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人生の章

<アーク家の家長>としての俺の権限で

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そうしてようやく落ち着いたらしいマリーチカとカーシャをそれぞれ椅子に座らせて、俺は敢えて言う。

「二人がトーイのことを愛してくれてるのは分かった。だがそれを承知した上で俺は、リーネとトーイの結婚をここに宣言する。これは<アーク家の家長>としての俺の権限で決めたことだ。異論があるなら聞くが、決定は覆らない」

ああそうだな。典型的な<強権発動>だ。でも、今のリーネやトーイにマリーチカやカーシャの気持ちを無視できない以上、誰かが<憎まれ役><嫌われ役>を引き受けなきゃいけないんだよ。

いずれはリーネやトーイが俺の役目を果たす時があるとしても、今は俺の役目なんだ。

法律ってもんの役割も結局はそういうことだと思う。意見が対立したり互いの利益が衝突したりした場合に、法律を基に裁定を下すことで白黒つけるんだよ。不利益を被った方はもちろん納得できないだろうが、だからといって実力行使で自分の主張を押し通そうとするのは、正しいのか?

そう考えると、法律は決して、

<正義を為すためにあるもの>

ってわけじゃないってのが分かるよな。どこまでも、

<社会秩序を守るためのもの>

でしかないんだ。なるべく最大公約数的に、

『たぶんこうするのが正義ってことになるんじゃないかな~』

と考えられて作られてるだけで、法律自体が正義ってわけじゃない。それをはき違えるから<正義マン>みてえのが出てくるんだろうしよ。

そして、恋愛感情的なものについてはなかなか法律では縛りにくい。そこまで法律で縛られてるような国に住みたいか? 恋愛感情を拗らせて危害を加えるような事態についてはそれはもう恋愛云々で済まされるようなことじゃないから法律も適用できるだろうが、

『誰が誰を好きになって付き合うか否か』

なんてことにまで法律は関われないだろ? でまあ、今回は<アーク家>の中の問題でもあったから、家長である俺が裁定を下すわけだ。リーネやトーイを恨ませるわけにもいかないしな。

そして俺は、宣言した上で、

「マリーチカやカーシャやイワンにとってはつらい話だと思う。だから恨むなら俺を恨め。俺が決めたことだ。責任は俺にある。アーク家の家長である俺にはその責任を負う義務がある。家庭を持つというのは、そういうことだ。みんなも忘れないでほしい」

とも告げた。

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

リーネもトーイもイワンもカーシャもマリーチカも、誰も無言だった。そりゃそうか。いたたまれないもんな。

唯一、泣き疲れてリーネに抱かれて眠ってるマリヤだけが、穏やかな表情をしていたのだった。

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