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家族の章
俺はちっともカッコいいとは思わねえな
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『人間は綺麗事だけじゃ生きられない』
それは事実だ。今の俺だって別に綺麗事だけで生きてるわけじゃない。リーネやトーイやイワンやカーシャとこうやって暮らしてるのさえ、別に綺麗事を掲げたいわけじゃねえんだ。
『俺がそうしたいから』
ってえだけなんだよ。ただし、だからって自分より弱い相手に鬱憤をぶつけるのが『カッコいい』のかよ? お前はそれを『カッコいい』と思うのかよ? それをカッコいいと思うような奴なんざ、俺はちっともカッコいいとは思わねえな。
で、こう言うと、
『お前にカッコいいと思われたくなんかねえわwww』
とか言うんだろ? そうかい。じゃあ精々、そんなお前をカッコいいと思ってくれる奴らとだけツルんどけよ。こっちに関わってくんな。そうすりゃこっちからも関わらねえ。
そんな俺に、リーネはさらに言う。
「でも、私達はこうやってトニーさんに助けてもらえました。だけど、他にもたくさん、つらい思いをしてる子はいると思うんです。そういう子に、私は何をしてあげたらいいんでしょう……?」
ってな。けど、これに対して俺は、
「リーネがそう思える娘に育ってくれたのは、俺はとても嬉しい。けどな、そんなリーネでも、俺がイワンやカーシャを連れ帰った時に不安になったんだろ? それこそが答だ」
と返す。
「あ……!」
ハッとなる彼女にさらに、
「俺がもし無限に子供を育てられる奴だったら、無限に愛情を注げる奴だったとしたら、リーネはそんな不安を抱くことはなかっただろ? 俺だってその程度だ。人間には限界ってもんがある。無限に手を差し伸べることなんてできはしねえんだよ。世の中にゃそれをわきまえず『可哀想だ』ってんで片っ端から抱え込んでしまう奴もいる。でも、能力が足りないから飢えさせたり病気にさせたりってことが起こったりもする。
しかも世の中にゃ、『すべての苦しんでる人を俺が救う!』とか言って、『その邪魔をする奴は殺す!』とか言って、無茶なことをしでかす奴もいる。自分のその行いが結局はまた<苦しむ人>を作るってのによ。それじゃ意味がないだろ?
できないんなら最初から関わるな。俺は、トーイもイワンもカーシャも育てられる算段が立ってたからこそそうしただけだ。それでもリーネは不安を覚えた。俺にそれほどの力があるようには思えなかったからだろ? リーネやトーイのことも変わらずに愛してやれる器があるとは思えなかったからだろ? その不安は正しい。俺はたまたまできたが、『できないものはできない』ってのも事実なんだよ。それを忘れないでほしい。
リーネやトーイやイワンやカーシャが俺と出逢えたのは、たまたまだ。たまたま運が良かっただけ。それだけなんだ」
と語ったんだ。
それは事実だ。今の俺だって別に綺麗事だけで生きてるわけじゃない。リーネやトーイやイワンやカーシャとこうやって暮らしてるのさえ、別に綺麗事を掲げたいわけじゃねえんだ。
『俺がそうしたいから』
ってえだけなんだよ。ただし、だからって自分より弱い相手に鬱憤をぶつけるのが『カッコいい』のかよ? お前はそれを『カッコいい』と思うのかよ? それをカッコいいと思うような奴なんざ、俺はちっともカッコいいとは思わねえな。
で、こう言うと、
『お前にカッコいいと思われたくなんかねえわwww』
とか言うんだろ? そうかい。じゃあ精々、そんなお前をカッコいいと思ってくれる奴らとだけツルんどけよ。こっちに関わってくんな。そうすりゃこっちからも関わらねえ。
そんな俺に、リーネはさらに言う。
「でも、私達はこうやってトニーさんに助けてもらえました。だけど、他にもたくさん、つらい思いをしてる子はいると思うんです。そういう子に、私は何をしてあげたらいいんでしょう……?」
ってな。けど、これに対して俺は、
「リーネがそう思える娘に育ってくれたのは、俺はとても嬉しい。けどな、そんなリーネでも、俺がイワンやカーシャを連れ帰った時に不安になったんだろ? それこそが答だ」
と返す。
「あ……!」
ハッとなる彼女にさらに、
「俺がもし無限に子供を育てられる奴だったら、無限に愛情を注げる奴だったとしたら、リーネはそんな不安を抱くことはなかっただろ? 俺だってその程度だ。人間には限界ってもんがある。無限に手を差し伸べることなんてできはしねえんだよ。世の中にゃそれをわきまえず『可哀想だ』ってんで片っ端から抱え込んでしまう奴もいる。でも、能力が足りないから飢えさせたり病気にさせたりってことが起こったりもする。
しかも世の中にゃ、『すべての苦しんでる人を俺が救う!』とか言って、『その邪魔をする奴は殺す!』とか言って、無茶なことをしでかす奴もいる。自分のその行いが結局はまた<苦しむ人>を作るってのによ。それじゃ意味がないだろ?
できないんなら最初から関わるな。俺は、トーイもイワンもカーシャも育てられる算段が立ってたからこそそうしただけだ。それでもリーネは不安を覚えた。俺にそれほどの力があるようには思えなかったからだろ? リーネやトーイのことも変わらずに愛してやれる器があるとは思えなかったからだろ? その不安は正しい。俺はたまたまできたが、『できないものはできない』ってのも事実なんだよ。それを忘れないでほしい。
リーネやトーイやイワンやカーシャが俺と出逢えたのは、たまたまだ。たまたま運が良かっただけ。それだけなんだ」
と語ったんだ。
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