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悪役令嬢はヒロインと対峙する
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「人のせいにするばかりじゃなくて、あなたは努力をしたの?」
「努力?」
「親が離婚して?母親は自分の人生を優先して?家に居場所がなくて?それであなたは自分で自分の環境をより良くするための努力はしたわけ?」
本当、ライアンとエマは似た者同士だ。
どちらも自分の思い通りにならない境遇を人のせいにするばかりで自分では何もしない。
私にしてみればそんな人間が不幸を語るなんてどの面下げてと言いたいところだ。
「『黄昏の時にあなたを想う』は楽しかった?」
「!!」
「現実逃避するのに乙女ゲームはうってつけよね」
「なっ!」
エマが驚きのあまり目を見開き、何か言おうとするものの何も言えずに口をパクパクしている。
「私の前世もあなたと同じような境遇だったわ。親は離婚して施設育ち。でも、自分でできる努力は最大限してきた。勉強して奨学金を取って自分で生活費を稼ぎながら大学も卒業したし。まぁ、さぁ就職ってところでこちらの世界に飛ばされたんだけどね」
だからこそ、私はエマの甘ったれたところが我慢ならない。
「それなら!やっぱりあんたのせいであたしの世界が壊されたんじゃない!!」
「ここがあなたの世界だと、なぜ言い切れるのよ?」
「だって『黄昏の時にあなたを想う』のヒロインはエマなんだから!」
ここがゲームの世界に酷似していたとして、イコールであるとは限らない。
パラレルワールドのような並行世界かもしれないし、もしかするとゲーム開発者が夢で見た世界かもしれない。
だから、自分がヒロインだから何をしても大丈夫だとその立場に胡坐をかいていたエマは今この状況にあるのだ。
「あなたの言ってることは、エレナは悪役令嬢の役なのだから役通りに動いて断罪されて死ねばいいってことよ」
「それは……」
「ただそういう役を振られていたというだけで、なぜ私があなたのために死ななければならないの?」
エマの中ではいまだにこの現実はゲームの世界のままなのだろう。
「ゲームはあくまでゲームよ。理不尽な行動もゲームを進める上で必要だから許されている」
私はエマの目を見据えて言う。
「普通に考えて、婚約者がいる男性が他の女性と懇意にすればそれは単なる浮気でしかないし、この世界では下位貴族の娘が王太子妃になるなんてあり得ない」
「……」
「仮にあなたがどこかの高位貴族の養女となって立場だけは取り繕ったとして、婚姻後はどうするつもり?基本的なマナーすらなってないのに、王太子妃としてやっていけると思う?」
「あんたにもできるんでしょ?ならあたしだって勉強すれば何とかなるわよ!」
エマはわかっていない。
私だって元の私のスペックだけでは王太子妃なんてつとまらないことを。
「私の中にはエレナが学んだことがすべて残っているのよ。つまり、学園へ入学する時点で王太子妃教育はすでに終わっているということ。元々高度な教育を受けていた高位貴族のご令嬢が何年も相当な努力をして身につけたものを、あなたがちょっと勉強しただけで身につくのかしら?」
「……っ!」
とうとう反論の言葉を失ったのか、エマが黙る。
「ここは間違いなく現実の世界。怪我をすれば痛いし、死刑に処されれば命を落とす」
私は石畳に座り込んでいるエマの顎に指をかけて持ち上げた。
こちらを見上げるその瞳を上から覗き込んで、最後の言葉を告げる。
「これからあなたを待ち受ける環境がどうであれ、逃げることなんてできないのよ。ゲームと違ってリセットボタンはないのだから」
一旦言葉を切って私はさらに続けた。
「自分がどんな間違いを犯したのか、せいぜい考えながらその罪を償うことね」
そして私はエマの顎から手を離すと鉄格子から離れる。
「さようなら、エマ様。もう二度とお会いすることはないと思いますわ」
そう言って私はエマに背を向けた。
ガシャン!!
