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悪役令嬢は孤児院を訪問する
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翌日、私は予定通り王都の教会と孤児院を訪問した。
「まぁまぁ。わざわざご訪問いただきありがとうございます」
孤児院の院長は年嵩のご婦人で優しげな笑顔が印象的だ。
「お忙しいところお時間を割いていただき感謝いたしますわ。今日は子どもたちの様子を拝見したいのですけど、よろしいかしら?」
「もちろんです。どうぞご覧になってください」
院長の案内で私は孤児院の中を歩く。
院内は古くはあったが清潔に保たれていて、この孤児院がまともに運営されていることが窺えた。
中には国からの援助費や貴族からの寄付を着服する院長もいると聞いているから、ここはかなりまともな所なのだろう。
「寄付をしてくださる貴族の方々はいらっしゃいますけど、わざわざ訪問してくださる方は少ないのです。子どもたちは朝から楽しみにしていますので、よろしければ顔を見せていただけますでしょうか?」
院長からのお願いを私はもちろん快諾する。
「現在孤児院には何人くらいの子どもたちが生活しているのかしら?」
「今は20人です。もっと多くの子を受け入れたいのですが、なかなか難しくて…」
たしかに、見た限り一部屋に二段ベッドを二台入れて四人部屋とし、その部屋が五部屋ある。
孤児院の規模的にはこれが精一杯なのだろう。
私は案内を受けながら、子どもたちの部屋だけでなく台所や遊び場所なども見ていく。
「お嬢さま、なぜ子ども部屋以外も確認されているのですか?」
「国の監査の時に見る項目は決まっているわ。今回はそこに含まれない場所こそ見たいの」
今日も護衛として一緒についてきているダグラスの疑問に私は答える。
「表から見えにくい場所にこそ、その孤児院の実際の経営姿勢が見えるものよ」
幸いなことに今回訪問した孤児院にはどこにも問題がないように思えた。
院内の清潔さや整理整頓がされているか、子どもたちの遊び場所は安全に保たれているか…。
見るべきところはたくさんある。
あとは、子どもたちに会って栄養状態を確認するくらいかしら?
「お嬢さまは今まで孤児院にそれほど興味を持っていなかったと思うのですが?」
それはそうだろう。
以前のエレナは王太子妃としての教育だけでいっぱいいっぱいになっていたし、他のことにまで気を配るだけの余裕がなかった。
でも、世の中の負の部分は弱い者へと向かうものだから。
この国において一番弱い者は、教育の機会を与えられず、自分で稼ぐことのできない、それこそこの孤児院の子どもたちのような立場の者だろう。
「子どもは国の宝ですわ」
国民の数は国力に結びつくもの。
そして前世の記憶があるからこそ、私はこの不平等な世の中でも子どもたちに希望を失って欲しくないと思う。
「…お嬢さまの考え方は、王太子妃に、そしていずれ王妃となる者として素晴らしいですね」
「…褒めても何も出ないわよ?」
「そんなつもりはありません」
というか、私はライアンと結婚する気なんてまったくないんだけど。
「私はいずれライアン様の婚約者の立場を降りるつもりでいますから、関係ありませんわ」
「本当にそうお考えですか?」
「もちろんです」
「…ライアン様の婚約者でなければ王太子妃になるのは問題ないのですか?」
少しの沈黙の後に続けられた言葉に、私は疑問を持つ。
「ダグラス、ボケてしまうには早くてよ。国王陛下にはライアン様しかお子さまがいらっしゃらないのだから、王太子妃になるということはライアン様と結婚するということでしょう?」
そう。
国王陛下には子どもがライアンしかいない。
国を治める王の後継者が一人しかいないのは珍しいことであるし、これが一番の問題なのだ。
王子が何人かいれば中には優秀な者もいたかもしれないのに。
もしくは国のことを考えられる者であれば王女でも構わない。
グラント国は基本的に国王の跡は王子が継ぐことになっている。
しかし過去には王女が後を継いで王配を取ったこともあった。
まぁ、無能な王子が王になるくらいなら、優秀な王女が継いだ方が国のためよね。
残念ながら当代の王にはそもそも子どもが一人しかいないのだけど。
なんで側室を娶ってもう何人か子どもを持たなかったのかしら?
