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嫌悪感
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『良いことも悪いこともあなたが望めば実現するんだよね~』
クォ=ヨ=ムイのその言葉に、リセイは、
「な…っ!」
と声を失った。
『ベルフもアムギフも僕が呼んだ……?』
知らされたそれが、彼の胸をぎゅうっと締め付ける。
『僕の所為で隊長さんやレイさん達が危ない目に遭った……?』
自分の<能力>が、自分が<能力>をちゃんと制御できてない所為で皆に迷惑を掛けた。
そういうことなのか……
呆然とするリセイを見て、クォ=ヨ=ムイはニヤニヤと淫猥な笑みを浮かべていた。
それだけで、彼女にとっては彼の痛みや苦しみについてはどうでもいいのだというのが分かる。
「まあとにかく、私はあなたが頑張ってる様子を見守ってるから。
んじゃ、そういうことで~♡」
などと、なにが『そういうこと』なのか分からないまま、彼女は笑顔で手を振りながらすうっと消えていった。
それと同時に、
「……っ!?」
リセイはガバッと体を起こす。
「……夢……?」
周りを見回すと、そこはまだ窓から月明かりが差し込むだけの暗さだったとはいえ、もう見慣れた部屋だった。汗でびっしょりになったリセイがベッドで体を起こしていただけだ。
状況だけ考えれば嫌な夢を見ただけだとも思える。けれど、彼には、さっき見たものがただの夢だとは思えなかった。夢だと考えるにはあまりにも腑に落ちすぎた。
「僕の…所為なのか……?」
リセイは頭を抱えながら呟いた。唇を噛み締めて、体を丸めて。
でも、どうすればいいのか分からなかった。仮にベルフやアムギフが現れたのが自分の所為だったとして、皆に迷惑を掛けないために街を出て行くとしても、行く当てもない。
だけど、このままじゃもっと皆を危険に曝すことになるかもしれない。厳しいところもあるけれど、とてもあたたかくて親切な人達を自分の所為で。
そうは言っても、せっかくこんなに素晴らしいところに来られたのに……
「どうしたらいいんだよ……」
いくら考えたって結論なんか出なかった。そして、ゆっくりと空が白んでいく。
すると、強い空腹感が襲ってくるのが分かった。
「こんな気分でも腹は減るんだな……」
そんな自分にたまらない嫌悪感がある。
とは言え、日が昇ると、
「あ、リセイ、起きてた! おはよう! おなかすいたんじゃない? 昨夜は結局、夕ご飯食べないで寝ちゃってたもんね。ご飯用意できてるよ」
そう。マッサージの途中で眠ってしまってそのまま起きてこなかったリセイのために、ティコナはいつもより早く起きて朝食を用意してくれたのだ。
でも、目の下にクマを浮かばせた彼に気付いて、
「どうしたの? どこか痛いの?」
心配そうに訊いてきたのだった。
クォ=ヨ=ムイのその言葉に、リセイは、
「な…っ!」
と声を失った。
『ベルフもアムギフも僕が呼んだ……?』
知らされたそれが、彼の胸をぎゅうっと締め付ける。
『僕の所為で隊長さんやレイさん達が危ない目に遭った……?』
自分の<能力>が、自分が<能力>をちゃんと制御できてない所為で皆に迷惑を掛けた。
そういうことなのか……
呆然とするリセイを見て、クォ=ヨ=ムイはニヤニヤと淫猥な笑みを浮かべていた。
それだけで、彼女にとっては彼の痛みや苦しみについてはどうでもいいのだというのが分かる。
「まあとにかく、私はあなたが頑張ってる様子を見守ってるから。
んじゃ、そういうことで~♡」
などと、なにが『そういうこと』なのか分からないまま、彼女は笑顔で手を振りながらすうっと消えていった。
それと同時に、
「……っ!?」
リセイはガバッと体を起こす。
「……夢……?」
周りを見回すと、そこはまだ窓から月明かりが差し込むだけの暗さだったとはいえ、もう見慣れた部屋だった。汗でびっしょりになったリセイがベッドで体を起こしていただけだ。
状況だけ考えれば嫌な夢を見ただけだとも思える。けれど、彼には、さっき見たものがただの夢だとは思えなかった。夢だと考えるにはあまりにも腑に落ちすぎた。
「僕の…所為なのか……?」
リセイは頭を抱えながら呟いた。唇を噛み締めて、体を丸めて。
でも、どうすればいいのか分からなかった。仮にベルフやアムギフが現れたのが自分の所為だったとして、皆に迷惑を掛けないために街を出て行くとしても、行く当てもない。
だけど、このままじゃもっと皆を危険に曝すことになるかもしれない。厳しいところもあるけれど、とてもあたたかくて親切な人達を自分の所為で。
そうは言っても、せっかくこんなに素晴らしいところに来られたのに……
「どうしたらいいんだよ……」
いくら考えたって結論なんか出なかった。そして、ゆっくりと空が白んでいく。
すると、強い空腹感が襲ってくるのが分かった。
「こんな気分でも腹は減るんだな……」
そんな自分にたまらない嫌悪感がある。
とは言え、日が昇ると、
「あ、リセイ、起きてた! おはよう! おなかすいたんじゃない? 昨夜は結局、夕ご飯食べないで寝ちゃってたもんね。ご飯用意できてるよ」
そう。マッサージの途中で眠ってしまってそのまま起きてこなかったリセイのために、ティコナはいつもより早く起きて朝食を用意してくれたのだ。
でも、目の下にクマを浮かばせた彼に気付いて、
「どうしたの? どこか痛いの?」
心配そうに訊いてきたのだった。
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