【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)

悪役令嬢は有能な学友を得る

そして二人の女性のうち学友になる彼女はジェシカ・エバンスというらしい。

「エバンス家は代々王家の暗部に所属する者を輩出している家だ。エバンス家の中で王家側が見込んだ者だけがスカウトされるが、それ以外の者たちも諜報や護衛方法を仕込まれているし、今回の潜入にはうってつけなんじゃないか？」

デュランの紹介する声に応じて少女が進み出る。
濃いめの金髪に茶色の瞳というありふれた色味にどちらかといえば可愛らしい容姿。
身分としては子爵令嬢となるらしく、エレナの学友として申し分なかった。

雰囲気を含めてあえて目立たなくしていそうよね。
諜報活動に華やかさはむしろ邪魔だもの。

その点、ノアは明らかに派手なんだけど…派手好み？

「はじめまして。ジェシカ・エバンスです。エレナ様の学友として潜入しますので、よろしくお願いいたします」

ハキハキとした喋りを聞く限り性格もはっきりしてそうだ。

貴族令嬢でありながら暗部的役割をこなせるなんて、これまたかなりすごい人材なんだけど、なんで今回の依頼を受けてくれたのか。

「差し支えなければ教えていただきたいのだけど、なぜ今回の依頼を受けていただけたのかしら？」
「理由は三つありますわ」

可愛らしい声で答えながらも彼女の目がキラリと輝く。

「一つ目は報酬が良かったから。私家が嫌になったらいつでも出ていくつもりなので、貯金が趣味なんです」

貯金が趣味の子爵令嬢ってインパクト強過ぎない？

「二つ目は学園でも素で過ごせそうだから。これでも学園ではちゃんと貴族令嬢として過ごしていますけど、ずっと自分を偽っているのも疲れるんです。その点エレナ様といる分には素でいられると思うので」

うんうんわかるわぁ。
自分を偽るのって疲れるわよね。
私なんて偽るどころか別人だし。

「三つ目は、ライアン殿下が愚かな選択をするかどうかを見極める必要があると思ってるからです。王家の暗部を担う家の者として無関係ではいられないので」

んん？
そうなると、場合によっては私を裏切ることもあり得るのでは？

「あ！どんな結果であろうとも、依頼を受けたからにはエレナ様の決定に従います」

察しがいいのはポイントが高いわ。
とはいえ、契約するからには依頼が完了するまで裏切らないというような条項を入れておく必要があるわね。

「理由はわかりましたわ。これからは学園で友人として過ごしてもらいますわね」
「承知いたしました。エレナ様の友人として振る舞いながら、エマ嬢にはわがまま公爵令嬢に困ってるふりで近づいて情報を得ようかと考えていますが、よろしいでしょうか？」

おお！想像以上の提案がきた。
いやだから、優秀すぎない？
人材が豊富で怖いくらいよ。

「もちろんよろしくてよ。むしろお願いしたいくらいですわ」

デュランさん、素晴らしい手腕です。
こうなると最後の侍女役の彼女がどんな人なのか、俄然気になってきたわ。

私はジェシカの隣にいる女性に視線を合わせた。
ブラウン色の髪の毛と瞳を持つ彼女はいったいどんな人なのだろう。