394 / 398
転生の章
勝手に死ぬなよ
しおりを挟む
トーイに言われるまでもなく俺だって死にたくはない。だが人間って奴はいつかは死ぬんだ。それが早いか遅いかの違いでしかねえ。
それに、<奇跡の生還>みたいな話であるじゃねえか。
『医者にも見放された末期ガンの患者が奇跡的に回復した』
なんて話がよ。俺は前世の記憶が蘇っちまうような途方もねえ経験をした人間だぜ? もしかしたらそういう奇跡がまた起こる可能性だってゼロじゃねえだろ。
それに、笑顔で穏やかに過ごすことで免疫力を上げて回復するなんてことも、あるかもしれねぇし。
と、少しばかり期待してみたんだが、どうやらさすがに二度目の奇跡はなさそうだ。
それに、アントニオ・アークは元々、リーネ達と暮らし始めてからは穏やかに笑顔で過ごせてきたんだ。それでもなおガンになったってんなら、そりゃもうそういうことなんだろう。
『少しばかり免疫力を上げたくらいじゃ対処できないガンだった』
ってな。
でも……ちくしょう……悔しいよな。なんで俺なんだよ……トーイも言ってた通りラーナもまだ小さくて、これからまだまだ手本を見せてやらなきゃいけなかったってのによ……
なんて、泣き言を並べたところで現実ってやつはなかったことにはなってくれない。となれば、どれだけ時間が残されてるか分からねえが、やれることをやるしかねえか。
リーネ三十歳。トーイ二十歳。カーシャ十六歳。マリーチカ十歳。マリヤ七歳。ボリス八歳。ペトロ六歳。ラーナ四歳。
考えてみりゃ、リーネもトーイももう立派な大人だ。カーシャだって、<目が見えないというハンデ>はありつつも、ほとんど大人と言っていいだろう。しかもマリーチカは、まだ十歳だってのに家の中のことをバリバリとこなしてくれる。マリヤも負けじと頑張ってくれてる。ボリスとペトロも、暖炉の掃除や風呂の湯沸かしや薪割りや家の修繕の手伝いもしてくれる。
別に俺があれこれ言わなくてもだ。今のアーク家は、すでにリーネとトーイを中心に動いてるんだよ。事実上の世代交代は済んでるんだ。
それを考えたら、実際には俺の役目はもう終わっているといってもいいのかもしれない。リーネやトーイだって、ほとんど俺と同じことができるようになってるんだよ。
ああ……なんだ……やっぱりもう大丈夫なんじゃねえのかな。おおかた百二十年年も頑張ったことだし、さすがにそろそろゆっくりさせてもらえるってことかもしれない。
これで阿久津安斗仁王のやったことが許されたわけじゃないかもしれねえが、でもまあ、過去には戻れないしな。
何一つ悔いのない人生なんて、そりゃ滅多にないだろ。
それに、<奇跡の生還>みたいな話であるじゃねえか。
『医者にも見放された末期ガンの患者が奇跡的に回復した』
なんて話がよ。俺は前世の記憶が蘇っちまうような途方もねえ経験をした人間だぜ? もしかしたらそういう奇跡がまた起こる可能性だってゼロじゃねえだろ。
それに、笑顔で穏やかに過ごすことで免疫力を上げて回復するなんてことも、あるかもしれねぇし。
と、少しばかり期待してみたんだが、どうやらさすがに二度目の奇跡はなさそうだ。
それに、アントニオ・アークは元々、リーネ達と暮らし始めてからは穏やかに笑顔で過ごせてきたんだ。それでもなおガンになったってんなら、そりゃもうそういうことなんだろう。
『少しばかり免疫力を上げたくらいじゃ対処できないガンだった』
ってな。
でも……ちくしょう……悔しいよな。なんで俺なんだよ……トーイも言ってた通りラーナもまだ小さくて、これからまだまだ手本を見せてやらなきゃいけなかったってのによ……
なんて、泣き言を並べたところで現実ってやつはなかったことにはなってくれない。となれば、どれだけ時間が残されてるか分からねえが、やれることをやるしかねえか。
リーネ三十歳。トーイ二十歳。カーシャ十六歳。マリーチカ十歳。マリヤ七歳。ボリス八歳。ペトロ六歳。ラーナ四歳。
考えてみりゃ、リーネもトーイももう立派な大人だ。カーシャだって、<目が見えないというハンデ>はありつつも、ほとんど大人と言っていいだろう。しかもマリーチカは、まだ十歳だってのに家の中のことをバリバリとこなしてくれる。マリヤも負けじと頑張ってくれてる。ボリスとペトロも、暖炉の掃除や風呂の湯沸かしや薪割りや家の修繕の手伝いもしてくれる。
別に俺があれこれ言わなくてもだ。今のアーク家は、すでにリーネとトーイを中心に動いてるんだよ。事実上の世代交代は済んでるんだ。
それを考えたら、実際には俺の役目はもう終わっているといってもいいのかもしれない。リーネやトーイだって、ほとんど俺と同じことができるようになってるんだよ。
ああ……なんだ……やっぱりもう大丈夫なんじゃねえのかな。おおかた百二十年年も頑張ったことだし、さすがにそろそろゆっくりさせてもらえるってことかもしれない。
これで阿久津安斗仁王のやったことが許されたわけじゃないかもしれねえが、でもまあ、過去には戻れないしな。
何一つ悔いのない人生なんて、そりゃ滅多にないだろ。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる