347 / 398
人生の章
リーネと俺が出逢ってから十三年が
しおりを挟むそんな俺達家族の暮らしは、リーネと俺が出逢ってから十三年が過ぎていた。リーネは二十六(実年齢はたぶん二十五)となり、トーイとイワンもだいたい十四くらい(実年齢はたぶん十三くらい)、カーシャは十(実年齢はたぶん九)になっていた。
そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。
一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。
「僕がリーネを幸せにする!」
堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、
「ありがとう。嬉しいよ、イワン」
笑顔で応えてたりもする。
基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。
で、カーシャはと言うと、
「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」
竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。
「ありがとう! カーシャ!」
礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。
そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、
「あ、マリヤおしっこした」
カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。
「おお、おお」
俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。
マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。
『男じゃなきゃ要らない』
と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、
「赤ん坊、要らないかい?」
ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、
「要らないんなら、貰う」
と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。
ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。
何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。
そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。
一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。
「僕がリーネを幸せにする!」
堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、
「ありがとう。嬉しいよ、イワン」
笑顔で応えてたりもする。
基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。
で、カーシャはと言うと、
「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」
竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。
「ありがとう! カーシャ!」
礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。
そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、
「あ、マリヤおしっこした」
カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。
「おお、おお」
俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。
マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。
『男じゃなきゃ要らない』
と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、
「赤ん坊、要らないかい?」
ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、
「要らないんなら、貰う」
と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。
ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。
何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる