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悪役令嬢は恋バナに花を咲かせる
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お茶会です。
念願の女子会です。
スタイン家の侍女の手によってローズティーが入れられ、テーブルの上にはアフタヌーンティーのセットが用意される。
わあい!
一口サイズの可愛らしいケーキだけでなく小さなサンドイッチまで乗ってるよ!
甘い物はもちろん好きだけど、スイーツ以外もあるのは嬉しいよね。
「ところで最近オーウェン様とはいかがですの?」
女子会といえば恋バナでしょう!
私は一人心の中でウキウキしながら、まずはクレアに聞いてみる。
あとでソフィにも確認する気、満々です。
ジェシカは……なぜかしら、相手がいるように思えないのよね。
え?
失礼なこと言ってる?
「仲良くしていますわよ。先日も話題の舞台を観に行ってその後カフェでお茶をしましたわ」
ほわあ。
クレアさんが大変可愛らしいです。
クレアは綺麗系だけど、恋する乙女は誰しも可愛らしい感じになるよね。
頬がほんのりと染まり嬉しそうに微笑む姿は眼福。
「上手くいっているみたいで良かったですわ」
「オーウェン様は一見不器用そうに見えますけど、あれでいてちゃんと花束やプレゼントも贈ってくださるし、エスコートも完璧ですのよ」
ほほう。
オーウェンは脳筋かと思っていたけど、さすが乙女ゲームの攻略対象。
そこら辺は抜かりないのね。
「ソフィ様はベイリー様とどうですの?」
自分のことばかり聞かれるのは恥ずかしいのか、今度はクレアがソフィに話を振る。
私も聞こうと思ってたよ!
クレア、ナイスアシストだわ。
「私ですか?私は先日ベイリー様と図書館に行きましたの。同じ本を読んだりはしませんけど、一緒にいるだけで楽しかったですわ」
図書館デートかぁ。
ソフィとベイリーだと図書館も立派なデート場所よね。
クレアとオーウェンに比べるとソフィとベイリーは落ち着いたカップルだと思う。
いってみれば雰囲気的にはすでに夫婦?
二人の婚約はそれぞれの家の政略的なことも含んだ婚約だと聞いている。
それでも、お互いに相性が良く思い合える相手と婚約できたことは二人にとってすごく幸運なことだよね。
良かったわぁ、と親戚のおばちゃんのような気持ちでしみじみしていると、今度は恋バナがこちらに飛び火してきた。
「私やクレア様のことよりも、エレナ様、その後ライアン殿下とはいかがですの?」
ソフィさん、聞いちゃう?
その話聞いちゃう?
良いことなんて何も出てこないよー。
「ライアン殿下ですか?変わらず月一のお茶会はさせていただいておりますわよ」
「エレナ様、そんなのは最低限レベルですわ」
「そうです。どこかにご一緒されたりしませんの?」
クレアが眉間に皺を寄せて言い、ソフィは心配そうに言う。
二人の気持ちはありがたいんだけどね。
残念ながら何も進展はないのよ。
それどころかエマのせいで後退してるくらいなんだから。
「特にないですわね。殿下もお忙しいのだと思いますわ」
私の言葉に二人は顔を見合わせる。
「でも、エマ様とは一緒に王都の街中に出かけていると聞きましたわ」
あー……。
ライアン、迂闊にもエマを連れているところを誰かに見られたのね。
婚約者のいる身としては脇が甘いわ。
恋愛感情という意味ではどうとも思わないけど、あまりそんな噂が広まりすぎるのはよろしくない。
学園内で収まるレベルを超えればいずれ王の耳にも入るだろう。
っていうか、好きでもない相手ではあるけど、お互いが誠実であることを求められる関係の相手がいるのにこのやり方、腹は立つんだよね。
今までずっと頑張り続けてきたエレナのことを思えば思うほど、その腹立たしさは大きくなる。
なんでちゃんと段階を踏まないかなぁ。
婚約破棄してからつき合えばいいのに。
まぁ、男爵令嬢ではおつき合い自体認められないだろうけど。
それにそれでは乙女ゲームとして成り立たないんだろうね。
「そうなんですね……」
「いえ、直接見た方に聞いたわけではありませんわ」
「そうそう、あくまで噂ですの」
クレアの言葉に何と答えるべきかなぁと思いつつ一言だけ答えると、二人は私が落ち込んでいるとでも思ったのか励ましの言葉をくれる。
「ライアン殿下にエレナ様はもったいないですよね」
そんな私たち三人を観察していたジェシカがボソリとこぼす。
え?
