157 / 204
ヒロインの確信 Sideエマ
しおりを挟む
とうとうこの時がきたんだ。
ゲームの世界に転生したと気づいて一年以上。
やっと待ち望んでいた時がやってくる。
修了式を一週間後に控えて、いよいよエレナを断罪できると思うとワクワクしていた。
思えばゲームの通りにいかないこともたくさんあって、『いったいどうなってるの?』と思ったことも一度や二度ではない。
それでも。
要所要所においてはゲームの通りだったし、結局ライアンがあたしを選んだということは強制力がちゃんと働いていた証拠だろう。
あたしは部屋の壁際に置かれたトルソーを見た。
そこにはライアンから贈られたドレスがかけられている。
ドレスの色はライアンの髪色に合わせて少し濃いめのプラチナブロンド。
瞳の色のロイヤルブルーでも良かったけれど、よりゴージャスな感じを出すならプラチナ系の方がいいよね。
レースも宝石もふんだんに使っているからかなり豪華な感じに仕上がっている。
そしてトルソーの側に置かれたジュエリーボックスにはネックレスとイヤリングが入っていた。
色はもちろんロイヤルブルーだ。
全身ライアンの色をまとったあたしを見たらエレナはどう思うかな?
そう考えるだけで気分が上がる。
そうよ。
エレナなんて婚約者のくせにドレスの一つも贈ってもらえないのよ。
女として価値がないってことだよね。
そう思いながら、ドレスショップで遭遇した時のことを思い出す。
あの時は本当に腹が立ったけど。
『アンジュ』のドレスを贈りたい。
ライアンにそう言ってもらった時はすごく嬉しかった。
アンジュは老舗のドレスショップで顧客には高位貴族しかいない。
貴族といえども男爵家では店に入れてもらえるかどうかすら怪しいだろう。
そもそも店側が客を選ぶくらいだから誰でも着られるわけじゃないし、学園内でも憧れのブラントといえた。
そのアンジュのドレスだ。
当然オーダーメイド。
ウキウキしながら店に連れていってもらえば、店内はうっとりするくらい綺麗で豪華だったし、そんな店にエスコートされるのは夢見心地だった。
エレナに会うまでは。
だいたい、王太子が来店したなら個室に通すのが当たり前でしょう?
それなのに先に予約している客がいるからって断るなんて信じられない。
たかがドレスショップのくせに何様のつもり。
そして先客だというエレナが嫌味ばっかり言うもんだからライアンの機嫌が悪くなって最悪。
せっかくアンジュに行ったのにあの時は散々だったわ。
しかもあたしのことを『はしたない女』呼ばわりしたのよ!
思い返すだけでも腹立つ。
まぁ、後日改めてアンジュには行ったし、思う存分ショッピングしてライアンにドレスやアクセサリーをたくさん買ってもらったから店側は許してあげてもいいけど。
もちろん、あたしを蔑んだようなことを言ったエレナは許さない。
本当なら今すぐにでもどうにかして痛い目に合わせてやりたい気分だけど。
ダメダメ。
今は我慢よ。
だって断罪は最高の舞台でやらなくちゃ。
あたしは想像する。
修了式後の舞踏会でライアンにエスコートされるあたし。
それを見てショックを受けるエレナ。
ライアン色に煌びやかに着飾ったあたしを見てエレナが悔しそうな表情をする。
多くの人の前で、ライアンはエレナの罪を暴く。
可憐なあたしは寛大にもエレナの罪を赦すように願い出る。
あたしの優しさに感激するライアン。
そんなあたしの気持ちを踏み躙ってさらにライアンの怒りを買うエレナ。
そして最後には衆人環視の中で罪を突きつけられて拘束され、エレナは惨めに衛兵に引っ立てられて退場する。
完璧じゃない?
想像しただけで笑いがこみ上げてくる。
しかも、今回の舞踏会は入場のためのエスコートが必須だ。
芸術祭の時の舞踏会は会自体に慣れるための練習の側面が強かったけれど、年度末の舞踏会ではより実践に即した練習の意味合いが強い。
ライアンにエスコートしてもらえないエレナはどうするのかしら?
