【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)

神宮寺 あおい@受賞&書籍化

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悪役令嬢は異変に気づく

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私の宣言に、ダグラスがつかの間ポカンとする。

あら。
珍しい表情。
それにしても、美形はどんな顔をしていても崩れないから得だよねー。

あ。
人を指差すのはマナー違反だっけ。

一瞬呆気に取られたダグラスは、しかし次の瞬間ブッと吹き出した。

「お嬢さま、人を指差して言うことがそれですか」
「マナーに関しては失礼しましたわ。それでも、あなたの中ではもう答えが出ているようなんですもの。それなのにウダウダと言うものだからつい。ダグラス、何をそんなに悩む必要があって?」

悩みを人に聞いてもらうのは結構大事だと思う。
たいていの人はアドバイスを求めるというよりは、誰かに話すことによって自分の中で考えを整理しているのではないかと思うのだけど。

ダグラスは何だかんだ言っても今の王家の問題を他人事とは思えないだろう。
このまま何もせずにいればいつか後悔するのが目に見えている。

ならば私はその背中を押すだけ。

「やりもしない内から弱音を吐くおつもり?」
高慢に、いかにも上から目線で言ってあげる。

「思い立ったが吉日よ。今こそあなたの中のしがらみを解決すべき時なのだわ」
「すでに過去の事件でもそれを明らかにすることができると?」
「何も動かなければ不可能でしょうね。でも綻びは必ずあるはずですわ」

そう。
両親があんな手紙を受け取ったということは、その綻びに手をかけているのかもしれない。

現状王妃とレンブラント家が一番怪しい。
問題は誰もが納得する証拠が必要だということ。
そして、彼らがどこからどこまで手を下したのかを調べる必要がある。

側妃の毒殺からなのか、それとも王妃が選ばれることになった事件、側妃の父親である侯爵が暴漢に襲われたところからなのか。

「動かなければ不可能……か。お嬢さまはたくましいですね」

えー!
どういう意味?
私はこんなに可憐なのに!

いや、別にナルシストなわけではないわよ。
鏡を見るたびいまだにこの見た目が自分とは思えなくて。
少なくともエレナはたくましさとは無縁でしょー。

自分の中で一定の答えが出たのかダグラスの表情が緩む。
ほのかな笑みが浮かんだ顔は、いつもの感情を読ませない顔を見慣れている身にとっては目の毒だった。

おおう。
ダグラスさんの笑顔が眩しいわ。

車内であれこれ話している間も馬車はウェルズ邸へ向かっている。

あれ?
ふと気づいたのは、何となくの違和感だった。

馬車の窓から見える景色がいつもと違う。

そばにいるダグラスがまとう雰囲気もさっきまでとは打って変わっていた。
私が異変を感じる前から、その違和感に気づいていたみたいだ。

「ダグラス、今日いつもとは違う道を通る予定はあったかしら?」

学園とウェルズ邸を馬車で移動するにあたって、たいていはいつも同じ道を通っていた。
時には寄り道をすることもあるからそんな時はもちろん違う道を通るわけだけど。
今日は特に用事はないから道を変える必要もない。

乗り込む時に見た御者はいつもと同じウェルズ邸の使用人だった。

「いいえ」
短く一言答えたダグラスの視線が鋭くなる。

まとう雰囲気がさらにピリッとしたものになっていく。
窓から見える景色に周囲から聞こえる音。
ダグラスが耳を澄ませながら周りの状況をうかがっていた。

「お嬢さま、何があっても馬車からは出ないように」

現状何かされているわけではない。
ただ、肌に感じる違和感は拭い難いものがあった。

第六感のようなもの?
良くないことが起こる予感がヒシヒシとする。

このままウェルズ邸に帰りつければいいのだけど。

そうは問屋が卸さない、よね。
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