【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)

神宮寺 あおい@受賞&書籍化

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ヒロインの確信 Sideエマ

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とうとうこの時がきたんだ。

ゲームの世界に転生したと気づいて一年以上。
やっと待ち望んでいた時がやってくる。

修了式を一週間後に控えて、いよいよエレナを断罪できると思うとワクワクしていた。
思えばゲームの通りにいかないこともたくさんあって、『いったいどうなってるの?』と思ったことも一度や二度ではない。

それでも。
要所要所においてはゲームの通りだったし、結局ライアンがあたしを選んだということは強制力がちゃんと働いていた証拠だろう。

あたしは部屋の壁際に置かれたトルソーを見た。
そこにはライアンから贈られたドレスがかけられている。

ドレスの色はライアンの髪色に合わせて少し濃いめのプラチナブロンド。
瞳の色のロイヤルブルーでも良かったけれど、よりゴージャスな感じを出すならプラチナ系の方がいいよね。
レースも宝石もふんだんに使っているからかなり豪華な感じに仕上がっている。

そしてトルソーの側に置かれたジュエリーボックスにはネックレスとイヤリングが入っていた。
色はもちろんロイヤルブルーだ。

全身ライアンの色をまとったあたしを見たらエレナはどう思うかな?

そう考えるだけで気分が上がる。

そうよ。
エレナなんて婚約者のくせにドレスの一つも贈ってもらえないのよ。
女として価値がないってことだよね。

そう思いながら、ドレスショップで遭遇した時のことを思い出す。
あの時は本当に腹が立ったけど。

『アンジュ』のドレスを贈りたい。
ライアンにそう言ってもらった時はすごく嬉しかった。
アンジュは老舗のドレスショップで顧客には高位貴族しかいない。
貴族といえども男爵家では店に入れてもらえるかどうかすら怪しいだろう。

そもそも店側が客を選ぶくらいだから誰でも着られるわけじゃないし、学園内でも憧れのブラントといえた。

そのアンジュのドレスだ。
当然オーダーメイド。
ウキウキしながら店に連れていってもらえば、店内はうっとりするくらい綺麗で豪華だったし、そんな店にエスコートされるのは夢見心地だった。

エレナに会うまでは。

だいたい、王太子が来店したなら個室に通すのが当たり前でしょう?
それなのに先に予約している客がいるからって断るなんて信じられない。
たかがドレスショップのくせに何様のつもり。

そして先客だというエレナが嫌味ばっかり言うもんだからライアンの機嫌が悪くなって最悪。
せっかくアンジュに行ったのにあの時は散々だったわ。

しかもあたしのことを『はしたない女』呼ばわりしたのよ!
思い返すだけでも腹立つ。

まぁ、後日改めてアンジュには行ったし、思う存分ショッピングしてライアンにドレスやアクセサリーをたくさん買ってもらったから店側は許してあげてもいいけど。
もちろん、あたしを蔑んだようなことを言ったエレナは許さない。

本当なら今すぐにでもどうにかして痛い目に合わせてやりたい気分だけど。

ダメダメ。
今は我慢よ。

だって断罪は最高の舞台でやらなくちゃ。

あたしは想像する。

修了式後の舞踏会でライアンにエスコートされるあたし。
それを見てショックを受けるエレナ。
ライアン色に煌びやかに着飾ったあたしを見てエレナが悔しそうな表情をする。

多くの人の前で、ライアンはエレナの罪を暴く。
可憐なあたしは寛大にもエレナの罪を赦すように願い出る。
あたしの優しさに感激するライアン。
そんなあたしの気持ちを踏み躙ってさらにライアンの怒りを買うエレナ。

そして最後には衆人環視の中で罪を突きつけられて拘束され、エレナは惨めに衛兵に引っ立てられて退場する。

完璧じゃない?

想像しただけで笑いがこみ上げてくる。

しかも、今回の舞踏会は入場のためのエスコートが必須だ。
芸術祭の時の舞踏会は会自体に慣れるための練習の側面が強かったけれど、年度末の舞踏会ではより実践に即した練習の意味合いが強い。

ライアンにエスコートしてもらえないエレナはどうするのかしら?

他のクラスメイトや友人に頼むのは無理だろう。
さすがにライアンの婚約者と知っててエレナのパートナーを務められる人なんていないだろうし。

外部の者をパートナーにしてはいけないというのは芸術祭の時と変わらないのだから。

もし一人で入場することになったら見ものよね。
あたしはそれを想像しただけで楽しくなる。

あー、早く修了式の日がこないかな。

そう思いながら、あたしは浮き立つ気持ちのまま眠りについた。
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