【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)

神宮寺 あおい@受賞&書籍化

文字の大きさ
上 下
106 / 204

悪役令嬢は恋バナに花を咲かせる

しおりを挟む
お茶会です。
念願の女子会です。

スタイン家の侍女の手によってローズティーが入れられ、テーブルの上にはアフタヌーンティーのセットが用意される。

わあい!
一口サイズの可愛らしいケーキだけでなく小さなサンドイッチまで乗ってるよ!
甘い物はもちろん好きだけど、スイーツ以外もあるのは嬉しいよね。

「ところで最近オーウェン様とはいかがですの?」

女子会といえば恋バナでしょう!
私は一人心の中でウキウキしながら、まずはクレアに聞いてみる。
あとでソフィにも確認する気、満々です。
ジェシカは……なぜかしら、相手がいるように思えないのよね。
え?
失礼なこと言ってる?

「仲良くしていますわよ。先日も話題の舞台を観に行ってその後カフェでお茶をしましたわ」

ほわあ。
クレアさんが大変可愛らしいです。
クレアは綺麗系だけど、恋する乙女は誰しも可愛らしい感じになるよね。
頬がほんのりと染まり嬉しそうに微笑む姿は眼福。

「上手くいっているみたいで良かったですわ」
「オーウェン様は一見不器用そうに見えますけど、あれでいてちゃんと花束やプレゼントも贈ってくださるし、エスコートも完璧ですのよ」

ほほう。
オーウェンは脳筋かと思っていたけど、さすが乙女ゲームの攻略対象。
そこら辺は抜かりないのね。

「ソフィ様はベイリー様とどうですの?」

自分のことばかり聞かれるのは恥ずかしいのか、今度はクレアがソフィに話を振る。

私も聞こうと思ってたよ!
クレア、ナイスアシストだわ。

「私ですか?私は先日ベイリー様と図書館に行きましたの。同じ本を読んだりはしませんけど、一緒にいるだけで楽しかったですわ」

図書館デートかぁ。
ソフィとベイリーだと図書館も立派なデート場所よね。
クレアとオーウェンに比べるとソフィとベイリーは落ち着いたカップルだと思う。
いってみれば雰囲気的にはすでに夫婦?

二人の婚約はそれぞれの家の政略的なことも含んだ婚約だと聞いている。
それでも、お互いに相性が良く思い合える相手と婚約できたことは二人にとってすごく幸運なことだよね。

良かったわぁ、と親戚のおばちゃんのような気持ちでしみじみしていると、今度は恋バナがこちらに飛び火してきた。

「私やクレア様のことよりも、エレナ様、その後ライアン殿下とはいかがですの?」

ソフィさん、聞いちゃう?
その話聞いちゃう?
良いことなんて何も出てこないよー。

「ライアン殿下ですか?変わらず月一のお茶会はさせていただいておりますわよ」
「エレナ様、そんなのは最低限レベルですわ」
「そうです。どこかにご一緒されたりしませんの?」

クレアが眉間に皺を寄せて言い、ソフィは心配そうに言う。

二人の気持ちはありがたいんだけどね。
残念ながら何も進展はないのよ。
それどころかエマのせいで後退してるくらいなんだから。

「特にないですわね。殿下もお忙しいのだと思いますわ」

私の言葉に二人は顔を見合わせる。

「でも、エマ様とは一緒に王都の街中に出かけていると聞きましたわ」

あー……。
ライアン、迂闊にもエマを連れているところを誰かに見られたのね。
婚約者のいる身としては脇が甘いわ。
恋愛感情という意味ではどうとも思わないけど、あまりそんな噂が広まりすぎるのはよろしくない。
学園内で収まるレベルを超えればいずれ王の耳にも入るだろう。

っていうか、好きでもない相手ではあるけど、お互いが誠実であることを求められる関係の相手がいるのにこのやり方、腹は立つんだよね。
今までずっと頑張り続けてきたエレナのことを思えば思うほど、その腹立たしさは大きくなる。

なんでちゃんと段階を踏まないかなぁ。
婚約破棄してからつき合えばいいのに。
まぁ、男爵令嬢ではおつき合い自体認められないだろうけど。
それにそれでは乙女ゲームとして成り立たないんだろうね。

「そうなんですね……」
「いえ、直接見た方に聞いたわけではありませんわ」
「そうそう、あくまで噂ですの」

クレアの言葉に何と答えるべきかなぁと思いつつ一言だけ答えると、二人は私が落ち込んでいるとでも思ったのか励ましの言葉をくれる。

「ライアン殿下にエレナ様はもったいないですよね」
そんな私たち三人を観察していたジェシカがボソリとこぼす。

え?
ジェシカ、私のことをそんなに買ってくれてたの?

「本当ですわ!」
「ええ、そうですわ」

クレアとソフィもフンスッとばかりに同意する。

何だか嬉しいなぁ。
自分のために怒ってくれる人がいるというのは、なんとも面映い。

「私とクレア様は幸いにも思い合える相手と婚約できているのでいいのですけれど、そうではないご令嬢も多くいますわよね」

ふと、ソフィがそうこぼした。

「そうね。私のお友達でも望まぬ相手と婚約している子、わりといますわ」

クレアもまた少し悲しげに言う。

そうだよね。
この世界では貴族の令嬢の立場はとても弱い。
親の意向、家の都合、嫁げば嫁いだで婚家の言うことに従わなければいけない。
自分の気持ちと折り合いをつけて我慢を強いられている子はどれほどいることか。

「私たち貴族の娘は婚姻で良き縁を得るために教育を受けさせてもらえているということくらい、わかっていますわ」

ソフィが言うと、クレアが続ける。

「時々自分の思い通りに行動できたらどれほどいいかしら、と思うことがありますの。婚約者と良好な関係を築けている私ですらそう思うのですもの、上手くいっていないとなれば……辛いですわよね」

どこの世界にも、理不尽なことはある。
でもだからといって俯いてばかりはいられないのよ!

「私はライアン殿下と思い合えておりませんけれど、大丈夫ですわよ」

どうでもいい相手のやることは、腹は立つことはあっても傷つかない。
そうやって自分を守っていくのも処世術なのだから。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

〈完結〉【コミカライズ・取り下げ予定】思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約

ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」 「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」 「もう少し、肉感的な方が好きだな」 あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。 でも、だめだったのです。 だって、あなたはお姉様が好きだから。 私は、お姉様にはなれません。 想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。 それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

処理中です...