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悪役令嬢は反撃する
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「まずこちらのハンカチですけれど、どこに落ちていたのかお伺いしても?」
「エマ嬢のすぐそば、池のほとりに落ちていました」
私の質問に対して特に隠すことがない男子生徒は素直に答える。
「それはエレナ様のハンカチでしょう?あたしを突き落とした時にエレナ様の制服から落ちたに違いないわ!それにハンカチには『E.W.』って刺繍がしてあるんだから」
男子生徒の言葉にエマが続ける。
私はそのハンカチを、見守っている周りの人たちにも見えるように広げた。
ハンカチの隅には確かに『E.W.』の刺繍が施されている。
「ほら!エレナ様のイニシャルが刺繍されているじゃない!」
「世の中に同じイニシャルの方は他にもいると思いますわよ?」
「私たちの学年にイニシャルが『E.W.』の生徒はエレナ様、あなただけよ!」
エマの声に周囲が少しざわめく。
「本当にエレナ嬢の物か?」
「確かに他に『E.W.』のイニシャルの方はいらっしゃらないわ」
「でも他学年や先生を含めたらどうかしら?」
「お二人が会った後に落ちていたのでしょう?基本的に落とし物はすぐに回収されますし、やはりエレナ様のハンカチなのでは?」
ひそひそと近くの者同士で話す声が聞こえる。
「いやですわ。私だけでなく、エマ様も同じイニシャルでしょう?」
私の返答に、初めてそのことに気づいたとでもいうように見守っている生徒たちがハッとした表情を浮かべた。
「エレナ様、そのハンカチは高位貴族御用達のお店の物ですわ。しがない男爵家のあたしでは入ることも難しい店ですのよ?」
まったくもって『しがない男爵家』なんて思ってもいないくせに。
「たしかに、エマ嬢ではあの店でハンカチを購入するのは無理だな」
「……となりますと、やはりエレナ様が?」
本当、人って自分の信じたい話を信じるよね。
私は軽く周囲を見回してからエマに視線を定めた。
「エマ様、高位貴族を相手にしているお店は自身の店の品物を悪用されることを恐れているとご存知かしら?」
私が突然別の話題を始めたとでも思ったのか、エマが一瞬ポカンとする。
そして次の瞬間意味を理解したのかその顔が赤くなった。
「悪用ですって!?」
いや、まさしく悪用よね。
証拠の捏造じゃないの。
ゲームではエレナがここでエマにハンカチを突きつけられ追い詰められていく。
エレナとエマはイニシャルが同じ。
おそらくこのハンカチを用意したのはライアンだろう。
いくら策を弄しようとも、エマがあの店でイニシャル入りのハンカチを購入することは不可能だから。
その場合ライアンは私への贈り物とでも言って店には依頼し、エマには彼女のイニシャル入りのハンカチとしてプレゼントしたに違いない。
でも。
このハンカチが私の物ではないというのはそれ以外のところで証明できるのだ。
「このハンカチは私のものではありません」
周りの人たちにもしっかりと聞こえるように、私ははっきりと言った。
「見苦しいなエレナ嬢。どう見てもこれは物的証拠だろう?」
エマの肩を抱いてライアンがかばう。
本当にこの王子はダメ王子だわ。
高位貴族を相手にする店というのは各家に対する管理がきちんとできてこそ。
今までライアンが一度も私にプレゼントをしたことがないのなんて把握しているだろうし、そんな状況下での依頼なら怪しんで当然。
ならば一つ目の証明すべき点はここにある。
「これは公爵家での決まり事ですのであまり公にしたくはないのですが……」
そう。
悪用されないようにするための対策を公の場でバラしてしまえばその策はもう使えなくなる。
それでも、ここはいったん私の疑いを晴らす必要があるだろう。
「我がウェルズ家で使用するハンカチには家紋をエジングの部分に入れておりますの」
「……え?」
「ご覧になっていただいた方が早いですわね」
そう言って私は自分が持っているハンカチをドレスの下の腰巻きポケットから取り出した。
白いシルクのハンカチは縁にレースが編まれている。
イニシャルは刺繍で、家紋はそれとはわからないようなデザインに紛れ込ませて縁のエジング部分に描いているのだ。
刺繍で家紋を入れるのはわりと一般的でもあるので、それでは本物か偽物かの判断が難しい。
それもあって公爵家ではいつからか家紋をレース編みで入れるようになった。
今回ライアンからイニシャル入りのハンカチを依頼された店は、その家紋を入れることをしていない。
さすが高位貴族御用達のお店。
そこら辺の抜かりはないのよね。
「こちらがエマ様が証拠とおっしゃっているハンカチ、そしてこちらが私が今出したハンカチですわ」
そう言って右手にエマのハンカチを、左手に自分のハンカチを持って広げてみせた。
よく見なければわからないが、たしかに左手に持ったハンカチのエジング部分には公爵家の家紋が見てとれる。
対して右手のハンカチは普通のレース編みだけが施されていた。
「エマ様のおっしゃっていたハンカチが私の物ではないことをおわかりいただけたかしら?」
小首をかしげて問いかけてみればライアンもエマも口を噤んでしまい心なしか顔色が悪い。
「それと、私が身の潔白を証明する方法がもう一つありますわ」
にこりと微笑みかけて私はさらに言葉を続けた。