ジェシカ、私のことをそんなに買ってくれてたの?
「本当ですわ!」
「ええ、そうですわ」
クレアとソフィもフンスッとばかりに同意する。
何だか嬉しいなぁ。
自分のために怒ってくれる人がいるというのは、なんとも面映い。
「私とクレア様は幸いにも思い合える相手と婚約できているのでいいのですけれど、そうではないご令嬢も多くいますわよね」
ふと、ソフィがそうこぼした。
「そうね。私のお友達でも望まぬ相手と婚約している子、わりといますわ」
クレアもまた少し悲しげに言う。
そうだよね。
この世界では貴族の令嬢の立場はとても弱い。
親の意向、家の都合、嫁げば嫁いだで婚家の言うことに従わなければいけない。
自分の気持ちと折り合いをつけて我慢を強いられている子はどれほどいることか。
「私たち貴族の娘は婚姻で良き縁を得るために教育を受けさせてもらえているということくらい、わかっていますわ」
ソフィが言うと、クレアが続ける。
「時々自分の思い通りに行動できたらどれほどいいかしら、と思うことがありますの。婚約者と良好な関係を築けている私ですらそう思うのですもの、上手くいっていないとなれば……辛いですわよね」
どこの世界にも、理不尽なことはある。
でもだからといって俯いてばかりはいられないのよ!
「私はライアン殿下と思い合えておりませんけれど、大丈夫ですわよ」
どうでもいい相手のやることは、腹は立つことはあっても傷つかない。
そうやって自分を守っていくのも処世術なのだから。
念願の女子会です。
スタイン家の侍女の手によってローズティーが入れられ、テーブルの上にはアフタヌーンティーのセットが用意される。
わあい!
一口サイズの可愛らしいケーキだけでなく小さなサンドイッチまで乗ってるよ!
甘い物はもちろん好きだけど、スイーツ以外もあるのは嬉しいよね。
「ところで最近オーウェン様とはいかがですの?」
女子会といえば恋バナでしょう!
私は一人心の中でウキウキしながら、まずはクレアに聞いてみる。
あとでソフィにも確認する気、満々です。
ジェシカは……なぜかしら、相手がいるように思えないのよね。
え?
失礼なこと言ってる?
「仲良くしていますわよ。先日も話題の舞台を観に行ってその後カフェでお茶をしましたわ」
ほわあ。
クレアさんが大変可愛らしいです。
クレアは綺麗系だけど、恋する乙女は誰しも可愛らしい感じになるよね。
頬がほんのりと染まり嬉しそうに微笑む姿は眼福。
「上手くいっているみたいで良かったですわ」
「オーウェン様は一見不器用そうに見えますけど、あれでいてちゃんと花束やプレゼントも贈ってくださるし、エスコートも完璧ですのよ」
ほほう。
オーウェンは脳筋かと思っていたけど、さすが乙女ゲームの攻略対象。
そこら辺は抜かりないのね。
「ソフィ様はベイリー様とどうですの?」
自分のことばかり聞かれるのは恥ずかしいのか、今度はクレアがソフィに話を振る。
私も聞こうと思ってたよ!
クレア、ナイスアシストだわ。
「私ですか?私は先日ベイリー様と図書館に行きましたの。同じ本を読んだりはしませんけど、一緒にいるだけで楽しかったですわ」
図書館デートかぁ。
ソフィとベイリーだと図書館も立派なデート場所よね。
クレアとオーウェンに比べるとソフィとベイリーは落ち着いたカップルだと思う。
いってみれば雰囲気的にはすでに夫婦?
