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第42話 任務完了!
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ジャックとピクシーは任務を受けた後、初めて旅立った時に通った道を逆に辿っていた。
距離や時間の感覚というのはどうやら精神に影響を受けるようだ。同じ五日の行程なのに、気分が軽くなった今は以前より短く感じる。
ジャックはこの王都への五日間だけではなく、剣探しに当たった四カ月弱の日々もあっという間だったと感慨にふけっていた。
王宮に着いたジャックは、騎士団長のグスタフに面会を申し込んだ。
ジャックが帰ってきたことで全てを察したグスタフは、満面の笑みでジャックを迎えた。
「良く無事で帰ってきたな。その顔は成果ありという事で良いんだな!?」
グスタフの第一声は前半が建前、後半は本音という構成で発せられた。
「これを」
ジャックは短い一言を添えて、剣を差し出した。
本来は母親の記憶が宿る……そして今ではジオの記憶も宿っている数少ない品なので献上したくはなかったが、こればかりは仕方がないとジャックは諦めていた。
「ほほぅ。これが。してお主はこの剣の力を見たか?」
そもそもこの剣に尋常ならざる力があるかもしれない、と王に進言したのはこのグスタフである。
「無ければ困る」といわんばかりにジャックに問いただした。
「はい。北部の辺境で魔物達と対峙した時、一振りで複数の魔物を薙ぎ払いました。どうやら魔法の力を秘めているようです」
ジャックは信じてもらえないかもしれないと思いつつ、自分が体験したままを伝えた。
「やはりっ!」
グスタフはしたり顔である。
この剣を使って北部に出現した魔物を一掃すれば、褒美が出る……うまくすれば爵位が上がるかもしれない等と皮算用で頭が一杯といった顔である。
当然ジャックもそのおこぼれにあずかれよう。
しかしジャックはそんなものは欲しくなかった。とりあえず今欲しいのは休暇……色々考える時間が欲しかった。
取り敢えずこれで一時は絶望的だった任務は完了となった。
それはこの任務のお目付け役であるピクシーとの別れでもある。
「世話になったな」
これはジャックにとって単なる挨拶ではなく、精一杯の感謝の気持ちだった。
恐らくピクシーがいなかったら任務は完了できなかったはずだ。それに、なんだかんだでピクシーの明るさには助けられたことが多かった。
王宮付きの妖精……恐らくもう会う機会などは無いであろうことをジャックは悟っていた。名残惜しい気持ちもあったが、それを的確に表現する言葉をジャックは持ち合わせていなかった。
「ジャックはこれからどうするの?」
ピクシーはジャックと異なり、いつもとあまり変わらない様子だった。
「取り敢えず休暇を取って、サウスフォーヘンにでも行ってみるよ」
ジャックは無意識に言ってしまったが、その心の底にあるものをピクシーは見逃さない。
「あー? さては愛しのルースちゃんに会いに行くんだ!?」
ピクシーはいつもの調子というより絶好調といった感じでジャックを攻めていく。
「うるせー!」
ジャックは先ほどまでピクシーとの別れに際して感傷的になっていた自分を殴りたくなった。
「あははは、でもジャックとはまたすぐ会うことになると思うよ。じゃあね」
ピクシーは予言めいたことをジャックに告げると、手を振りながら王宮の内部へと戻っていった。
「確かピクシーには予知能力は無かったと思うが……?」
ピクシーの言った意図を計りかねたジャックは小さく首をひねった。
その後、ジャックは休暇を申請した。それはジャックの予想に反して簡単に受理される。
「まぁこれも報酬の内かな?」
ジャックはそう言うと旅支度を整え始めた。
距離や時間の感覚というのはどうやら精神に影響を受けるようだ。同じ五日の行程なのに、気分が軽くなった今は以前より短く感じる。
ジャックはこの王都への五日間だけではなく、剣探しに当たった四カ月弱の日々もあっという間だったと感慨にふけっていた。
王宮に着いたジャックは、騎士団長のグスタフに面会を申し込んだ。
ジャックが帰ってきたことで全てを察したグスタフは、満面の笑みでジャックを迎えた。
「良く無事で帰ってきたな。その顔は成果ありという事で良いんだな!?」
グスタフの第一声は前半が建前、後半は本音という構成で発せられた。
「これを」
ジャックは短い一言を添えて、剣を差し出した。
本来は母親の記憶が宿る……そして今ではジオの記憶も宿っている数少ない品なので献上したくはなかったが、こればかりは仕方がないとジャックは諦めていた。
「ほほぅ。これが。してお主はこの剣の力を見たか?」
そもそもこの剣に尋常ならざる力があるかもしれない、と王に進言したのはこのグスタフである。
「無ければ困る」といわんばかりにジャックに問いただした。
「はい。北部の辺境で魔物達と対峙した時、一振りで複数の魔物を薙ぎ払いました。どうやら魔法の力を秘めているようです」
ジャックは信じてもらえないかもしれないと思いつつ、自分が体験したままを伝えた。
「やはりっ!」
グスタフはしたり顔である。
この剣を使って北部に出現した魔物を一掃すれば、褒美が出る……うまくすれば爵位が上がるかもしれない等と皮算用で頭が一杯といった顔である。
当然ジャックもそのおこぼれにあずかれよう。
しかしジャックはそんなものは欲しくなかった。とりあえず今欲しいのは休暇……色々考える時間が欲しかった。
取り敢えずこれで一時は絶望的だった任務は完了となった。
それはこの任務のお目付け役であるピクシーとの別れでもある。
「世話になったな」
これはジャックにとって単なる挨拶ではなく、精一杯の感謝の気持ちだった。
恐らくピクシーがいなかったら任務は完了できなかったはずだ。それに、なんだかんだでピクシーの明るさには助けられたことが多かった。
王宮付きの妖精……恐らくもう会う機会などは無いであろうことをジャックは悟っていた。名残惜しい気持ちもあったが、それを的確に表現する言葉をジャックは持ち合わせていなかった。
「ジャックはこれからどうするの?」
ピクシーはジャックと異なり、いつもとあまり変わらない様子だった。
「取り敢えず休暇を取って、サウスフォーヘンにでも行ってみるよ」
ジャックは無意識に言ってしまったが、その心の底にあるものをピクシーは見逃さない。
「あー? さては愛しのルースちゃんに会いに行くんだ!?」
ピクシーはいつもの調子というより絶好調といった感じでジャックを攻めていく。
「うるせー!」
ジャックは先ほどまでピクシーとの別れに際して感傷的になっていた自分を殴りたくなった。
「あははは、でもジャックとはまたすぐ会うことになると思うよ。じゃあね」
ピクシーは予言めいたことをジャックに告げると、手を振りながら王宮の内部へと戻っていった。
「確かピクシーには予知能力は無かったと思うが……?」
ピクシーの言った意図を計りかねたジャックは小さく首をひねった。
その後、ジャックは休暇を申請した。それはジャックの予想に反して簡単に受理される。
「まぁこれも報酬の内かな?」
ジャックはそう言うと旅支度を整え始めた。
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