「……~~っ!!」
エマの口から言葉が溢れることはなかった。
鉄格子を叩くような音と、声にならないうめき声だけが聞こえる。
憎みたければ憎めばいい。
それが生きる気力に繋がるだろう。
そして、この世界が現実だと受け止めることができれば、地に足をつけて生きていけるはずだ。
たとえそれが北の地の修道院だったとしても、すべては自分の心がけ次第なのだから。
「努力?」
「親が離婚して?母親は自分の人生を優先して?家に居場所がなくて?それであなたは自分で自分の環境をより良くするための努力はしたわけ?」
本当、ライアンとエマは似た者同士だ。
どちらも自分の思い通りにならない境遇を人のせいにするばかりで自分では何もしない。
私にしてみればそんな人間が不幸を語るなんてどの面下げてと言いたいところだ。
「『黄昏の時にあなたを想う』は楽しかった?」
「!!」
「現実逃避するのに乙女ゲームはうってつけよね」
「なっ!」
エマが驚きのあまり目を見開き、何か言おうとするものの何も言えずに口をパクパクしている。
「私の前世もあなたと同じような境遇だったわ。親は離婚して施設育ち。でも、自分でできる努力は最大限してきた。勉強して奨学金を取って自分で生活費を稼ぎながら大学も卒業したし。まぁ、さぁ就職ってところでこちらの世界に飛ばされたんだけどね」
だからこそ、私はエマの甘ったれたところが我慢ならない。
「それなら!やっぱりあんたのせいであたしの世界が壊されたんじゃない!!」
「ここがあなたの世界だと、なぜ言い切れるのよ?」
「だって『黄昏の時にあなたを想う』のヒロインはエマなんだから!」
ここがゲームの世界に酷似していたとして、イコールであるとは限らない。
パラレルワールドのような並行世界かもしれないし、もしかするとゲーム開発者が夢で見た世界かもしれない。
だから、自分がヒロインだから何をしても大丈夫だとその立場に胡坐をかいていたエマは今この状況にあるのだ。
「あなたの言ってることは、エレナは悪役令嬢の役なのだから役通りに動いて断罪されて死ねばいいってことよ」
「それは……」
「ただそういう役を振られていたというだけで、なぜ私があなたのために死ななければならないの?」
エマの中ではいまだにこの現実はゲームの世界のままなのだろう。
「ゲームはあくまでゲームよ。理不尽な行動もゲームを進める上で必要だから許されている」
私はエマの目を見据えて言う。
「普通に考えて、婚約者がいる男性が他の女性と懇意にすればそれは単なる浮気でしかないし、この世界では下位貴族の娘が王太子妃になるなんてあり得ない」
「……」
「仮にあなたがどこかの高位貴族の養女となって立場だけは取り繕ったとして、婚姻後はどうするつもり?基本的なマナーすらなってないのに、王太子妃としてやっていけると思う?」
「あんたにもできるんでしょ?ならあたしだって勉強すれば何とかなるわよ!」
エマはわかっていない。
私だって元の私のスペックだけでは王太子妃なんてつとまらないことを。
「私の中にはエレナが学んだことがすべて残っているのよ。つまり、学園へ入学する時点で王太子妃教育はすでに終わっているということ。元々高度な教育を受けていた高位貴族のご令嬢が何年も相当な努力をして身につけたものを、あなたがちょっと勉強しただけで身につくのかしら?」
「……っ!」
とうとう反論の言葉を失ったのか、エマが黙る。
「ここは間違いなく現実の世界。怪我をすれば痛いし、死刑に処されれば命を落とす」
私は石畳に座り込んでいるエマの顎に指をかけて持ち上げた。
こちらを見上げるその瞳を上から覗き込んで、最後の言葉を告げる。
「これからあなたを待ち受ける環境がどうであれ、逃げることなんてできないのよ。ゲームと違ってリセットボタンはないのだから」
一旦言葉を切って私はさらに続けた。
「自分がどんな間違いを犯したのか、せいぜい考えながらその罪を償うことね」
そして私はエマの顎から手を離すと鉄格子から離れる。
「さようなら、エマ様。もう二度とお会いすることはないと思いますわ」
そう言って私はエマに背を向けた。
ガシャン!!
「……~~っ!!」
エマの口から言葉が溢れることはなかった。
鉄格子を叩くような音と、声にならないうめき声だけが聞こえる。
憎みたければ憎めばいい。
それが生きる気力に繋がるだろう。
そして、この世界が現実だと受け止めることができれば、地に足をつけて生きていけるはずだ。
たとえそれが北の地の修道院だったとしても、すべては自分の心がけ次第なのだから。
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