出来損ないのエルフとピストル使い

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プロローグ(ジョゼフ編)

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 俺の名はジョゼフ・ベル。表向きは探そうと思えば簡単に見つけられる何処にでもいるおっさんだ。

 だが、ある依頼が来た時の俺はちょっと怖いおっさんだ。その依頼とは《殺し》の依頼さ。依頼が来た時はすぐ様ターゲットについて調べ武器を持ったら直ぐに現地へ赴く必要がある。

 依頼は個人から、プロとなれば国家レベルの依頼が来る奴だっている。俺は殺しの道を歩み続けて20年だが未だにプロにはなれない。

 成功した時は多額の報酬を貰えるが、失敗したら金どころか命すら危ない時もあった。そりゃあ人間だもの、失敗の一つや二つはあるからな。

 だが俺はあの日、取り返しのつかない事を起こしてしまった……。

時は遡る……。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

 5月10日(異世界転生当日)は息子の誕生日だった。息子の名はジョージ・ベル。

「じゃあパパ、行ってくるよ!」

「おう、ママと美味い料理作って待っているから待っていろよ!」

「うん!」

 俺は妻と一緒に元気いっぱいに幼稚園バスに乗っていく息子の背中を見送った。

「じゃあ、私はリビングの飾り付けをしてくるから、あなたはジョージの誕生日プレゼントを買ってきて欲しいんだけどお願い出来るかしら?」

 彼女の名はソフィア・ベル。俺の妻だ。学生時代に知り合い、大学卒業後に結婚した。

「任せとけ!男の子の好きな物は全部知り尽くしているさ!」

 俺は元気よくマッスルポーズをとった。

「ふふっ、じゃあお願いね。」

 妻は笑いながら俺を見送った。

 俺は住宅街から少し離れた都市部の玩具屋でプレゼントを探す事にした。

「マズいな……、候補が多過ぎて決められないぜ……。」 

 俺は取り敢えず近くの店員を捕まえてオススメを聞く事にした。

「今日息子の誕生日なんだが、何かオススメとかないか?」

「オススメですか!それではこの新作ゲーム機はどうでしょうか?」

 いかにも高そうなゲーム機であったが為に俺はゲーム機の値札を恐る恐る見てみる。

「た、たけぇ……今のゲーム機ってこれが普通なのか⁉︎」

 確かに買えなくもない値段ではあるがいくら息子の誕生日とはいえ、少し躊躇しちまうぜ……。

「ど、どうしようかなぁ~……」

「今買わなきゃ勿体無いですよお客さん!このゲーム機はなんとご家族やお友達とたった一台で沢山遊べるんですよ!しかもしかも!グラフィックと容量は歴代ナンバーワン!さらにさらにーー」

「わ、分かりました……買います……。」

「お買い上げありがとうございました‼︎」

 結局、店員の圧力押されて買ってしまった……。途中で敬語になっちまった。俺はそんなキャラじゃねえよ!

 まあ、ジョージが喜んでくれるならそれでいいか。

 車で自宅に帰る最中に電話が鳴った。かけてきたのは妻では無かった。

 殺しの依頼主だった。

「ハロー?」

「ジョゼフ・ベルだな?」

「ああ、そうだが。」

「始末して欲しい奴がいる。報酬は一万ドルでどうだ?」

 依頼なんて簡単に断る事が出来るはずだった。しかし、俺は断る事が出来ず……

「分かった。場所と名前、特徴は?」

 この選択が後に俺の運命を左右する事になった。

 家に着くと俺は妻に買ってきたゲームを手渡し、依頼が来た事を告げた。

「本当に行かなくちゃいけないの……?今からでも断る事は出来ないの……?」

「もうやるって決めちまったんだ、今更断る事なんて出来る訳ねえよ……!」

 妻は悲しい顔をしながら俺の顔を見てくる。

「必ず帰ってくるさ……。」

 俺はまともに妻の顔を見る事が出来なかった。

「約束よ……。」

「ああ、嘘はつかねえさ……。」

 俺は妻を深く抱きしめた後、自分の部屋に戻り武器と仕事服に着替えて現場へ行った。

 時間はとっくに午後6時を過ぎ辺りは暗くなっていた。

「そろそろだな……。」

 俺は車の中でターゲットが店から出てくるのを待つ。

 すると、いきなり雨が降ってきた。しかも土砂降りだった。

「嘘だろ……今日は一日中晴れだったはずなのによお……。やっぱり天気予報は信じられないぜ。」

 俺は車の中だと水滴で視界が霞んでしまう為、外に出て建物の中からターゲットを観察する事にした。

 すると。

 ーーーガチャンッ!
 と扉が勢いよく開かれ、中から出てきた人物はターゲットだった。

 俺はすかさず銃を取り出しターゲットに向けた。

 ーーーバーン!
 銃声が雨が地面に叩きつけられる音よりも大きい音で暗い街中に響き渡った。

 撃ったのは俺じゃない……。
 俺は恐る恐る自分の身体に目をやった。

 自分の血だった。

 俺はそのまま何があったのか分からないまま地面とキスをした。

「銃を持った不審な男を銃撃しました。犯人は既に亡くなったと見られます。」

「よし、直ちに我々も現場に急行する。」

 聞こえてきたのは無線と話す警官の声だった。しかもまだ若い。恐らく就いてからまだ1年目くらいだろう。

 馬鹿野郎、まだ死んでねーよ……。

 すまん、ジョージ。誕生日会には行けねえ。

 約束破っちまった。許してくれソフィア。

 ソフィアは俺が殺し屋だと知ったあの日、逃げるどころか俺に寄り添ってくれた。世界一の女だぜ……。

 俺はそのまま力尽き、床に広がる自分の血を見つめた。

 俺は自分の血の広がり方に違和感を感じたが、次第に意識が遠のいていった。

 俺は……死んだ。

「何だこれは……。」

 駆けつけた警官がジョゼフの遺体を見て驚いた。

 彼の血の広がり方はまるで魔法陣のような広がり方をしていたのだ。

「彼はとっくに亡くなっていたはずです!魔法陣を書く余裕なんて無かったはずです!」

 若い警官はパニックになった。

 その後、彼の遺体から出た魔法陣はスクープとなり、怪事件として世界に広がった。


 
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