魔結晶から魔力が取り込めない。
「迂闊だった、ヴァンパイアが最上級魔族と言われる所以は、結界の中でこそ発揮されるってことを、頭に入れておくべきだったな」
大きく手を挙げて、ルイーヌは後方に向かって檄を飛ばした。
「魔騎兵総勢五百!靄の届かぬ位置まで浮上し、魔結晶の回復を計れ!残りの騎兵隊はそのまま動かず、視界が回復するまで待て!!」
体内に残存している魔力を使い、ルイーヌを始めとした魔騎兵が次々と靄の届かない位置にまで浮上してくる。
思った通り、どうやら靄のかからない位置にまで来ると、魔結晶から上手く魔力が補給できるようになっているようだ。ルイーヌの指示どうり靄を払うため突風を引き起こし徐々に靄を晴らしていく魔騎兵たち。
しかし、ルイーヌの視線は靄の中に向いてはいなかった。
「その姿が、かつてその名一つで人類を震え上がらせたカストディオ卿の本来の姿と言うわけか」
「本当に何年振りかのぉ、この姿になるのは。儂の友人に人間のお方が居てな、その方から少し血を貰ったんじゃ。やっぱり人間の血が一番体に馴染む」
ルイーヌたちが浮上してくるのを知っていたかのように待ち構えていたカストディオの姿は、面影こそ残しているものの、数十年分若返ったような姿をしていた。
上級魔族のヴァンパイアは他の種族の動物の血を体内に摂取することで、数時間だけ戦闘に適した体型になれるという特性を持つ。高度な知能、結界、戦闘に適した特性。これらを持っているが故に、ヴァンパイアは上級魔族の中でも最も知名度が高く、遥か昔から人間に禁忌として恐れられていた。
その禁忌の存在が今、ルイーヌの前に立ちはばかる。
「さっきまであなたが引きつれていた魔族たちはどこにやった?」
「はっはっは、そんなものたちは最初からおらんよ。ここがどんな地帯かよく知らんようじゃな、敵地に攻め込む将として、地形の把握は必須じゃよ」
「………何だと?」
「知らぬなら教えてやろう。お前も先ほど自分で言ったであろう、ここが蒸し暑いと。ここの地下深くには豊富な水源が通っているのじゃ、それをわざわざ儂が地表近くまで予め引き揚げさせてもらい、湿度をグンと引き上げた。これで分かったか?『陽炎現象』、遠くのものが近くに見えるというあれのことじゃな。それに、ちと結界と儂の魔力で補正をつけて、さもここに大衆がいるように見せかけておったのじゃ。あと、結界を破らぬ限りその靄は際限なく湧き続けるぞい?」
先ほどから魔騎兵達が突風を引き起こし靄を払おうとしているが、払っても払っても際限なく湧き続ける黒い靄。次第にそれが広範囲に広がり、兵士たちに困惑や恐怖が拡散していった。
「じゃあ、簡単な話だ。結界を破る為に、さっさとあなたを倒せばいいんでしょ?俺らも最初から、あなたしか狙っていなかったしね。他の有象無象の魔族は後からいくらでも手に入る」
「ふん、ようやく仮面を剥がしたのぉ。さて、魔王軍にカストディオ有りと言わせしめたこの力、存分に見ていくと良い」
カストディオを取り囲む五百の魔騎兵。
五百対一。しかし、老将は笑う。先日、勇者に戦いを挑んだ時とは違い、その瞳に諦めの意思は微塵も浮かんではいなかった。
☆
「おい!一体どうなっているのだ!?」
「警備隊の報告によると、町中のあちこちで建物が派手に爆破され、民はパニックを起こしているようです!そのパニックに巻き込まれ、空中を警備している少数の魔騎兵以外の騎士団はもはやその混乱に巻き込まれ機能しておりません!少数でもよろしいので、極騎兵を鎮静化のため割いていただきたいとっ」
「何故だ、魔族の者たちはルイーヌの軍と交戦中のはずだろうに、何故広範囲で同時に混乱が起きる………ちっ、極騎兵を割くことは出来ぬ、それこそ敵の思うつぼだ」
「しかしこのままでは、城に民が押し寄せてくる可能性が」
ヴィルヘルとシルビアが処刑台に上った直後に鳴り響いた轟音、それに合わせて地響きが起き、速報が続々と軍師のもとに飛び込んでくる。
しかし、そんな中でもヴィルヘルの頭は冷静であった。一つ一つの報告を整理し、これから起こり得る事態を予測する。
「警備に当たっている魔騎兵に伝えよ、乱暴な手を使っても良いから、この広場近く、加えて城に近づけない様に民の鎮静化を計れ。混乱をここに導いてはならぬ。そして騎士団全員に伝えよ、直ちに教会関係の建物を取り押さえよ。この混乱に一枚噛んでいるだろうからな」
