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王城

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王城には王の使う謁見の間とは別に皇太子用の謁見室がある。
今回は皇太子からの呼び出しということもありそこに通された。

「面を上げよ」

皇太子の声に顔を上げると、威厳をまとったニキアスが入り口の正面、少し段上の椅子に座している。

「イレーネ前公爵夫人、久しいな」
「ニキアス皇太子殿下にご挨拶申し上げます」

優雅なカーテシーをしイレーネはニキアスを見上げた。

「夫人、ニコラオスの子が産まれたと聞いた。祝福を授けよう」
王族から直接寿ぎの言葉を拝せるのは大変名誉あることだった。

「…ありがたき幸せにございます」
しかしイレーネにしてみればなぜこのタイミングで、との思いが拭えない。

「あのニコラオスの子だ。しかも男の子であればさぞ期待できよう」
ルキアスの言葉にイレーネは背筋に冷たいものが走るのを感じた。

子が産まれたのは昨日のことだ。
基本貴族の出生など、王族は出生証明が上がってきて初めて認識する。
ましてや興味がなければそれすら知らないだろう。
4公爵家の子供であれば必ず確認はするが、そうであってもこれほど早くはない。

なのにニキアスはすでに性別まで把握していた。

「さて。夫人もなぜ自分がこの場に呼ばれたのか気なるであろう。何か心当たりはあるか?」
「…いえ」

ニキアスの全てを見透かすような眼がイレーネを見ている。
その一挙手一投足を見逃さないとでもいうように。

「そうか。ではまずはそれを見てくれ」

ニキアスの言葉に、傍らに控えていた文官が数枚の書類を渡してきた。

何が書いてあるのか確認するが怖い。
イレーネとルーカス、二人に同じ書類を渡すと文官は先ほど控えていた位置に戻る。

「イレーネ・ディカイオ前公爵夫人、そこに書いてあることに関して、何か申し開きはあるか?」

ニキアスが、イレーネに問いかけた
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