376 / 398
人生の章
<アーク家の家長>としての俺の権限で
しおりを挟む
そうしてようやく落ち着いたらしいマリーチカとカーシャをそれぞれ椅子に座らせて、俺は敢えて言う。
「二人がトーイのことを愛してくれてるのは分かった。だがそれを承知した上で俺は、リーネとトーイの結婚をここに宣言する。これは<アーク家の家長>としての俺の権限で決めたことだ。異論があるなら聞くが、決定は覆らない」
ああそうだな。典型的な<強権発動>だ。でも、今のリーネやトーイにマリーチカやカーシャの気持ちを無視できない以上、誰かが<憎まれ役><嫌われ役>を引き受けなきゃいけないんだよ。
いずれはリーネやトーイが俺の役目を果たす時があるとしても、今は俺の役目なんだ。
法律ってもんの役割も結局はそういうことだと思う。意見が対立したり互いの利益が衝突したりした場合に、法律を基に裁定を下すことで白黒つけるんだよ。不利益を被った方はもちろん納得できないだろうが、だからといって実力行使で自分の主張を押し通そうとするのは、正しいのか?
そう考えると、法律は決して、
<正義を為すためにあるもの>
ってわけじゃないってのが分かるよな。どこまでも、
<社会秩序を守るためのもの>
でしかないんだ。なるべく最大公約数的に、
『たぶんこうするのが正義ってことになるんじゃないかな~』
と考えられて作られてるだけで、法律自体が正義ってわけじゃない。それをはき違えるから<正義マン>みてえのが出てくるんだろうしよ。
そして、恋愛感情的なものについてはなかなか法律では縛りにくい。そこまで法律で縛られてるような国に住みたいか? 恋愛感情を拗らせて危害を加えるような事態についてはそれはもう恋愛云々で済まされるようなことじゃないから法律も適用できるだろうが、
『誰が誰を好きになって付き合うか否か』
なんてことにまで法律は関われないだろ? でまあ、今回は<アーク家>の中の問題でもあったから、家長である俺が裁定を下すわけだ。リーネやトーイを恨ませるわけにもいかないしな。
そして俺は、宣言した上で、
「マリーチカやカーシャやイワンにとってはつらい話だと思う。だから恨むなら俺を恨め。俺が決めたことだ。責任は俺にある。アーク家の家長である俺にはその責任を負う義務がある。家庭を持つというのは、そういうことだ。みんなも忘れないでほしい」
とも告げた。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
リーネもトーイもイワンもカーシャもマリーチカも、誰も無言だった。そりゃそうか。いたたまれないもんな。
唯一、泣き疲れてリーネに抱かれて眠ってるマリヤだけが、穏やかな表情をしていたのだった。
「二人がトーイのことを愛してくれてるのは分かった。だがそれを承知した上で俺は、リーネとトーイの結婚をここに宣言する。これは<アーク家の家長>としての俺の権限で決めたことだ。異論があるなら聞くが、決定は覆らない」
ああそうだな。典型的な<強権発動>だ。でも、今のリーネやトーイにマリーチカやカーシャの気持ちを無視できない以上、誰かが<憎まれ役><嫌われ役>を引き受けなきゃいけないんだよ。
いずれはリーネやトーイが俺の役目を果たす時があるとしても、今は俺の役目なんだ。
法律ってもんの役割も結局はそういうことだと思う。意見が対立したり互いの利益が衝突したりした場合に、法律を基に裁定を下すことで白黒つけるんだよ。不利益を被った方はもちろん納得できないだろうが、だからといって実力行使で自分の主張を押し通そうとするのは、正しいのか?
そう考えると、法律は決して、
<正義を為すためにあるもの>
ってわけじゃないってのが分かるよな。どこまでも、
<社会秩序を守るためのもの>
でしかないんだ。なるべく最大公約数的に、
『たぶんこうするのが正義ってことになるんじゃないかな~』
と考えられて作られてるだけで、法律自体が正義ってわけじゃない。それをはき違えるから<正義マン>みてえのが出てくるんだろうしよ。
そして、恋愛感情的なものについてはなかなか法律では縛りにくい。そこまで法律で縛られてるような国に住みたいか? 恋愛感情を拗らせて危害を加えるような事態についてはそれはもう恋愛云々で済まされるようなことじゃないから法律も適用できるだろうが、
『誰が誰を好きになって付き合うか否か』
なんてことにまで法律は関われないだろ? でまあ、今回は<アーク家>の中の問題でもあったから、家長である俺が裁定を下すわけだ。リーネやトーイを恨ませるわけにもいかないしな。
そして俺は、宣言した上で、
「マリーチカやカーシャやイワンにとってはつらい話だと思う。だから恨むなら俺を恨め。俺が決めたことだ。責任は俺にある。アーク家の家長である俺にはその責任を負う義務がある。家庭を持つというのは、そういうことだ。みんなも忘れないでほしい」
とも告げた。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
リーネもトーイもイワンもカーシャもマリーチカも、誰も無言だった。そりゃそうか。いたたまれないもんな。
唯一、泣き疲れてリーネに抱かれて眠ってるマリヤだけが、穏やかな表情をしていたのだった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる