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悪役令嬢は情報を共有する
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「もちろんだ」
そう答えるとルドは簡潔に説明した。
やはり話に無駄がない。
必要な要点を間違いなく相手に伝えるにはそれなりの能力がいる。
ルドは陛下の影の中でもリーダー的な立場にいた人なのではないか、そんなことを思った。
「なるほど。そんな事情が……」
兄とはまだ両親宛に届いたレンブラント家からの手紙について何も相談していない。
そのことを今ここで共有すべきかどうか、兄はどう思っているのだろう。
「お兄さま。今の状況を考えるに、あの件は私たちだけで調べるよりも協力していただいた方がいいのではないかと思いますの」
「たしかにそうだな。私も今のタイミングでお前に実害が出るとは思わなかった」
私が調べていたことなんて微々たるものに過ぎない。
側妃の事件にまつわる書物を片っ端から探して確認したけれど、すべては公式発表と同様病死で片づけられていた。
次に当時のことを知っていそうな夫人をピックアップして、その娘が開くお茶会に参加しそれとなく夫人とも話してみたけれど、こちらも空振りだった。
もちろん簡単に何かがわかると思っていたわけではない。
そんなに派手に動いていたつもりはないけれど、おそらく側妃の事件に関係のある誰かに目をつけられた。
すでに今の段階で相手に睨まれているのであれば、今後はさらに身辺に気をつける必要がある。
であれば尚のこと私は動かない方がいいのだろう。
自分の身を自分で守ることもできない私はお荷物でしかない。
そんな私が動いてまた狙われるようなことでもあれば邪魔にしかならないからだ。
「あの件、とは?」
う……。
ダグラスの視線が痛いです。
明らかに何かを内緒にしていたであろうことがわかったのか、ダグラスの視線が鋭さを増していく。
そうよね。
ダグラスにしてみれば理由もわからず襲撃されたわけで、その原因に私が絡んでいるとなれば『どういうことだ』という気持ちになるのも仕方ない。
でも……。
あの手紙の話をするということは、ダグラスの母親を殺害したのはレンブラント家、おそらく王妃であると詳らかにするということだ。
疑いを持っているだけなのと、その疑いが確定するのでは気持ちの上では大きく違う。
そしてもう一つ問題があった。
私たちの話には証拠がないということだ。
私は確かに父親の書斎で手紙を見たが、その現物が今手元にあるわけではない。
ダグラスが信じてくれたとしてもルドたちはどうだろうか。
いずれにせよ手の内にあるカードを開示して情報を共有し、その上で協力を求めるしかなかった。
「今からお話しすることはおそらくみなさんが求めていた答え、になると思います」
「答え?」
ルドが怪訝な顔をする。
「ええ。ただ、先に申し上げますがこの場でその話が正しい内容だと証明する証拠がありませんの」
「ほう。確たる証拠もない話を信じろ、というわけか?」
「信じる信じないは各自の考えにお任せしますと申し上げたいところですが、今後のことを相談するにあたって信じていただかなければ困る話ではありますわ」
「それだけ予防線を張る必要のある内容、ということだな」
本当にこの男は、察しが良すぎる。
「そうだと受け取っていただいてかまいません」
そこまで言って一呼吸おくと、私はあの一文をゆっくりと口にした。
そう答えるとルドは簡潔に説明した。
やはり話に無駄がない。
必要な要点を間違いなく相手に伝えるにはそれなりの能力がいる。
ルドは陛下の影の中でもリーダー的な立場にいた人なのではないか、そんなことを思った。
「なるほど。そんな事情が……」
兄とはまだ両親宛に届いたレンブラント家からの手紙について何も相談していない。
そのことを今ここで共有すべきかどうか、兄はどう思っているのだろう。
「お兄さま。今の状況を考えるに、あの件は私たちだけで調べるよりも協力していただいた方がいいのではないかと思いますの」
「たしかにそうだな。私も今のタイミングでお前に実害が出るとは思わなかった」
私が調べていたことなんて微々たるものに過ぎない。
側妃の事件にまつわる書物を片っ端から探して確認したけれど、すべては公式発表と同様病死で片づけられていた。
次に当時のことを知っていそうな夫人をピックアップして、その娘が開くお茶会に参加しそれとなく夫人とも話してみたけれど、こちらも空振りだった。
もちろん簡単に何かがわかると思っていたわけではない。
そんなに派手に動いていたつもりはないけれど、おそらく側妃の事件に関係のある誰かに目をつけられた。
すでに今の段階で相手に睨まれているのであれば、今後はさらに身辺に気をつける必要がある。
であれば尚のこと私は動かない方がいいのだろう。
自分の身を自分で守ることもできない私はお荷物でしかない。
そんな私が動いてまた狙われるようなことでもあれば邪魔にしかならないからだ。
「あの件、とは?」
う……。
ダグラスの視線が痛いです。
明らかに何かを内緒にしていたであろうことがわかったのか、ダグラスの視線が鋭さを増していく。
そうよね。
ダグラスにしてみれば理由もわからず襲撃されたわけで、その原因に私が絡んでいるとなれば『どういうことだ』という気持ちになるのも仕方ない。
でも……。
あの手紙の話をするということは、ダグラスの母親を殺害したのはレンブラント家、おそらく王妃であると詳らかにするということだ。
疑いを持っているだけなのと、その疑いが確定するのでは気持ちの上では大きく違う。
そしてもう一つ問題があった。
私たちの話には証拠がないということだ。
私は確かに父親の書斎で手紙を見たが、その現物が今手元にあるわけではない。
ダグラスが信じてくれたとしてもルドたちはどうだろうか。
いずれにせよ手の内にあるカードを開示して情報を共有し、その上で協力を求めるしかなかった。
「今からお話しすることはおそらくみなさんが求めていた答え、になると思います」
「答え?」
ルドが怪訝な顔をする。
「ええ。ただ、先に申し上げますがこの場でその話が正しい内容だと証明する証拠がありませんの」
「ほう。確たる証拠もない話を信じろ、というわけか?」
「信じる信じないは各自の考えにお任せしますと申し上げたいところですが、今後のことを相談するにあたって信じていただかなければ困る話ではありますわ」
「それだけ予防線を張る必要のある内容、ということだな」
本当にこの男は、察しが良すぎる。
「そうだと受け取っていただいてかまいません」
そこまで言って一呼吸おくと、私はあの一文をゆっくりと口にした。
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