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家族の章

さらに二年が過ぎた

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で、さらに二年が過ぎた。リーネと一緒にここに暮らし始めてからは五年だ。

つまりリーネは今、たぶん十八歳(実年齢だとたぶん十七)。十五くらいで大人の仲間入りをするこの世界じゃ、普通ならもう嫁に行って子供の一人もいてもおかしくない歳だ。

けれど、彼女はそんなつもりはまったくないようだ。そして俺も、村の連中にリーネを嫁がせるつもりはねえ。あいつらの生き方考え方を面と向かって否定するつもりはねえが、そこにリーネを差し出すつもりもねえよ。別にこうして俺達家族で生きていきゃいい。結婚もしなくていい。子供も作らなくていい。それでこの世界の人間が滅ぶってなら勝手に滅びろ。俺達の知ったことじゃない。

とは思うんだが、村じゃなんだかんだと子供が生まれて人数も増えていってるからな。隣村との交流も本格的になって、人間の行き来もあるようだ。隣村に移り住んだ奴もいるし、逆に隣村から嫁いできた女もいる。だから、『勝手に滅びろ!』とか俺が思ってるくらいじゃ人間は滅びねえってことだな。

前世でも、自分が幸せじゃねえからって、

『こんなクソな世界は滅びろ!』

とか思ってた奴もいたみてえだが、お前が不幸だろうがどうだろうが、世界ってなあそんなことを気にしちゃくれねえんだよ。なんの力もねえ奴の妄想なんざ実現するわけねえだろ。身の程を知れ。

俺も、『勝手に滅びろ!』と思ったりしてるが、それあ、

『リーネやトーイやイワンやカーシャが不幸になるくらいなら人間なんて滅びちまえ!』

ってえだけで、別に俺が不幸だから滅びろって思ってるわけじゃねえよ。

それになあ、カーシャがよお、可愛いんだ♡

そして、そんなカーシャを、リーネが、トーイが、イワンが気にかけてくれてるのが嬉しくてよ。

「わあ! 立った、立った!!」

「お~っ!」

「すごい!」

リーネとトーイとイワンがそんな風に歓声を上げてくれたのは、カーシャが実年齢で二歳になった頃だった。目が見えねえ分、立ってどうにかしようって気が起きなかったらしくて、それまで立とうとしなかったんだ。

でも、俺は別に無理に立たせようとは思わなかった。カーシャ自身が、自分の周りにあるものを、耳と鼻と手で確かめ、四つん這いでゆっくり移動することで自らの安全を確保しようとしてるのを見ると、

『いや、確かに無理に立って歩く必要なくね?』

と感じたんだよ。だからそのままにしてた。なのに、

「タート!」

って言いながら立ち上がって俺の方に顔を向けるカーシャの姿に、込み上げてきちまったんだよな。

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