前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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家族の章

今はただ慣れるだけでいい

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家に戻ると今度は早速、鉄を打ってもらった。品物を作るのはまだまだ先とはいえ、まずはどういうものかを実際に体で経験してもらうんだ。

だが、

「あ……っ!」

俺が見てる前でだったからか、力が入り過ぎたらしくて勢いよく振り上げたら槌が手からすっぽ抜けて壁にガツン!とぶつかった。

「大丈夫ですか!?」

隣の部屋でイワンやカーシャと一緒に勉強をしてたリーネが物音に驚いて顔を出す。

「ああ。大丈夫だ。槌がすっぽ抜けて飛んだだけだよ」

俺は床に落ちた槌を拾い上げながら応える。

「ごめんなさい……」

トーイはしょげかえってたが、

「これは大人が使うものだ。子供が使うように考えて作られちゃいない。上手く使えなくて当然なんだよ。次から気を付けてくれたらいい」

俺は敢えて叱らなかった。しょげかえってるってことは、トーイ自身が、

『マズいことをした』

と理解してるってことだ。だから『次から気を付けてくれたらいい』と、

『好ましくないことだったが想定の内だ』

と伝えるわけだ。これがまったく悪びれてなかったらきつい言い方をする必要もあったかも知れないが、本人がすでに反省してるのにその上で被せてくる必要はないだろ?

未熟なんだから<失敗>はつきものだ。そして、失敗することもあらかじめ想定しておいて、それが致命傷にならないようにしておくのは指導する側の役目のはずだ。

「力む必要はない。今はただ慣れるだけでいい」

改めてそう告げる。まだ実年齢じゃ六歳のトーイが上手くできなくて当たり前だろ。むしろできる方がおかしい。

それに、火の粉を防ぐための面も着けてもらってたからな。視界も悪い。

慣れてくると火の粉が自分に飛んでこないように叩くこともできるんだが、最初はそうじゃないし、何より腕が短いから距離が近いし火の粉を浴びやすい。

面は、革のベルトを付けた顔を覆える大きさの木の板に五ミリほどのスリットを開けてそこにガラスの破片をはめて目を守るようにしてあるんだよ。ただ、ここで流通してるガラスはどうしても完全な無色透明ってわけじゃなくてそういう意味でも見えにくいんだよな。

だけど目を守る方が大事だし、敢えて使うわけだ。

金を出しゃゴーグルみたいなのも手に入るものの、そっちも完全な無色透明じゃないから多少視界が広くなるだけで、実は大して変わらない。俺も元の村で鍛冶屋をやってた時には持ってたが、ほとんど使ったことがない。高い上にちょっとしたことで割れるし火の粉がレンズに付いてすぐに汚れてさらに見えにくくなるんだな、これが。

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