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悪役令嬢はたしなめる
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「エレナ嬢、なぜここに?」
「なぜもなにも、ここはドレスショップですわよ。ドレスを作りに来る以外に何かありまして?」
「それは……そうだが」
「まぁ、小物類などを見に来ることはあるかもしれませんけれど」
そこまで言って私はライアンの背後に視線をやる。
エマがライアンの肩越しにこちらをのぞきこんでいた。
「ライアン様こそこちらには何のご用で?」
もちろん答えはわかっていての質問だ。
二人がそろっている以上、ライアンの目的なんてエマのドレス作り以外にない。
おそらく修了式後の舞踏会用のドレスを作りに来たとみて間違いないだろう。
私がショップに来ること自体が珍しいことを考えるとすごいタイミングで鉢合わせたことになる。
もしかするとゲームの強制力が働いているのかも?
そう思わないでもないが、いずれにしても私の意志は変わらない。
当然、個室を譲るつもりはないということだ。
「エレナ嬢と同様、この店に来るのはドレスを作るため以外にないだろう」
おっと。
これは開き直ったということかしら?
「どなたのドレスを作りに来たのかうかがっても?」
「それはその……エマ嬢のだ」
言った。
よりにもよってドレスを贈っていない婚約者に向かって他の女性のためのドレスを作りに来たってよく言えるよね。
呆れて一瞬言葉を失ったわ。
「それはそれは。ところで、私は未だライアン様の婚約者だったかと思うのですが、記憶違いでしたかしら?」
「……いや」
「では、婚約者である私はドレスを贈っていただいていないのですが、こちらも記憶違いで?」
「……いや」
お前は『いや』しか言えんのか!と心の中で盛大に突っ込みつつ、二人の様子を観察する。
ライアンは一応多少の申し訳なさを感じているらしい。
それならするなと言いたいところだが。
そしてエマはと見れば、勝ち誇ったかのような顔をしていた。
「まぁ。エレナ様はまだライアン様にドレスを贈っていただいていないのですか?婚約者であれば一番に相談してお互いの衣装の色を合わせたドレスをオーダーするって聞きますけど。それなのに私が贈ってもらっていいのかしら?」
顔に優越感が滲み出ちゃってるわー。
あなたは婚約者にドレスすら贈ってもらえないみたいだけど、私は他の人の婚約者からもドレスを贈られるのよ、とでもいう感じか。
すごいマウンティング。
「エマ様、そういったことは口に出されない方がいいと思いますわよ」
「あら、なぜかしら?エレナ様にとって都合の悪いことだから?」
「なにがどう都合が悪いのかわかりかねますけれど、婚約者のいる男性から特別な事情もなくドレスを受け取るのははしたない行為ですわ」
はしたない女呼ばわりされてエマの表情が変わる。
「いくらライアン様に顧みられないからって、あたしに嫉妬するなんてみっともないですよ」
「嫉妬?エマ様はおかしなことをおっしゃるのね。ライアン様と私の婚約は王命でしかありませんもの。私はライアン様に対して特別な感情なんて持っていませんわ」
そこまで言ったところでライアンが怒りを堪えるような顔をする。
どんな感情があるのかわからないけど、やっていることは最低なんだからそっちがそんな顔をするのはおかしいよね。
「ただ、たとえ王命の婚約相手だったとしても礼儀に反することをするのは品位を損ねますわ」
正直、お前のやっていることは最低だ、と言いたい。
この世界では政略結婚は普通にある。
たとえそこに恋愛感情が生まれなかったとしても、お互いを尊重することは大切だろう。
ライアンの行動はエレナを傷つけることばかり。
どんな理由があろうとも、婚約者がいるならその相手よりも他の女性を優先するのはダメだ。
言ってみればこれは浮気行為。
なんでこうも堂々と浮気をして悪びれずにいられるのか疑問でしかないわ。
本当、以前のエレナがこんな目に合わなくて良かった。
幸いといっていいかはわからないけど、前世でいろいろ見聞きしている私としては『ライアン最低だな』と思うくらいで済んでいるんだから。
「お前に言われることじゃない」
「そうおっしゃるなら言われないだけの行動をしてくださいませ」
ピシャリとそう言い切ると、ライアンが悔しげに顔を歪めた。
「もういい!気分が悪くなった。エマ嬢、ドレスはまた今度にしよう」
「ええー!」
ライアンは不満をこぼすエマの腕を取り、そのまま踵を返す。
そして来た時と同じように挨拶もなくドアを閉めて去っていった。
「なぜもなにも、ここはドレスショップですわよ。ドレスを作りに来る以外に何かありまして?」
「それは……そうだが」
「まぁ、小物類などを見に来ることはあるかもしれませんけれど」
そこまで言って私はライアンの背後に視線をやる。
エマがライアンの肩越しにこちらをのぞきこんでいた。
「ライアン様こそこちらには何のご用で?」
もちろん答えはわかっていての質問だ。
二人がそろっている以上、ライアンの目的なんてエマのドレス作り以外にない。
おそらく修了式後の舞踏会用のドレスを作りに来たとみて間違いないだろう。
私がショップに来ること自体が珍しいことを考えるとすごいタイミングで鉢合わせたことになる。
もしかするとゲームの強制力が働いているのかも?
