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人生の章

お前にもこれからそれを

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『マリーチカが邪魔なら俺に譲ってくれりゃいい。なんだったらプラウの一つとでも交換してやってもいいぞ。お前が俺の幼馴染だから特別だ』

俺がそう口にしたら、アンナは本当にマリーチカを俺に寄越しやがった。新品のプラウと引き換えに。今の旦那はそもそもマリーチカを愛してねえから、実の娘もできたってことで要らなくなったってのは分かるが、実の母親であるはずのアンナがあっさりと我が子を手放したことには、呆れるね。ましてや、

<子供を慰み者にしてるという噂のある男>

によ。まあそれは根も葉もないただの濡れ衣だが、にしたってよお。

でもまあ、そういうことがあるのは事実だ。自分の子供を人間だと思ってりゃ、親にこうやって捨てられるってのがどれほどのことか想像もつくだろうに、家畜としか思ってねえから、

『要らなきゃ捨てる』

なんてえ考えが当たり前に出てきちまうんだろうなとしか思わねえな。

その一方で、これも現実だ。現実ならそれを認めるしかねえ。それに、

「トーイ! 今日から一緒だね♡」

と、マリーチカ当人は、実の親に捨てられたことをむしろ喜んでやがる。これについても結局は、アンナんとこじゃ家畜扱いしかされねえから、子供からさえ愛想を尽かされてたってことだな。逃げ出したかったということだろう。ましてや拾われた先がトーイの家となりゃ、そりゃ嬉しいか。

ただし、こうなると穏やかじゃねえのがカーシャだ。

「なんであなたがくんのよ!」

とお怒りである。でもその彼女に、俺は、

「まあそう言うな。カーシャだって実の親が『要らない』って言うから俺んとこに来ることになったんだ。それと同じだよ」

と諭す。すると彼女は、

「お父さんのバカ! お人よし! オタンコナス!!」

とか言いながら俺を叩いた。叩いた上で、

「バカぁ……!」

って拗ねた様子で抱きついてくる。トーイのことを異性として好きになりつつ、その一方で今でも俺のことは好きでいてくれてるんだ。父親として。

「悪い……でも、俺の子供になっちまった以上は諦めてくれ……」

言いながら俺もカーシャを抱き締める。

そんな俺とカーシャの様子を、

「げー……」

などと口にしながらマリーチカが嫌悪感を隠そうともせず見ている。でもこれも無理はねえな。自分を家畜としか見ねえ、それどころか<邪魔になった家畜>としか見てねえ父親に対して抱きつきたいとか思わねえだろうしよ。

ただな、マリーチカ。カーシャにとっては違うんだよ。俺はお前の父親だった奴と違って、カーシャに対して人間として接してる。お前にもこれからそれを知っていってもらうさ。

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