「教会、をですか?しかし、その推測が間違っていれば責任が───」
「───構わないっ、急げ!」
ヴィルヘルの命令が飛ぶ。複数の伝令隊が短く了解の返事を告げ、馬に乗り方々へ駆けて行った。
ルイーヌの探知能力は、人知を超えた練度を誇る。まさにあれこそ天武の才と呼ぶべきなのだろうと、ヴィルヘルは評価していた。本人こそ少し思慮が浅い性格をしているものの、彼を先頭とした軍隊がみすみす魔族たちとすれ違いになるわけがない。だとしたら、考えられる混乱の可能性は、内部からの犯行だ。
「ヴィルヘル殿、教会側の難癖は厄介ですぞ」
「あぁ、ハインリッヒ殿。大丈夫です、十中八九教会側の仕業と考えてよろしいかと。まず、勇者が死んで困る勢力は教会側と、数日前現れた未だ存在の確認が出来ていない魔王らしき魔族一匹のみです。そこから可能性を絞るのは容易い。そもそも、教会の連中は戦時中からコソコソと魔族側と手を組んだりしたりして不穏な動きが多かったですから、抑えていて問題はありますまい」
「貴公らしいですな」
立場上では同位である二人であったが、ハインリッヒは先代王の遺言によりヴィルヘルを支える者として、彼の私有軍に組み込まれることとなった。
政治の中心であるヴィルヘル、軍部の中心であるハインリッヒ。この二人が手を組んだことで、ヴィルヘルは政界の誰よりも優位に政治を動かせることが出来るようになっている。
太陽は真上に上っていた。
かつて人々から、暗闇を照らす月のようだと称えられた勇者シルビア・ランチエリは、目を閉じ、身じろぎひとつせず、正座で己の命が果ててしまう瞬間を待っている。
「時間だ。ハインリッヒ殿、お願いします」
人間が扱うにはあまりにも大きな大剣がハインリッヒの背中からぬらっと引き抜かれる。剣と言うよりも、肉切り包丁と言った方がしっくりくるような形状。それは戦うことより、何よりも相手の命を根こそぎ、乱暴に奪っていくことのみに特化しているようだ。あまりにも狂気的なその剣が一人の少女に向けられる、思わずヴィルヘルも眉をひそめてしまった。
しかし、ハインリッヒは引き抜いたその大剣を振るわず構えたままで、表情を固めたままピクリとも動かない。
不可解に思ったヴィルヘルの首がわずかに傾く。
「どうされました?」
「………ヴィルヘル殿、どうやら少し、遅かったようですな」
一瞬であった。
太陽が何かに重なり、ヴィルヘルの視界が陰る。即座に動き出したハインリッヒにヴィルヘルは抱き寄せられ、その陰りの正体から身を守るように、大剣が二人の体を守る盾となった。固い物と固い物がぶつかるときに起きる甲高い金属音、相当の負荷が掛かっているのか、ハインリッヒの鎧がギチギチと擦れ合う音を鳴らす。
目と鼻の先で見ているから分かる。棍棒の様に野太いハインリッヒの頭や首に、血管がこれでもかと浮かび上がっていた。
「ヌンッ!!」
グンと両足に力を入れて、ハインリッヒは降ってきたものを無理矢理弾き返した。
解放される視界。ヴィルヘルの目に映っていたのは、彼が最も危惧していた不可解な可能性。
「マジですか………片手で止められるとか思って無かった」
「………その姿は、魔王か?」
「え、あ、はい。初めまして」
黒曜石の様に固く尖った体表、サソリの様な尾、何よりもその深く据えた瞳が、かつて全人類を絶望に突き落とした「魔王」そのものである。
指揮官のヴィルヘルよりも一回り若い、青年の「魔王」だ。
「ヴィルヘル殿ここは任せてもらおう。処刑の方は、適当な兵に任せておいて下さい」
「うっわ、何その筋肉。体育会系とか、ホント嫌いなんだけど………」
「これは、和解の意思がないってことで、受け取っていいんだね?」
「ふん、そもそも和解しようなんて鼻から思っていないくせに、何を言うか」
馬に乗っている所為か、ルイーヌの目にはもう足元すら見えなくなるくらいに靄がかかってしまっていた。
先天的に魔力の使用に長け、微細な変化すら感じ取るその探知能力で、勇者すら成し得なかった「結界の探知」に成功したのがルイーヌ。元々はただの一文官であったのに、その能力を買われヴィルヘルの私有軍の「魔騎兵」の長に抜擢された。
