前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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家族の章

みんなにはそのことを

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確かに俺も、体は健康な若い男だから『溜まる』しそういう気分になることもある。だから自分で始末することもある。<トイレ>として作った小部屋でな。<オカズ>がねえから、元の村で筆おろししてもらった時のこととかを思い出してって形で。

まあそれはそれとして、ここじゃ、<おまる>に用を足してそれを穴を掘って捨てて火を点けて燃やすという形で基本的には処分される。そして燃やした灰を土に混ぜたりもする。<堆肥>という形では利用してない。

その発想がないんだ。それに、前世でも聞いたんだが、排泄物はそのまま撒いたりすると逆に枯らしちまったりするらしいな。なんか、土に戻る際に、植物には欠かせない養分を消費しちまって、それで育たなくなるとか。加えて細菌で病気になったりということもあるみたいなことも聞いた。

だからそういう経験がかつてあって、それでそのまま撒いちゃダメだってのを経験則的に理解してるんだと思う。畑は基本的に、半分ずつ一年ごとに耕して使うことにしてるそうだ。そうやって休ませないと土が駄目になることも知ってるんだろうな。

前世じゃ便利な肥料とかも簡単に手に入ったから忘れられてる<工夫>がここじゃまだ生きてるんだ。でもそれだと、

『全部の畑で毎年作付けできれば収穫量は倍になりそうなのにな』

と思わされるのはある。だがそれはただの<素人考え>なんだよ。いくら前世の世界ほど文明は発達してなくても、ここの連中はこの不便な社会で生きてる。それはつまり、

<生きていけるだけの知恵>

は持ってるってこった。決して、

<ただの馬鹿>

じゃねえ。それは事実なんだ。体力的にも確実に前世のひ弱な連中に比べりゃ上だしな。

だから俺は、ここの連中のことは『嫌い』でも、『蔑む』つもりはねえんだよ。特に畑仕事とかは、俺にはよく分かんねえし、それができるだけでも実際にはすげえことなんだ。だからそのことについても、

「村の連中のことは、信頼する必要はない。俺達とは考え方が違うしな。けど、だからってバカにするのは違う。彼らは彼らで、俺達にできないことをやってみせてるんだ。彼らが作る作物のおかげて俺達はこうして生きてられる。

どんなに考えが合わない連中でも、好きになれない連中でも、バカにするな。見下すな。蔑むな。嘲笑うな。人間ってのは、自分一人だけじゃ生きていけねえ弱っちい生き物だ。誰かの力を借りなきゃ生きられない。それを忘れないでいてほしい。好きになれない相手でも、力を借りなきゃいけないこともある。

リーネ、トーイ、イワン、カーシャ。みんなにはそのことをわきまえていてほしいんだ」

食事の後とかには、そう話をさせてもらってる。

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