27 / 204
悪役令嬢は兄に会う
しおりを挟む
そもそも兄妹なのにめったに会えないっておかしくない?
年の差が10歳だから話も合わないかもしれないけど、だからといってこれだけの没交渉ってあるのかしら?
エレナとは全然会っていなくて、同じだけ両親とも会っていないみたいだから兄は家族全員と仲が悪いのかも。
そう思いつつ教職員棟の3階まで上った。
『リアム・ウェルズ』
オルコット学園では教員一人一人に個室が与えられており、入り口のプレートに名前が書かれている。
私は兄の名前を確認するとドアをノックした。
「入れ」
中からの返答に従いドアを開ける。
室内の両側には本棚が設置され、中央に応接セット、窓を背中にした正面に机が配置されていた。
その机の向こうに椅子に腰かけた兄の姿が見える。
「エレナ?」
兄は突然の妹の来訪に驚きで目を見開いている。
アポイントは取っていなかったから当然だろう。
兄妹だからか、エレナとリアムの容姿は似ていた。
ただし鮮やかな金髪は同じでもオーキッド色の瞳は兄の方が色が濃い。
「ごきげんようお兄さま。今度私も学園に入学しますのでご挨拶に伺いましたわ」
私は優雅にカーテシーまでつけて挨拶する。
「…そうか。今度の新入生だったな」
一応兄にもおもてなしの心があるのか、突然とはいえわざわざ訪ねてきた妹を追い返すことはなく応接セットに促された。
「ここでは基本的に自分のことは自分でやるんだ」
そう言って手ずから紅茶も淹れてくれる。
…意外にも紅茶は美味しかった。
うぬぬ…容姿が良く、たしか学校も成績優秀で卒業しているはずだから頭脳明晰で、さっと美味しい紅茶も淹れられるなんて、けっこうな高スペックではないか。
これでなぜ14歳のお子さまと恋に落ちるのかな。
大人の女性にしておきなよー。
兄にも兄なりの理由があったはずだが、残念ながら前世での私は兄にあまり興味がなかったからやり込んでいない分記憶が薄かった。
あとでもう一度攻略ノートを確認しておこう。
あー…思い出してみるとこの教師室でヒロインとつかの間のデートを楽しんでいたかも?
さすがに教師と生徒では人目があるから、そう大っぴらに二人でいることはできなかったはず。
しかも年の差があるからね!
別に年の差カップルに対して否定的ではないが、なぜだろう…自らの兄が自身と同じ年の子とつき合うということに違和感があるのかしら?
…あ!
これってもしかして本来のエレナの感情?
転生した私が意識を奪ってしまった結果、元々のエレナがどうなったのかはずっと気になっている。
記憶は共有しているが考え方は前世の私だし、本当、エレナはどこにいってしまったのだろう。
それとも自然に私の意識と融合したのか。
もしエレナからこの体と記憶を奪ってしまったのだったら、私の本意ではなかったとはいえ申し訳ないと思う。
「…エレナ?」
思考の渦に呑まれていたからだろうか。
訪ねて来たにもかかわらず無言で紅茶を飲み続ける私に対して、いぶかしげに兄が声をかけてきた。
おっと。
兄よ、あなたの存在を忘れていたよ。
いけない。
今日は敵情視察なんだから。
「なんでしょう、お兄さま」
だから私はにっこりと微笑んだ。
笑顔ってすごいよ。
ちょっとしたことなら誤魔化せるんだから。
それともこれって笑って誤魔化す日本人的思考かしら?
年の差が10歳だから話も合わないかもしれないけど、だからといってこれだけの没交渉ってあるのかしら?
エレナとは全然会っていなくて、同じだけ両親とも会っていないみたいだから兄は家族全員と仲が悪いのかも。
そう思いつつ教職員棟の3階まで上った。
『リアム・ウェルズ』
オルコット学園では教員一人一人に個室が与えられており、入り口のプレートに名前が書かれている。
私は兄の名前を確認するとドアをノックした。
「入れ」
中からの返答に従いドアを開ける。
室内の両側には本棚が設置され、中央に応接セット、窓を背中にした正面に机が配置されていた。
その机の向こうに椅子に腰かけた兄の姿が見える。
「エレナ?」
兄は突然の妹の来訪に驚きで目を見開いている。
アポイントは取っていなかったから当然だろう。
兄妹だからか、エレナとリアムの容姿は似ていた。
ただし鮮やかな金髪は同じでもオーキッド色の瞳は兄の方が色が濃い。
「ごきげんようお兄さま。今度私も学園に入学しますのでご挨拶に伺いましたわ」
私は優雅にカーテシーまでつけて挨拶する。
「…そうか。今度の新入生だったな」
一応兄にもおもてなしの心があるのか、突然とはいえわざわざ訪ねてきた妹を追い返すことはなく応接セットに促された。
「ここでは基本的に自分のことは自分でやるんだ」
そう言って手ずから紅茶も淹れてくれる。
…意外にも紅茶は美味しかった。
うぬぬ…容姿が良く、たしか学校も成績優秀で卒業しているはずだから頭脳明晰で、さっと美味しい紅茶も淹れられるなんて、けっこうな高スペックではないか。
これでなぜ14歳のお子さまと恋に落ちるのかな。
大人の女性にしておきなよー。
兄にも兄なりの理由があったはずだが、残念ながら前世での私は兄にあまり興味がなかったからやり込んでいない分記憶が薄かった。
あとでもう一度攻略ノートを確認しておこう。
あー…思い出してみるとこの教師室でヒロインとつかの間のデートを楽しんでいたかも?
さすがに教師と生徒では人目があるから、そう大っぴらに二人でいることはできなかったはず。
しかも年の差があるからね!
別に年の差カップルに対して否定的ではないが、なぜだろう…自らの兄が自身と同じ年の子とつき合うということに違和感があるのかしら?
…あ!
これってもしかして本来のエレナの感情?
転生した私が意識を奪ってしまった結果、元々のエレナがどうなったのかはずっと気になっている。
記憶は共有しているが考え方は前世の私だし、本当、エレナはどこにいってしまったのだろう。
それとも自然に私の意識と融合したのか。
もしエレナからこの体と記憶を奪ってしまったのだったら、私の本意ではなかったとはいえ申し訳ないと思う。
「…エレナ?」
思考の渦に呑まれていたからだろうか。
訪ねて来たにもかかわらず無言で紅茶を飲み続ける私に対して、いぶかしげに兄が声をかけてきた。
おっと。
兄よ、あなたの存在を忘れていたよ。
いけない。
今日は敵情視察なんだから。
「なんでしょう、お兄さま」
だから私はにっこりと微笑んだ。
笑顔ってすごいよ。
ちょっとしたことなら誤魔化せるんだから。
それともこれって笑って誤魔化す日本人的思考かしら?
457
お気に入りに追加
2,273
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです
珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。
令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる