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家族の章

仕事用のやり取り

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俺は続ける。

「だからその上で、今後も仕事とかで関わる分には、<仕事用のやり取り>で済ませとけばいい」

世の中にゃ、自分が誰かを虐げたことを、

『いつまでも根に持つな!』

とか言う奴がいたよな。はあ? だったらなんで、くだらねえスキャンダルを起こした芸能人とかがいつもでも許されなかったりしたんだよ? てめえが被害を受けたわけでもねえ不倫だのなんだのでいつまでもぐっだらぐっだらネチネチネチネチ言いやがって、いつまで根に持ってんだ? 自分がやられたわけでもねえことでそんだけ根に持つってこたあ、実際に被害を受けたことを根に持って何がおかしい?

それはつまり、ゆかりが阿久津安斗仁王あんとにおから受けた被害を一生根に持っててもおかしくねえってこった。だから俺はゆかりにも見捨てられた。それが何の不思議があるってんだよ?

だからこそ、

「イワン、改めて言う。お前の両親を赦せとは俺は思ってない。赦さなくていいし、むしろ赦すな。てめえのやったことを反省もしねえ奴なんざ赦す必要もないよ。ただ、赦す赦さないと、それを自分の幸せとを引き換えにするのとが本当に釣り合いが取れんのかどうかは別の話だってことだけは忘れないでほしい。

お前がつらいなら、俺達がそれを癒す。だから甘えてくれていい。両親のことなんかどうでもよくなるまで甘えてくれていいんだ。そのために俺はいる。そのために俺はお前を引き取ったんだ。俺の手が届くところにお前がいたからな。

お前があの両親の下に生まれたのは確かに不幸だったかもしれない。でも、お前の人生はそれだけで決まってしまうわけじゃないんだ。俺はそれをお前に、イワンに示したい。みんなに示したい。だから頼む。俺と一緒に幸せになってくれ。俺はみんなとこうして生きていたい」

そう言って深々と頭を下げた。

『俺と一緒に幸せになってくれ』

それは俺の、アントニオ・アークの本心だ。俺は今、間違いなく幸せなんだ。阿久津安斗仁王あんとにおには理解できなかった<幸せ>ってもんを、今、実感してるんだ。

そして俺が実感してるものを、イワンにも実感してほしいと思ってる。そのためには、イワンが抱えてる<闇>も含めて、受け止める必要がある。

『そんな昔のことは忘れろ!』

なんて無責任なことは言わねえ。『赦せねえ奴がいる』という事実を含めてそれがイワンっていう人間なんだ。<イワン・アーク>なんだ。

<リーネ・アーク>

<トーイ・アーク>

<カーシャ・アーク>

俺達は<家族>だ。俺の責任において俺が作った家族なんだよ。だから俺と一緒に幸せになってもらう義務が俺にはあるんだ。

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