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悪役令嬢は今後の計画を立てる
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私が知っていることのすべてを打ち明けてから今後どうするかを話し合った。
今狙うべきは両親とレンブラント家の繋がり。
少なくともそこには事件の真相に続く手がかりがあるはずだ。
そしてそれに関してはルドが引き受けてくれることになった。
かつては優秀な『影』であり今でも十分戦力になる彼の協力は、八方塞がりな現状ではとてもありがたい。
「ダグラス、お前は私情が勝るだろうからしばらくは手を出すな。自分の中で消化できたら声をかけろ。それまでは今まで通りエレナ嬢の専属護衛として努めるがいい」
ルドの言葉に対してダグラスが内心どう思ったかはわからない。
しかしダグラス自身も自分の状況がわかっているのか、ルドに対して逆らわなかった。
ポーカーフェイスな人の表情は本当に読みにくい。
ダグラスはその気になれば自分の気持ちをすべて隠してしまうことも簡単にできるのだろう。
さっき話していた時には現れていた動揺も、今ではすっかり隠されてしまっている。
それにしてもダグラスにとってルドは父親代わりのようなものなのだろうか?
それとも師匠と弟子みたいな?
その親密さ、ルドのダグラスに対する理解度、そして何より意志の固そうなダグラスがルドの忠告に関しては素直に聞いていることから、彼らの今まで一緒に過ごしてきた時間が透けて見えるような気がした。
「護衛は護衛で重要だろ?警告があったんならエレナ嬢が今後も狙われる可能性はあるもんな」
ロキの言葉にダグラスの眉間に皺が寄る。
「お嬢さまを危険な目に合わせるようなことはしない」
あれ?
また『お嬢さま』呼びに戻っちゃった。
ダグラスの中でどんな線引きがあるのか謎だわー。
「心配なのは専属護衛が俺だけではないことだ」
「エレナ嬢には他にも専属の護衛が?」
ルドの言葉に私はレオのことを思い出す。
「ええ。少し前に父が雇った者がもう一人専属の護衛としてついてくれていますわ」
「その者は信用できるのか?」
レオを信用できるのかどうか。
私は今答える言葉を持たない。
「もう一人の専属護衛はレオと言うのですが、そのレオが専属護衛になった経緯も前の職場についても私には全くわかりません。ただ、私が護衛の増員を望んだから雇われた者ではあります」
「父上から書類を受け取らなかったのか?」
「ええ。レオにも聞きましたが、父から話がないのであれば自分が答える立場ではないと断られてしまって……」
兄が不思議そうに言うということは、やはり通常であれば雇用の経緯は知らされるのだろう。
まぁ、あの父親のことだから私に説明など必要ない、と思っていてもおかしくはないけれど。
その点兄は曲がりなりにも後継者ではあるから、父親もそれなりの扱いをしているのかもしれない。
「そうか。ではそのレオという護衛に関してもこちらで調べるか?」
「いいえ。その必要はありませんわ」
ルドからの申し出をありがたいと思いつつも私は断る。
「しかし素性のはっきりしない者を近くにおいておくのは危険だろう。ましてや護衛ともなればダグラスのいない時の安全はその者にかかっているとも言える」
「今まで通り俺だけが専属護衛でもいいのでは?」
「いいえ。雇ったばかりの護衛を急に解雇するわけにもいきませんし、あまり目立つ行動をするのは得策ではないと思いますわ」
それに、と私は言葉を続ける。
「そろそろレオの調査も終わった頃だと思いますの」
「……ああ、そういえばそんな依頼をしていましたね」
前回デュランのところに行った時はアーティファクトのことが一番の目的だったからか、ダグラスもレオの調査のことは記憶の隅に追いやっていたのだろう。
「ん?どういうことだ?」
「少し前に情報ギルドのギルド長にレオの調査依頼をしていますの」
私の言葉にルドとロキが驚きの表情を浮かべた。
「情報ギルド長って、あまり表に出てこないあの?」
ロキがデュランに対して珍種の動物のような表現をする。
「エレナ嬢、公爵令嬢が情報ギルド長とやり取りをするなんて聞いたことがないんだが。ダグラスが代行で依頼に行ったのか?」
ルドもエレナと情報ギルドが繋がらないのかそう聞いてくる。
まぁ、そうよね。
そもそも普通の貴族のご令嬢なら情報ギルドの存在自体あまり知らないし、何か知りたいことがあれば親に頼むか家の使用人に調べるように言いつけるだけだ。
「いいえ。私が直接依頼に行きましたわ」
「「……は!?」」
ルド、ロキ、低い声でハモるのはやめて欲しいわー。
今狙うべきは両親とレンブラント家の繋がり。
少なくともそこには事件の真相に続く手がかりがあるはずだ。
そしてそれに関してはルドが引き受けてくれることになった。
かつては優秀な『影』であり今でも十分戦力になる彼の協力は、八方塞がりな現状ではとてもありがたい。
「ダグラス、お前は私情が勝るだろうからしばらくは手を出すな。自分の中で消化できたら声をかけろ。それまでは今まで通りエレナ嬢の専属護衛として努めるがいい」
ルドの言葉に対してダグラスが内心どう思ったかはわからない。
しかしダグラス自身も自分の状況がわかっているのか、ルドに対して逆らわなかった。
ポーカーフェイスな人の表情は本当に読みにくい。
ダグラスはその気になれば自分の気持ちをすべて隠してしまうことも簡単にできるのだろう。
さっき話していた時には現れていた動揺も、今ではすっかり隠されてしまっている。
それにしてもダグラスにとってルドは父親代わりのようなものなのだろうか?
