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悪役令嬢は書類を受け取る
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ダグラスの過去を垣間見たり、重低音のハーモニーを聞いたりしつつ今後の計画は立てられた。
立てられたのだが……。
エレナごめんよー。
私は心の中で謝っていた。
どうしよう……。
どんどんエレナが普通のご令嬢から離れていってしまっている気がする。
真面目に毎日全力で周りから望まれるご令嬢でいられるよう努力し続けたエレナの、その努力を私は無駄にしていないだろうか。
前世の記憶のある私にとっては違和感のないことでも、この世界のご令嬢としては規格外な行動をしている自覚は、ある。
でもねぇ、死にたくはないしね。
いつの間にやら断罪回避のための行動が過去の事件を暴く展開になってしまっているけど、王妃の失脚は断罪回避と無関係ではない。
今のライアンの権力の多くは王妃の力に依存しているものだから。
もちろん、次期王を約束されている王太子の地位というのはある。
でも王太子の立場はすげ替えのきくものだ。
何より、ダグラスのためにも事件は解決したい。
まぁ、私が知らないだけでダグラスルートには実母の事件に関わる展開があるのかもしれないけど。
そんなこんなで、普通のご令嬢としてはあまりしないであろう経験をした翌日、私はいつも通りに学園へ登校していた。
ああ……。
普通の学園生活のなんと平和なことか。
しみじみ感じていたその時、気を抜くのは許さないとばかりに問題がやってきた。
「おはようございます、エレナ様」
声をかけれられて振り向くといつもは明るく快活な雰囲気のジェシカが妙に神妙な顔をして立っている。
「おはようございます、ジェシカ様。何かあったのですか?」
ジェシカはそう聞きたくなるくらいにいつもと様子が違った。
「実は……急ぎとのことでデュランからこちらの書類を預かってきました」
差し出されたのは数枚の書類が入っていると思われる封筒。
ジェシカは仕事柄デュランのところに行くことも多いようだが、今回のように私宛の何かを預かってくるというのは初めてだ。
情報ギルドは仕事内容的に機密の多いものだし、どんな情報も依頼主に直接知らせるというのが基本だろう。
それを今まで違えたことのないデュランがあえてジェシカに託すというのは相当急いで知らせたい情報なのだと思えた。
「内容は聞いていまして?」
「いいえ。ただ、エレナ様の身の安全に関わる内容とだけ」
身の安全……。
穏やかではない響きだ。
「わかりましたわ。本来であれば私がすぐにでも取りに行かなければならないところ、持ってきていただき助かりました」
「いえ。……エレナ様、危ないことは止めてくださいね」
ジェシカが思い詰めたように言ってくる。
「…気をつけますわ」
危ないことはしない、とは言い切れない。
というか、すでに危ない目に遭っている身としては『気をつける』というのが精一杯だ。
ちらりと確認した時計は授業開始までまだ時間があることを示している。
デュランがジェシカに託してまで早く知らせたかった情報。
当然、内容が気になって仕方ない。
「ジェシカ様、授業開始までには戻りますので」
そう一声かけて私は教室を出た。
「エレナ様、何かありましたか?」
教室を出るとすぐにダグラスが声をかけてくる。
「デュランがジェシカ様に託した書類を受け取りましたわ。かなり急ぎのようでしたので、早めに確認しようかと思いますの」
「わかりました。では空き教室に行きましょう。書類の確認中は誰も中に入らないように外で見張っていますので」
学園内はとても広い。
通常使われない教室やクラスが増えた時に備えて空けてある教室などがある。
自分の教室から一番近い空き教室に入ると、私はしっかりと扉を閉めた。
その封筒から何が飛び出すのか、考えるだけでドキドキする。
デュランに依頼した内容はレオの身辺調査。
その結果に私の身の安全に関わる内容が含まれると思うと心がざわついた。
そして覚悟を決めると、私は封を切って書類を取り出したのだった。
立てられたのだが……。
エレナごめんよー。
私は心の中で謝っていた。
どうしよう……。
どんどんエレナが普通のご令嬢から離れていってしまっている気がする。
真面目に毎日全力で周りから望まれるご令嬢でいられるよう努力し続けたエレナの、その努力を私は無駄にしていないだろうか。
前世の記憶のある私にとっては違和感のないことでも、この世界のご令嬢としては規格外な行動をしている自覚は、ある。
でもねぇ、死にたくはないしね。
いつの間にやら断罪回避のための行動が過去の事件を暴く展開になってしまっているけど、王妃の失脚は断罪回避と無関係ではない。
今のライアンの権力の多くは王妃の力に依存しているものだから。
もちろん、次期王を約束されている王太子の地位というのはある。
でも王太子の立場はすげ替えのきくものだ。
何より、ダグラスのためにも事件は解決したい。
まぁ、私が知らないだけでダグラスルートには実母の事件に関わる展開があるのかもしれないけど。
そんなこんなで、普通のご令嬢としてはあまりしないであろう経験をした翌日、私はいつも通りに学園へ登校していた。
ああ……。
普通の学園生活のなんと平和なことか。
しみじみ感じていたその時、気を抜くのは許さないとばかりに問題がやってきた。
「おはようございます、エレナ様」
声をかけれられて振り向くといつもは明るく快活な雰囲気のジェシカが妙に神妙な顔をして立っている。
「おはようございます、ジェシカ様。何かあったのですか?」
ジェシカはそう聞きたくなるくらいにいつもと様子が違った。
「実は……急ぎとのことでデュランからこちらの書類を預かってきました」
差し出されたのは数枚の書類が入っていると思われる封筒。
ジェシカは仕事柄デュランのところに行くことも多いようだが、今回のように私宛の何かを預かってくるというのは初めてだ。
情報ギルドは仕事内容的に機密の多いものだし、どんな情報も依頼主に直接知らせるというのが基本だろう。
それを今まで違えたことのないデュランがあえてジェシカに託すというのは相当急いで知らせたい情報なのだと思えた。
「内容は聞いていまして?」
「いいえ。ただ、エレナ様の身の安全に関わる内容とだけ」
身の安全……。
穏やかではない響きだ。
「わかりましたわ。本来であれば私がすぐにでも取りに行かなければならないところ、持ってきていただき助かりました」
「いえ。……エレナ様、危ないことは止めてくださいね」
ジェシカが思い詰めたように言ってくる。
「…気をつけますわ」
危ないことはしない、とは言い切れない。
というか、すでに危ない目に遭っている身としては『気をつける』というのが精一杯だ。
ちらりと確認した時計は授業開始までまだ時間があることを示している。
デュランがジェシカに託してまで早く知らせたかった情報。
当然、内容が気になって仕方ない。
「ジェシカ様、授業開始までには戻りますので」
そう一声かけて私は教室を出た。
「エレナ様、何かありましたか?」
教室を出るとすぐにダグラスが声をかけてくる。
「デュランがジェシカ様に託した書類を受け取りましたわ。かなり急ぎのようでしたので、早めに確認しようかと思いますの」
「わかりました。では空き教室に行きましょう。書類の確認中は誰も中に入らないように外で見張っていますので」
学園内はとても広い。
通常使われない教室やクラスが増えた時に備えて空けてある教室などがある。
自分の教室から一番近い空き教室に入ると、私はしっかりと扉を閉めた。
その封筒から何が飛び出すのか、考えるだけでドキドキする。
デュランに依頼した内容はレオの身辺調査。
その結果に私の身の安全に関わる内容が含まれると思うと心がざわついた。
そして覚悟を決めると、私は封を切って書類を取り出したのだった。
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