前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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人生の章

実の親に愛されていなかった

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『実の子じゃないから』

まあ、どうしてもそういうのがあるのは俺も否定はしねえよ。俺は実の子じゃねえリーネもトーイもイワンもカーシャもマリヤも愛せちゃいるが、イワンやカーシャやマリヤが俺のところに来ることになったのは、

『実の親に愛されていなかった』

からだしな。実の親でさえ子供を愛せないことは現にあるんだ。

『親は必ず子供を愛している』

なんざ、それこそお花畑の夢想だろ。『親は必ず子供を愛している』なんてのが事実なら、虐待死も子捨ても存在しねえだろが。

なにより、阿久津安斗仁王あんとにおは、実の子であるゆかりを一ミリも愛してなかった。こんな完璧な証拠があるか。阿久津安斗仁王あんとにお一人が実の子を愛していなかった事実があるだけで、

『親は必ず子供を愛している。なんてのは嘘』

てえことになるからな。

だから、『実の子じゃないから愛せない』ってのも、あるのは事実だと俺も思うわけだ。

けどな、

『我が子として愛せない』

ってのと、

『子供を人間扱いしない』

ってのは別の話なんだよ。『実の子じゃなきゃ愛せないから虐待していい』ってんなら、てめえは赤の他人を片っ端から虐待すんのかよ? しねえよなあ? ましてや自分より強え相手にはそんなことできねえよなあ? ってこたあ、

『弱い相手にしかイキがれねえ』

のは事実だよなあ? そんな奴が<親>だって? 笑わせんな!

とは言っても、それでマリーチカの今の父親を責めたところで問題は解決しねえよな。なにしろ、

『愛せねえ』

のはどう足掻いたって事実なんだからよ。

だったらどうするか?

「アンナ。もしあれだったら俺んとこでマリーチカを預かってもいいぞ?」

アンナにそう持ち掛けた。すると彼女は露骨に嫌悪感を顔に出して、

「あんたまさか本当に……?」

とか訊いてきやがった。『俺が子供を慰み物にしてる』ってえ噂を耳にしたんだろう。だが、

「ふん。どうにでも好きに取りやがれ。けどな、トーイやカーシャやマリヤの様子がすべてだ。お前が俺をどう思おうが勝手だが、マリーチカが邪魔なら俺に譲ってくれりゃいい。なんだったらプラウの一つとでも交換してやってもいいぞ。お前が俺の幼馴染だから特別だ」

と俺は言い放った。まあそれは間違いなく<人身売買>ではあるものの、プラウ一つ分程度ならそれを目当てに俺に子供を売りつけようなんて奴もそうは出ねえだろうさ。なにしろ、家畜として使うってんなら、プラウ一つ分どころじゃねえ値打ちがあるはずだからな。

その程度で譲っていいと考えるってことは、本当に『要らない』ってことなわけだ。

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