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家族の章

おっかねえ話だ

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ああ、そう言えばカーシャについて、村の連中は、

『慰み物にするだけならそういや目なんか見えなくてもいいよな』

的なことも言ってるらしい。これも、<噂話大好きおしゃべりスピーカー女>がそれらしいことを匂わせてきてたな。

だが俺は、華麗にスルーする。言いたい奴は勝手に言ってろ。そんな噂流してても、どうせ俺が作るもんをあてにするしかねえしな。

隣村にも鍛冶屋はいるが、今も当たり前のことだが隣村での需要に応えるだけで手一杯で、こっちの村までカバーする余裕はないそうだ。てか、むしろ供給不足気味みたいで、急いでもう一人育てにゃいけねえのに、鍛冶屋にしようとしてた子供が病気で死んで困ったとか、こっちにまで噂が届いてる。

大変だなあ。

幸い、こっちの村は俺が何とか支えられてるから別に問題ないんだが、どうやらそれで一儲けしようとしてるのがいるらしく、俺にスペイドを複数注文してきた奴がいた。

まあ、そのくらいなら何とかなるから引き受けたけどよ。で、納品に行ったらホクホク顔で、

「ありがとうよ」

だとさ。買ったもんをどうしようがそりゃ勝手だが、そいつの所為で他の需要を圧迫するようになったら、マズいことになるかもな。

というのも、あったんだよ。俺が以前暮らしてた村で。親父にプラウをいくつも注文した奴がいて、それで他の注文が後回しになって、そしたら、腕のいい鍛冶屋である親父のことは責められねえからっていくつも注文出してそれを他所の村に流してた奴がリンチを受けて殺されたってことが。

なるほど親父は単に商売として受けただけだし、それを他の村に流してた奴もあくまで商売としてやってただけだろう。けど、村の需要を後回しにしたんじゃそれは村に損害を与える行為だったわけで、で、

『村に損害を与える奴には制裁を』

ってなことで、リンチにまで至ったと。

おっかねえ話だ。

と同時に、愚かな話だな。

人間ってヤツは、自分の利益を優先する。自分が所属してるコミュニティの利益を優先する。そういうのが基本的には大多数だろう。なのに、自分が所属してるコミュニティに不利益を与えてまで己だけが利益を得ようとする奴は、

<敵>

ってことになるわな。んでもって、

『敵は容赦しない』

みたいな話になると。実に剣呑剣呑。村の連中のことは嫌いだが、仮にもコミュニティの末席に加わってる以上は、不利益を与えるような真似はしちゃいけないよなあ。そんなことをしたら厄介事が増えるだけだろ。

その程度はわきまえなきゃいけないってことだ。大人なら。

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