【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)

神宮寺 あおい@受賞&書籍化

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悪役令嬢は思い出す

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さて、私のモヤモヤは置いておいて。
考えてもしかたのないことを延々と悩んでいても建設的な解決方法にはいたらないというのが私の持論だ。

きたる芸術祭で繰り広げられるイベントがどんなものだったか。
異世界転生に気づいてすぐから書き込んでいるノートを前に、私は頭を悩ませていた。

まず、ゲーム内でヒロインと攻略対象、今だとおそらくライアン、の間には一日目の発表会と二日目の夜会でそれぞれイベントが起こる。
そのイベントをことごとく邪魔をするのが悪役令嬢であるエレナだ。

一日目はエマが発表会でバイオリン演奏をすることになるのだが、エレナに楽器の弦を切られてしまったため発表することができなくなる。

そして二日目はライアンに贈られたドレスを着て舞踏会に参加したところ、嫉妬したエレナに飲み物をかけられ退場を余儀なくされるという。

エレナ…なかなかお転婆が過ぎるわ…。

しかも一日目の発表会ではクラス代表二名の内一人がエマでもう一人がエレナ。
エマが棄権したことによってエレナが活躍したというおまけ付きだった。

当たり前だが私はエマの楽器の弦を切るなんてことはしない。
それ以前にクラス代表になるかどうかも迷っているところなんだけど…。

代表にならない選択もあるものの、公爵令嬢であるエレナを押し退けてまで参加してくれる人なんてそれこそエマ以外にいないだろう。
つまり、エレナが代表になるのは決定事項だ。

まぁ、あちらがここで仕かけてくるのはわかってるのだから、その点は逆に楽なのかしら?
もちろん、大人しく仕かけられるのを待つつもりはない。

私はノートに思い出せる限りのことを追記していく。

たしか楽器は当日の決められた時間に参加者各自が音楽室に持って行き厳重に保管される。
その後は舞台設置する業者が全楽器を運ぶことになるのだが、運び出される前の音楽室でエレナの姿が目撃されたこと、また、演奏の前にはエマのことを誹謗しさらには同じ曲を選曲するなど、いかにもな行動をしたことによってのちに糾弾される。

…っていうか、公爵令嬢なら自らの手を汚さずに実行役は誰かにやらせればいいのに。

ある意味、ゲーム内のエレナはわかりやすく悪役なのだ。

私もクラス代表になると仮定して、ここでのポイントは疑惑の時間帯にアリバイを作ることかしら。
演奏前の誹謗はしなければいいことだし、なんなら代表になっても当日なんらかの理由で演奏は辞退すればいい。

というか、本音を言うと辞退しないとまずいのである。
なぜなら、私はバイオリンが下手なのだ。

おそらくエレナは幼少期からバイオリンの英才教育を受けていただろうし、実際に賞を取ったという実績もある。

しかし、だ。
もう一度言おう、私はバイオリンが下手である。

ええー。
なんでかしら?
私が転生した時にエレナから演奏能力が落っこちた?

つまり、今までの実績や公爵令嬢である私の立場を考えるとクラス代表に選ばれるのは必須だけど、実際に演奏する羽目になるのは困るということ。

そして、これはもしかするとエマにも当てはまるかもしれない。
今までの行動を見る限り彼女は私と同じ転生者。
前世では発表会で選ばれるほどバイオリンが弾ける人なんて一握りだったと思うし、エマもバイオリンが下手な可能性が高い。

そうなれば、彼女は何が何でも自分が弾かずに済むように画策するだろう。
ゲームの内容通りにするにはクラス代表になる必要があり、演奏をしないためにはエレナに悪事を働いてもらわなければならない。

だからエレナがゲーム通りに動くことはエマにとって必須事項に違いない。

ならばそれを逆手に取るだけ。

私は思いつく限りの対処方法をノートに書き出す。
どうやら潜入してもらっている彼らにさっそく活躍してもらう場がきそうだ。
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