まるでその長所を逆手に取るように、カストディオの発生させた靄がルイーヌの探知能力を遮ってしまっている。
そして、先ほどまで目の前にいたカストディオの気配すらも感じられなかった。
「ちっ、逃がすかよ」
目を閉じて、手を合わせる。先ほどから魔力をソナーのように飛ばしているが、恐らくカストディオの高濃度の魔力をもとにした靄がそれを遮って周囲の状況が中々分からない。
加えて結界の中に入ってしまっている所為か、上手く魔結晶から魔力が取り込めない。
「迂闊だった、ヴァンパイアが最上級魔族と言われる所以は、結界の中でこそ発揮されるってことを、頭に入れておくべきだったな」
大きく手を挙げて、ルイーヌは後方に向かって檄を飛ばした。
「魔騎兵総勢五百!靄の届かぬ位置まで浮上し、魔結晶の回復を計れ!残りの騎兵隊はそのまま動かず、視界が回復するまで待て!!」
体内に残存している魔力を使い、ルイーヌを始めとした魔騎兵が次々と靄の届かない位置にまで浮上してくる。
思った通り、どうやら靄のかからない位置にまで来ると、魔結晶から上手く魔力が補給できるようになっているようだ。ルイーヌの指示どうり靄を払うため突風を引き起こし徐々に靄を晴らしていく魔騎兵たち。
しかし、ルイーヌの視線は靄の中に向いてはいなかった。
「その姿が、かつてその名一つで人類を震え上がらせたカストディオ卿の本来の姿と言うわけか」
「本当に何年振りかのぉ、この姿になるのは。儂の友人に人間のお方が居てな、その方から少し血を貰ったんじゃ。やっぱり人間の血が一番体に馴染む」
ルイーヌたちが浮上してくるのを知っていたかのように待ち構えていたカストディオの姿は、面影こそ残しているものの、数十年分若返ったような姿をしていた。
上級魔族のヴァンパイアは他の種族の動物の血を体内に摂取することで、数時間だけ戦闘に適した体型になれるという特性を持つ。高度な知能、結界、戦闘に適した特性。これらを持っているが故に、ヴァンパイアは上級魔族の中でも最も知名度が高く、遥か昔から人間に禁忌として恐れられていた。
その禁忌の存在が今、ルイーヌの前に立ちはばかる。
「さっきまであなたが引きつれていた魔族たちはどこにやった?」
「はっはっは、そんなものたちは最初からおらんよ。ここがどんな地帯かよく知らんようじゃな、敵地に攻め込む将として、地形の把握は必須じゃよ」
「………何だと?」
「知らぬなら教えてやろう。お前も先ほど自分で言ったであろう、ここが蒸し暑いと。ここの地下深くには豊富な水源が通っているのじゃ、それをわざわざ儂が地表近くまで予め引き揚げさせてもらい、湿度をグンと引き上げた。これで分かったか?『陽炎現象』、遠くのものが近くに見えるというあれのことじゃな。それに、ちと結界と儂の魔力で補正をつけて、さもここに大衆がいるように見せかけておったのじゃ。あと、結界を破らぬ限りその靄は際限なく湧き続けるぞい?」
先ほどから魔騎兵達が突風を引き起こし靄を払おうとしているが、払っても払っても際限なく湧き続ける黒い靄。次第にそれが広範囲に広がり、兵士たちに困惑や恐怖が拡散していった。
「じゃあ、簡単な話だ。結界を破る為に、さっさとあなたを倒せばいいんでしょ?俺らも最初から、あなたしか狙っていなかったしね。他の有象無象の魔族は後からいくらでも手に入る」
「ふん、ようやく仮面を剥がしたのぉ。さて、魔王軍にカストディオ有りと言わせしめたこの力、存分に見ていくと良い」
カストディオを取り囲む五百の魔騎兵。
五百対一。しかし、老将は笑う。先日、勇者に戦いを挑んだ時とは違い、その瞳に諦めの意思は微塵も浮かんではいなかった。
☆
「おい!一体どうなっているのだ!?」
「警備隊の報告によると、町中のあちこちで建物が派手に爆破され、民はパニックを起こしているようです!そのパニックに巻き込まれ、空中を警備している少数の魔騎兵以外の騎士団はもはやその混乱に巻き込まれ機能しておりません!少数でもよろしいので、極騎兵を鎮静化のため割いていただきたいとっ」
「何故だ、魔族の者たちはルイーヌの軍と交戦中のはずだろうに、何故広範囲で同時に混乱が起きる………ちっ、極騎兵を割くことは出来ぬ、それこそ敵の思うつぼだ」
「しかしこのままでは、城に民が押し寄せてくる可能性が」
