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番外編 皇太子の思惑<2>
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「剣術大会、ですか?」
渡された書類は剣術大会の概要が記されたものだった。
「そうだ。今度王家主催の剣術大会が開かれる。そこに参加するように」
「…大会と名のつくものに出る気はないのですが」
明らかに気乗りのしない様子で答えるルーカスに、ニキアスはさらに言葉を続ける。
「そこで優勝すれば騎士団の悩み事も一気に解決するぞ?」
「何も一気に解決しなくてもいいかと。しっかりと時間をかけて理解させるつもりですし、この方法ではある意味力ずく、ですよね」
「ルーカス公、物事には時間をかけるべき時とそうでない時がある。所詮遠くで喚くことしかできないようなヒヨコどもは力ずくで黙らせればいい」
「………」
なぜルーカスが大会への参加を拒むのか、ニキアスには想像することしかできない。
その出自か、その見た目か、それ以外か。
何らかの理由で目立つこと自体を嫌い、誰かに理解してもらうことを諦め、そして人に対する興味を失った。
結果、けっこうな排他的人間のできあがりだ。
でもそれでは困る。
これから軍部を統率しニキアスの側近として活躍してもらうにはルーカス自身が他者を信用し、また周りもルーカスを信頼する必要がある。
そして力の誇示は安易な方法ではあるが、こと軍部に属する者には効くのだ。
「それでも気乗りしないというなら…そうだな、アリシア夫人を特等席に招待しよう。そちらの状況さえ許せば子どもも一緒でいい。最愛の妻に格好良いところを見てもらいたくないか?」
アリシアの名前にルーカスがわずかに反応する。
「ああ、あと、その大会の優勝商品の一つが意中の相手からの祝福だ」
祝福、と言っているものの、要は好きな相手への告白が許されるというもの。
身分違いの恋人への求婚であっても大会優勝者の願いであれば許可される。
また、本人が望めば騎士爵を叙爵されるので貴族との婚姻も可能になるものだった。
もちろん、相手の女性の同意がない場合はあくまで優勝を祝うだけのものとなり、叙爵は許されても婚姻は許可されないが。
恋愛絡みでなくとも平民で能力のある者が叙爵を目指して大会に出ることもある。
「アリシア夫人と相思相愛であると、誰もその間に割って入ることはできないと周りに知らしめるにはいい機会ではないか?」
アリシアが、結婚する前よりも周りの好意を多く受けるようになったことをルーカスが気にしているのにニキアスは気づいていた。
ニキアスから見てもアリシアは度量が広く人格者であることがわかる。
なにせこのルーカスをまるっと包み込んで癒してしまうのだからその包容力は推して知るべしだろう。
目利きのきく者であればあるほどアリシアの価値はよくわかっているのだ。
「大会で求婚や叙爵を願うものの機会を奪ってしまいますが?」
「まだ始まってもいないのに優勝する自信があるということか」
ルーカスの言葉に、ニキアスは半分呆れたように返す。
たしかに、実力だけを考えればルーカスを上回る者はこの国にはほぼいない。
「まぁいい。本当に実力のある者がいればルーカス公を破るだろうしな。今の騎士団には見当たらないが、もしそんな人材がどこかに埋もれているのなら是非とも騎士団に勧誘したいところだ」
そこまで言うと、ニキアスはルーカスの持つ書類の署名欄を指差した。
「で、参加するということでいいな?」
言い切られ、反論することもできずに結局ルーカスは署名した。
渡された書類は剣術大会の概要が記されたものだった。
「そうだ。今度王家主催の剣術大会が開かれる。そこに参加するように」
「…大会と名のつくものに出る気はないのですが」
明らかに気乗りのしない様子で答えるルーカスに、ニキアスはさらに言葉を続ける。
「そこで優勝すれば騎士団の悩み事も一気に解決するぞ?」
「何も一気に解決しなくてもいいかと。しっかりと時間をかけて理解させるつもりですし、この方法ではある意味力ずく、ですよね」
「ルーカス公、物事には時間をかけるべき時とそうでない時がある。所詮遠くで喚くことしかできないようなヒヨコどもは力ずくで黙らせればいい」
「………」
なぜルーカスが大会への参加を拒むのか、ニキアスには想像することしかできない。
その出自か、その見た目か、それ以外か。
何らかの理由で目立つこと自体を嫌い、誰かに理解してもらうことを諦め、そして人に対する興味を失った。
結果、けっこうな排他的人間のできあがりだ。
でもそれでは困る。
これから軍部を統率しニキアスの側近として活躍してもらうにはルーカス自身が他者を信用し、また周りもルーカスを信頼する必要がある。
そして力の誇示は安易な方法ではあるが、こと軍部に属する者には効くのだ。
「それでも気乗りしないというなら…そうだな、アリシア夫人を特等席に招待しよう。そちらの状況さえ許せば子どもも一緒でいい。最愛の妻に格好良いところを見てもらいたくないか?」
アリシアの名前にルーカスがわずかに反応する。
「ああ、あと、その大会の優勝商品の一つが意中の相手からの祝福だ」
祝福、と言っているものの、要は好きな相手への告白が許されるというもの。
身分違いの恋人への求婚であっても大会優勝者の願いであれば許可される。
また、本人が望めば騎士爵を叙爵されるので貴族との婚姻も可能になるものだった。
もちろん、相手の女性の同意がない場合はあくまで優勝を祝うだけのものとなり、叙爵は許されても婚姻は許可されないが。
恋愛絡みでなくとも平民で能力のある者が叙爵を目指して大会に出ることもある。
「アリシア夫人と相思相愛であると、誰もその間に割って入ることはできないと周りに知らしめるにはいい機会ではないか?」
アリシアが、結婚する前よりも周りの好意を多く受けるようになったことをルーカスが気にしているのにニキアスは気づいていた。
ニキアスから見てもアリシアは度量が広く人格者であることがわかる。
なにせこのルーカスをまるっと包み込んで癒してしまうのだからその包容力は推して知るべしだろう。
目利きのきく者であればあるほどアリシアの価値はよくわかっているのだ。
「大会で求婚や叙爵を願うものの機会を奪ってしまいますが?」
「まだ始まってもいないのに優勝する自信があるということか」
ルーカスの言葉に、ニキアスは半分呆れたように返す。
たしかに、実力だけを考えればルーカスを上回る者はこの国にはほぼいない。
「まぁいい。本当に実力のある者がいればルーカス公を破るだろうしな。今の騎士団には見当たらないが、もしそんな人材がどこかに埋もれているのなら是非とも騎士団に勧誘したいところだ」
そこまで言うと、ニキアスはルーカスの持つ書類の署名欄を指差した。
「で、参加するということでいいな?」
言い切られ、反論することもできずに結局ルーカスは署名した。
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