そう、今までのことは前座に過ぎない。
本当に追い詰めるのはこれからよ。
そして私は、記録のアーティファクトを取り出した。
「エマ嬢のすぐそば、池のほとりに落ちていました」
私の質問に対して特に隠すことがない男子生徒は素直に答える。
「それはエレナ様のハンカチでしょう?あたしを突き落とした時にエレナ様の制服から落ちたに違いないわ!それにハンカチには『E.W.』って刺繍がしてあるんだから」
男子生徒の言葉にエマが続ける。
私はそのハンカチを、見守っている周りの人たちにも見えるように広げた。
ハンカチの隅には確かに『E.W.』の刺繍が施されている。
「ほら!エレナ様のイニシャルが刺繍されているじゃない!」
「世の中に同じイニシャルの方は他にもいると思いますわよ?」
「私たちの学年にイニシャルが『E.W.』の生徒はエレナ様、あなただけよ!」
エマの声に周囲が少しざわめく。
「本当にエレナ嬢の物か?」
「確かに他に『E.W.』のイニシャルの方はいらっしゃらないわ」
「でも他学年や先生を含めたらどうかしら?」
「お二人が会った後に落ちていたのでしょう?基本的に落とし物はすぐに回収されますし、やはりエレナ様のハンカチなのでは?」
ひそひそと近くの者同士で話す声が聞こえる。
「いやですわ。私だけでなく、エマ様も同じイニシャルでしょう?」
私の返答に、初めてそのことに気づいたとでもいうように見守っている生徒たちがハッとした表情を浮かべた。
「エレナ様、そのハンカチは高位貴族御用達のお店の物ですわ。しがない男爵家のあたしでは入ることも難しい店ですのよ?」
まったくもって『しがない男爵家』なんて思ってもいないくせに。
「たしかに、エマ嬢ではあの店でハンカチを購入するのは無理だな」
「……となりますと、やはりエレナ様が?」
本当、人って自分の信じたい話を信じるよね。
私は軽く周囲を見回してからエマに視線を定めた。
「エマ様、高位貴族を相手にしているお店は自身の店の品物を悪用されることを恐れているとご存知かしら?」
私が突然別の話題を始めたとでも思ったのか、エマが一瞬ポカンとする。
そして次の瞬間意味を理解したのかその顔が赤くなった。
「悪用ですって!?」
いや、まさしく悪用よね。
証拠の捏造じゃないの。
ゲームではエレナがここでエマにハンカチを突きつけられ追い詰められていく。
エレナとエマはイニシャルが同じ。
おそらくこのハンカチを用意したのはライアンだろう。
いくら策を弄しようとも、エマがあの店でイニシャル入りのハンカチを購入することは不可能だから。
その場合ライアンは私への贈り物とでも言って店には依頼し、エマには彼女のイニシャル入りのハンカチとしてプレゼントしたに違いない。
でも。
このハンカチが私の物ではないというのはそれ以外のところで証明できるのだ。
「このハンカチは私のものではありません」
周りの人たちにもしっかりと聞こえるように、私ははっきりと言った。
「見苦しいなエレナ嬢。どう見てもこれは物的証拠だろう?」
エマの肩を抱いてライアンがかばう。
本当にこの王子はダメ王子だわ。
高位貴族を相手にする店というのは各家に対する管理がきちんとできてこそ。
今までライアンが一度も私にプレゼントをしたことがないのなんて把握しているだろうし、そんな状況下での依頼なら怪しんで当然。
ならば一つ目の証明すべき点はここにある。
「これは公爵家での決まり事ですのであまり公にしたくはないのですが……」
そう。
悪用されないようにするための対策を公の場でバラしてしまえばその策はもう使えなくなる。
それでも、ここはいったん私の疑いを晴らす必要があるだろう。
「我がウェルズ家で使用するハンカチには家紋をエジングの部分に入れておりますの」
「……え?」
「ご覧になっていただいた方が早いですわね」
そう言って私は自分が持っているハンカチをドレスの下の腰巻きポケットから取り出した。
白いシルクのハンカチは縁にレースが編まれている。
イニシャルは刺繍で、家紋はそれとはわからないようなデザインに紛れ込ませて縁のエジング部分に描いているのだ。
刺繍で家紋を入れるのはわりと一般的でもあるので、それでは本物か偽物かの判断が難しい。
それもあって公爵家ではいつからか家紋をレース編みで入れるようになった。
今回ライアンからイニシャル入りのハンカチを依頼された店は、その家紋を入れることをしていない。
さすが高位貴族御用達のお店。
そこら辺の抜かりはないのよね。
「こちらがエマ様が証拠とおっしゃっているハンカチ、そしてこちらが私が今出したハンカチですわ」
そう言って右手にエマのハンカチを、左手に自分のハンカチを持って広げてみせた。
よく見なければわからないが、たしかに左手に持ったハンカチのエジング部分には公爵家の家紋が見てとれる。
対して右手のハンカチは普通のレース編みだけが施されていた。
「エマ様のおっしゃっていたハンカチが私の物ではないことをおわかりいただけたかしら?」
小首をかしげて問いかけてみればライアンもエマも口を噤んでしまい心なしか顔色が悪い。
「それと、私が身の潔白を証明する方法がもう一つありますわ」
にこりと微笑みかけて私はさらに言葉を続けた。
そう、今までのことは前座に過ぎない。
本当に追い詰めるのはこれからよ。
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