ヴィルヘルとシルビアが処刑台に上った直後に鳴り響いた轟音、それに合わせて地響きが起き、速報が続々と軍師のもとに飛び込んでくる。
しかし、そんな中でもヴィルヘルの頭は冷静であった。一つ一つの報告を整理し、これから起こり得る事態を予測する。
「警備に当たっている魔騎兵に伝えよ、乱暴な手を使っても良いから、この広場近く、加えて城に近づけない様に民の鎮静化を計れ。混乱をここに導いてはならぬ。そして騎士団全員に伝えよ、直ちに教会関係の建物を取り押さえよ。この混乱に一枚噛んでいるだろうからな」
「教会、をですか?しかし、その推測が間違っていれば責任が───」
「───構わないっ、急げ!」
ヴィルヘルの命令が飛ぶ。複数の伝令隊が短く了解の返事を告げ、馬に乗り方々へ駆けて行った。
ルイーヌの探知能力は、人知を超えた練度を誇る。まさにあれこそ天武の才と呼ぶべきなのだろうと、ヴィルヘルは評価していた。本人こそ少し思慮が浅い性格をしているものの、彼を先頭とした軍隊がみすみす魔族たちとすれ違いになるわけがない。だとしたら、考えられる混乱の可能性は、内部からの犯行だ。
「ヴィルヘル殿、教会側の難癖は厄介ですぞ」
「あぁ、ハインリッヒ殿。大丈夫です、十中八九教会側の仕業と考えてよろしいかと。まず、勇者が死んで困る勢力は教会側と、数日前現れた未だ存在の確認が出来ていない魔王らしき魔族一匹のみです。そこから可能性を絞るのは容易い。そもそも、教会の連中は戦時中からコソコソと魔族側と手を組んだりしたりして不穏な動きが多かったですから、抑えていて問題はありますまい」
「貴公らしいですな」
立場上では同位である二人であったが、ハインリッヒは先代王の遺言によりヴィルヘルを支える者として、彼の私有軍に組み込まれることとなった。
政治の中心であるヴィルヘル、軍部の中心であるハインリッヒ。この二人が手を組んだことで、ヴィルヘルは政界の誰よりも優位に政治を動かせることが出来るようになっている。
太陽は真上に上っていた。
かつて人々から、暗闇を照らす月のようだと称えられた勇者シルビア・ランチエリは、目を閉じ、身じろぎひとつせず、正座で己の命が果ててしまう瞬間を待っている。
「時間だ。ハインリッヒ殿、お願いします」
人間が扱うにはあまりにも大きな大剣がハインリッヒの背中からぬらっと引き抜かれる。剣と言うよりも、肉切り包丁と言った方がしっくりくるような形状。それは戦うことより、何よりも相手の命を根こそぎ、乱暴に奪っていくことのみに特化しているようだ。あまりにも狂気的なその剣が一人の少女に向けられる、思わずヴィルヘルも眉をひそめてしまった。
しかし、ハインリッヒは引き抜いたその大剣を振るわず構えたままで、表情を固めたままピクリとも動かない。
不可解に思ったヴィルヘルの首がわずかに傾く。
「どうされました?」
「………ヴィルヘル殿、どうやら少し、遅かったようですな」
一瞬であった。
太陽が何かに重なり、ヴィルヘルの視界が陰る。即座に動き出したハインリッヒにヴィルヘルは抱き寄せられ、その陰りの正体から身を守るように、大剣が二人の体を守る盾となった。固い物と固い物がぶつかるときに起きる甲高い金属音、相当の負荷が掛かっているのか、ハインリッヒの鎧がギチギチと擦れ合う音を鳴らす。
目と鼻の先で見ているから分かる。棍棒の様に野太いハインリッヒの頭や首に、血管がこれでもかと浮かび上がっていた。
「ヌンッ!!」
グンと両足に力を入れて、ハインリッヒは降ってきたものを無理矢理弾き返した。
解放される視界。ヴィルヘルの目に映っていたのは、彼が最も危惧していた不可解な可能性。
「マジですか………片手で止められるとか思って無かった」
「………その姿は、魔王か?」
「え、あ、はい。初めまして」
黒曜石の様に固く尖った体表、サソリの様な尾、何よりもその深く据えた瞳が、かつて全人類を絶望に突き落とした「魔王」そのものである。
指揮官のヴィルヘルよりも一回り若い、青年の「魔王」だ。
「ヴィルヘル殿ここは任せてもらおう。処刑の方は、適当な兵に任せておいて下さい」
「うっわ、何その筋肉。体育会系とか、ホント嫌いなんだけど………」
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