ライバルが誰もいない状態のせいでライアンがさらに自分の立場に甘えてしまうのに。
…私が考えても仕方ないことだけど。
ま、そんなことよりもまずは子どもたちね。
私は気持ちを切り替えると子どもたちのいる部屋に向かったのだった。
「まぁまぁ。わざわざご訪問いただきありがとうございます」
孤児院の院長は年嵩のご婦人で優しげな笑顔が印象的だ。
「お忙しいところお時間を割いていただき感謝いたしますわ。今日は子どもたちの様子を拝見したいのですけど、よろしいかしら?」
「もちろんです。どうぞご覧になってください」
院長の案内で私は孤児院の中を歩く。
院内は古くはあったが清潔に保たれていて、この孤児院がまともに運営されていることが窺えた。
中には国からの援助費や貴族からの寄付を着服する院長もいると聞いているから、ここはかなりまともな所なのだろう。
「寄付をしてくださる貴族の方々はいらっしゃいますけど、わざわざ訪問してくださる方は少ないのです。子どもたちは朝から楽しみにしていますので、よろしければ顔を見せていただけますでしょうか?」
院長からのお願いを私はもちろん快諾する。
「現在孤児院には何人くらいの子どもたちが生活しているのかしら?」
「今は20人です。もっと多くの子を受け入れたいのですが、なかなか難しくて…」
たしかに、見た限り一部屋に二段ベッドを二台入れて四人部屋とし、その部屋が五部屋ある。
孤児院の規模的にはこれが精一杯なのだろう。
私は案内を受けながら、子どもたちの部屋だけでなく台所や遊び場所なども見ていく。
「お嬢さま、なぜ子ども部屋以外も確認されているのですか?」
「国の監査の時に見る項目は決まっているわ。今回はそこに含まれない場所こそ見たいの」
今日も護衛として一緒についてきているダグラスの疑問に私は答える。
「表から見えにくい場所にこそ、その孤児院の実際の経営姿勢が見えるものよ」
幸いなことに今回訪問した孤児院にはどこにも問題がないように思えた。
院内の清潔さや整理整頓がされているか、子どもたちの遊び場所は安全に保たれているか…。
見るべきところはたくさんある。
あとは、子どもたちに会って栄養状態を確認するくらいかしら?
「お嬢さまは今まで孤児院にそれほど興味を持っていなかったと思うのですが?」
それはそうだろう。
以前のエレナは王太子妃としての教育だけでいっぱいいっぱいになっていたし、他のことにまで気を配るだけの余裕がなかった。
でも、世の中の負の部分は弱い者へと向かうものだから。
この国において一番弱い者は、教育の機会を与えられず、自分で稼ぐことのできない、それこそこの孤児院の子どもたちのような立場の者だろう。
「子どもは国の宝ですわ」
国民の数は国力に結びつくもの。
そして前世の記憶があるからこそ、私はこの不平等な世の中でも子どもたちに希望を失って欲しくないと思う。
「…お嬢さまの考え方は、王太子妃に、そしていずれ王妃となる者として素晴らしいですね」
「…褒めても何も出ないわよ?」
「そんなつもりはありません」
というか、私はライアンと結婚する気なんてまったくないんだけど。
「私はいずれライアン様の婚約者の立場を降りるつもりでいますから、関係ありませんわ」
「本当にそうお考えですか?」
「もちろんです」
「…ライアン様の婚約者でなければ王太子妃になるのは問題ないのですか?」
少しの沈黙の後に続けられた言葉に、私は疑問を持つ。
「ダグラス、ボケてしまうには早くてよ。国王陛下にはライアン様しかお子さまがいらっしゃらないのだから、王太子妃になるということはライアン様と結婚するということでしょう?」
そう。
国王陛下には子どもがライアンしかいない。
国を治める王の後継者が一人しかいないのは珍しいことであるし、これが一番の問題なのだ。
王子が何人かいれば中には優秀な者もいたかもしれないのに。
もしくは国のことを考えられる者であれば王女でも構わない。
グラント国は基本的に国王の跡は王子が継ぐことになっている。
しかし過去には王女が後を継いで王配を取ったこともあった。
まぁ、無能な王子が王になるくらいなら、優秀な王女が継いだ方が国のためよね。
残念ながら当代の王にはそもそも子どもが一人しかいないのだけど。
なんで側室を娶ってもう何人か子どもを持たなかったのかしら?
ライバルが誰もいない状態のせいでライアンがさらに自分の立場に甘えてしまうのに。
…私が考えても仕方ないことだけど。
ま、そんなことよりもまずは子どもたちね。
私は気持ちを切り替えると子どもたちのいる部屋に向かったのだった。
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