それとも師匠と弟子みたいな?
その親密さ、ルドのダグラスに対する理解度、そして何より意志の固そうなダグラスがルドの忠告に関しては素直に聞いていることから、彼らの今まで一緒に過ごしてきた時間が透けて見えるような気がした。
「護衛は護衛で重要だろ?警告があったんならエレナ嬢が今後も狙われる可能性はあるもんな」
ロキの言葉にダグラスの眉間に皺が寄る。
「お嬢さまを危険な目に合わせるようなことはしない」
あれ?
また『お嬢さま』呼びに戻っちゃった。
ダグラスの中でどんな線引きがあるのか謎だわー。
「心配なのは専属護衛が俺だけではないことだ」
「エレナ嬢には他にも専属の護衛が?」
ルドの言葉に私はレオのことを思い出す。
「ええ。少し前に父が雇った者がもう一人専属の護衛としてついてくれていますわ」
「その者は信用できるのか?」
レオを信用できるのかどうか。
私は今答える言葉を持たない。
「もう一人の専属護衛はレオと言うのですが、そのレオが専属護衛になった経緯も前の職場についても私には全くわかりません。ただ、私が護衛の増員を望んだから雇われた者ではあります」
「父上から書類を受け取らなかったのか?」
「ええ。レオにも聞きましたが、父から話がないのであれば自分が答える立場ではないと断られてしまって……」
兄が不思議そうに言うということは、やはり通常であれば雇用の経緯は知らされるのだろう。
まぁ、あの父親のことだから私に説明など必要ない、と思っていてもおかしくはないけれど。
その点兄は曲がりなりにも後継者ではあるから、父親もそれなりの扱いをしているのかもしれない。
「そうか。ではそのレオという護衛に関してもこちらで調べるか?」
「いいえ。その必要はありませんわ」
ルドからの申し出をありがたいと思いつつも私は断る。
「しかし素性のはっきりしない者を近くにおいておくのは危険だろう。ましてや護衛ともなればダグラスのいない時の安全はその者にかかっているとも言える」
「今まで通り俺だけが専属護衛でもいいのでは?」
「いいえ。雇ったばかりの護衛を急に解雇するわけにもいきませんし、あまり目立つ行動をするのは得策ではないと思いますわ」
それに、と私は言葉を続ける。
「そろそろレオの調査も終わった頃だと思いますの」
「……ああ、そういえばそんな依頼をしていましたね」
前回デュランのところに行った時はアーティファクトのことが一番の目的だったからか、ダグラスもレオの調査のことは記憶の隅に追いやっていたのだろう。
「ん?どういうことだ?」
「少し前に情報ギルドのギルド長にレオの調査依頼をしていますの」
私の言葉にルドとロキが驚きの表情を浮かべた。
「情報ギルド長って、あまり表に出てこないあの?」
ロキがデュランに対して珍種の動物のような表現をする。
「エレナ嬢、公爵令嬢が情報ギルド長とやり取りをするなんて聞いたことがないんだが。ダグラスが代行で依頼に行ったのか?」
ルドもエレナと情報ギルドが繋がらないのかそう聞いてくる。
まぁ、そうよね。
そもそも普通の貴族のご令嬢なら情報ギルドの存在自体あまり知らないし、何か知りたいことがあれば親に頼むか家の使用人に調べるように言いつけるだけだ。
「いいえ。私が直接依頼に行きましたわ」
「「……は!?」」
ルド、ロキ、低い声でハモるのはやめて欲しいわー。
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