そう思わないでもないが、いずれにしても私の意志は変わらない。
当然、個室を譲るつもりはないということだ。
「エレナ嬢と同様、この店に来るのはドレスを作るため以外にないだろう」
おっと。
これは開き直ったということかしら?
「どなたのドレスを作りに来たのかうかがっても?」
「それはその……エマ嬢のだ」
言った。
よりにもよってドレスを贈っていない婚約者に向かって他の女性のためのドレスを作りに来たってよく言えるよね。
呆れて一瞬言葉を失ったわ。
「それはそれは。ところで、私は未だライアン様の婚約者だったかと思うのですが、記憶違いでしたかしら?」
「……いや」
「では、婚約者である私はドレスを贈っていただいていないのですが、こちらも記憶違いで?」
「……いや」
お前は『いや』しか言えんのか!と心の中で盛大に突っ込みつつ、二人の様子を観察する。
ライアンは一応多少の申し訳なさを感じているらしい。
それならするなと言いたいところだが。
そしてエマはと見れば、勝ち誇ったかのような顔をしていた。
「まぁ。エレナ様はまだライアン様にドレスを贈っていただいていないのですか?婚約者であれば一番に相談してお互いの衣装の色を合わせたドレスをオーダーするって聞きますけど。それなのに私が贈ってもらっていいのかしら?」
顔に優越感が滲み出ちゃってるわー。
あなたは婚約者にドレスすら贈ってもらえないみたいだけど、私は他の人の婚約者からもドレスを贈られるのよ、とでもいう感じか。
すごいマウンティング。
「エマ様、そういったことは口に出されない方がいいと思いますわよ」
「あら、なぜかしら?エレナ様にとって都合の悪いことだから?」
「なにがどう都合が悪いのかわかりかねますけれど、婚約者のいる男性から特別な事情もなくドレスを受け取るのははしたない行為ですわ」
はしたない女呼ばわりされてエマの表情が変わる。
「いくらライアン様に顧みられないからって、あたしに嫉妬するなんてみっともないですよ」
「嫉妬?エマ様はおかしなことをおっしゃるのね。ライアン様と私の婚約は王命でしかありませんもの。私はライアン様に対して特別な感情なんて持っていませんわ」
そこまで言ったところでライアンが怒りを堪えるような顔をする。
どんな感情があるのかわからないけど、やっていることは最低なんだからそっちがそんな顔をするのはおかしいよね。
「ただ、たとえ王命の婚約相手だったとしても礼儀に反することをするのは品位を損ねますわ」
正直、お前のやっていることは最低だ、と言いたい。
この世界では政略結婚は普通にある。
たとえそこに恋愛感情が生まれなかったとしても、お互いを尊重することは大切だろう。
ライアンの行動はエレナを傷つけることばかり。
どんな理由があろうとも、婚約者がいるならその相手よりも他の女性を優先するのはダメだ。
言ってみればこれは浮気行為。
なんでこうも堂々と浮気をして悪びれずにいられるのか疑問でしかないわ。
本当、以前のエレナがこんな目に合わなくて良かった。
幸いといっていいかはわからないけど、前世でいろいろ見聞きしている私としては『ライアン最低だな』と思うくらいで済んでいるんだから。
「お前に言われることじゃない」
「そうおっしゃるなら言われないだけの行動をしてくださいませ」
ピシャリとそう言い切ると、ライアンが悔しげに顔を歪めた。
「もういい!気分が悪くなった。エマ嬢、ドレスはまた今度にしよう」
「ええー!」
ライアンは不満をこぼすエマの腕を取り、そのまま踵を返す。
そして来た時と同じように挨拶もなくドアを閉めて去っていった。
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