二人の婚約はそれぞれの家の政略的なことも含んだ婚約だと聞いている。
それでも、お互いに相性が良く思い合える相手と婚約できたことは二人にとってすごく幸運なことだよね。
良かったわぁ、と親戚のおばちゃんのような気持ちでしみじみしていると、今度は恋バナがこちらに飛び火してきた。
「私やクレア様のことよりも、エレナ様、その後ライアン殿下とはいかがですの?」
ソフィさん、聞いちゃう?
その話聞いちゃう?
良いことなんて何も出てこないよー。
「ライアン殿下ですか?変わらず月一のお茶会はさせていただいておりますわよ」
「エレナ様、そんなのは最低限レベルですわ」
「そうです。どこかにご一緒されたりしませんの?」
クレアが眉間に皺を寄せて言い、ソフィは心配そうに言う。
二人の気持ちはありがたいんだけどね。
残念ながら何も進展はないのよ。
それどころかエマのせいで後退してるくらいなんだから。
「特にないですわね。殿下もお忙しいのだと思いますわ」
私の言葉に二人は顔を見合わせる。
「でも、エマ様とは一緒に王都の街中に出かけていると聞きましたわ」
あー……。
ライアン、迂闊にもエマを連れているところを誰かに見られたのね。
婚約者のいる身としては脇が甘いわ。
恋愛感情という意味ではどうとも思わないけど、あまりそんな噂が広まりすぎるのはよろしくない。
学園内で収まるレベルを超えればいずれ王の耳にも入るだろう。
っていうか、好きでもない相手ではあるけど、お互いが誠実であることを求められる関係の相手がいるのにこのやり方、腹は立つんだよね。
今までずっと頑張り続けてきたエレナのことを思えば思うほど、その腹立たしさは大きくなる。
なんでちゃんと段階を踏まないかなぁ。
婚約破棄してからつき合えばいいのに。
まぁ、男爵令嬢ではおつき合い自体認められないだろうけど。
それにそれでは乙女ゲームとして成り立たないんだろうね。
「そうなんですね……」
「いえ、直接見た方に聞いたわけではありませんわ」
「そうそう、あくまで噂ですの」
クレアの言葉に何と答えるべきかなぁと思いつつ一言だけ答えると、二人は私が落ち込んでいるとでも思ったのか励ましの言葉をくれる。
「ライアン殿下にエレナ様はもったいないですよね」
そんな私たち三人を観察していたジェシカがボソリとこぼす。
え?
ジェシカ、私のことをそんなに買ってくれてたの?
「本当ですわ!」
「ええ、そうですわ」
クレアとソフィもフンスッとばかりに同意する。
何だか嬉しいなぁ。
自分のために怒ってくれる人がいるというのは、なんとも面映い。
「私とクレア様は幸いにも思い合える相手と婚約できているのでいいのですけれど、そうではないご令嬢も多くいますわよね」
ふと、ソフィがそうこぼした。
「そうね。私のお友達でも望まぬ相手と婚約している子、わりといますわ」
クレアもまた少し悲しげに言う。
そうだよね。
この世界では貴族の令嬢の立場はとても弱い。
親の意向、家の都合、嫁げば嫁いだで婚家の言うことに従わなければいけない。
自分の気持ちと折り合いをつけて我慢を強いられている子はどれほどいることか。
「私たち貴族の娘は婚姻で良き縁を得るために教育を受けさせてもらえているということくらい、わかっていますわ」
ソフィが言うと、クレアが続ける。
「時々自分の思い通りに行動できたらどれほどいいかしら、と思うことがありますの。婚約者と良好な関係を築けている私ですらそう思うのですもの、上手くいっていないとなれば……辛いですわよね」
どこの世界にも、理不尽なことはある。
でもだからといって俯いてばかりはいられないのよ!
「私はライアン殿下と思い合えておりませんけれど、大丈夫ですわよ」
どうでもいい相手のやることは、腹は立つことはあっても傷つかない。
そうやって自分を守っていくのも処世術なのだから。
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