他のクラスメイトや友人に頼むのは無理だろう。
さすがにライアンの婚約者と知っててエレナのパートナーを務められる人なんていないだろうし。
外部の者をパートナーにしてはいけないというのは芸術祭の時と変わらないのだから。
もし一人で入場することになったら見ものよね。
あたしはそれを想像しただけで楽しくなる。
あー、早く修了式の日がこないかな。
そう思いながら、あたしは浮き立つ気持ちのまま眠りについた。
ゲームの世界に転生したと気づいて一年以上。
やっと待ち望んでいた時がやってくる。
修了式を一週間後に控えて、いよいよエレナを断罪できると思うとワクワクしていた。
思えばゲームの通りにいかないこともたくさんあって、『いったいどうなってるの?』と思ったことも一度や二度ではない。
それでも。
要所要所においてはゲームの通りだったし、結局ライアンがあたしを選んだということは強制力がちゃんと働いていた証拠だろう。
あたしは部屋の壁際に置かれたトルソーを見た。
そこにはライアンから贈られたドレスがかけられている。
ドレスの色はライアンの髪色に合わせて少し濃いめのプラチナブロンド。
瞳の色のロイヤルブルーでも良かったけれど、よりゴージャスな感じを出すならプラチナ系の方がいいよね。
レースも宝石もふんだんに使っているからかなり豪華な感じに仕上がっている。
そしてトルソーの側に置かれたジュエリーボックスにはネックレスとイヤリングが入っていた。
色はもちろんロイヤルブルーだ。
全身ライアンの色をまとったあたしを見たらエレナはどう思うかな?
そう考えるだけで気分が上がる。
そうよ。
エレナなんて婚約者のくせにドレスの一つも贈ってもらえないのよ。
女として価値がないってことだよね。
そう思いながら、ドレスショップで遭遇した時のことを思い出す。
あの時は本当に腹が立ったけど。
『アンジュ』のドレスを贈りたい。
ライアンにそう言ってもらった時はすごく嬉しかった。
アンジュは老舗のドレスショップで顧客には高位貴族しかいない。
貴族といえども男爵家では店に入れてもらえるかどうかすら怪しいだろう。
そもそも店側が客を選ぶくらいだから誰でも着られるわけじゃないし、学園内でも憧れのブラントといえた。
そのアンジュのドレスだ。
当然オーダーメイド。
ウキウキしながら店に連れていってもらえば、店内はうっとりするくらい綺麗で豪華だったし、そんな店にエスコートされるのは夢見心地だった。
エレナに会うまでは。
だいたい、王太子が来店したなら個室に通すのが当たり前でしょう?
それなのに先に予約している客がいるからって断るなんて信じられない。
たかがドレスショップのくせに何様のつもり。
そして先客だというエレナが嫌味ばっかり言うもんだからライアンの機嫌が悪くなって最悪。
せっかくアンジュに行ったのにあの時は散々だったわ。
しかもあたしのことを『はしたない女』呼ばわりしたのよ!
思い返すだけでも腹立つ。
まぁ、後日改めてアンジュには行ったし、思う存分ショッピングしてライアンにドレスやアクセサリーをたくさん買ってもらったから店側は許してあげてもいいけど。
もちろん、あたしを蔑んだようなことを言ったエレナは許さない。
本当なら今すぐにでもどうにかして痛い目に合わせてやりたい気分だけど。
ダメダメ。
今は我慢よ。
だって断罪は最高の舞台でやらなくちゃ。
あたしは想像する。
修了式後の舞踏会でライアンにエスコートされるあたし。
それを見てショックを受けるエレナ。
ライアン色に煌びやかに着飾ったあたしを見てエレナが悔しそうな表情をする。
多くの人の前で、ライアンはエレナの罪を暴く。
可憐なあたしは寛大にもエレナの罪を赦すように願い出る。
あたしの優しさに感激するライアン。
そんなあたしの気持ちを踏み躙ってさらにライアンの怒りを買うエレナ。
そして最後には衆人環視の中で罪を突きつけられて拘束され、エレナは惨めに衛兵に引っ立てられて退場する。
完璧じゃない?
想像しただけで笑いがこみ上げてくる。
しかも、今回の舞踏会は入場のためのエスコートが必須だ。
芸術祭の時の舞踏会は会自体に慣れるための練習の側面が強かったけれど、年度末の舞踏会ではより実践に即した練習の意味合いが強い。
ライアンにエスコートしてもらえないエレナはどうするのかしら?
他のクラスメイトや友人に頼むのは無理だろう。
さすがにライアンの婚約者と知っててエレナのパートナーを務められる人なんていないだろうし。
外部の者をパートナーにしてはいけないというのは芸術祭の時と変わらないのだから。
もし一人で入場することになったら見ものよね。
あたしはそれを想像しただけで楽しくなる。
あー、早く修了式の日がこないかな。
そう思いながら、あたしは浮き立つ気持ちのまま眠りについた。
657
お気に入りに追加
2,273
あなたにおすすめの小説

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです
珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。
令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる