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家族の章

感動の実話!

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そんなことを考えつつも、俺達の毎日は淡々と穏やかに過ぎていった。

これは俺が、村の連中と穏当に付き合えるようにした結果でもあると思う。

村の連中に対しては、今も不愉快な思いはある。子供を家畜としか見ない連中の態度には、殺意さえ覚える。だが、それを表に出して何が変わる? 漫画やアニメじゃねえんだぞ? たまに、

『感動の実話!』

とかってえ触れ込みで、誰かが困難に立ち向かったってえのを基に<感動ポルノ映画>が作られたりもしてたみてえだが、俺はそういうのは大っ嫌いでよ。お話にするために<演出>を加えてる時点でもうぜんぜん別物になってるし、だいたい、後んなって背景とかが漏れ出てきたりすんじゃねえか。映画とはずいぶんと違う<事実>ってやつがよ。結局、金儲けのために利用してるだけだろ? 本気のドキュメントを作りてえなら<演出>なんか加えてんじぇねえよ。事実だけを垂れ流しとけ。それで感動できるかどうかは、受け手の問題だろ。感動できる奴はすりゃいいし、できねえ奴はしなくていい。

それも<現実>ってもんだろ? 見た奴を感動させて満足感を与えようとしてる時点でもう嘘くせえんだよ。反吐が出る。

だから俺も、自分の思ったままを綴ろうと思ってる。と言っても、俺の心の中だけでだが。

どっかの誰かが俺の思ってることを受信して文章にでも書き起こしててくれりゃありがたいと思いつつ、そうなるとどうせ書き手の<癖>みてえなもんが入り込んで、本当の俺自身の言葉にはならねえんだろうな。

俺の思ってるままに文章に書き起こされたりしたら、たぶん、炎上するだろう。で、炎上しねえように書き手が改変してたらもうそれは俺の言葉じゃねえ。ま、その辺りを考えることもできねえ、受信したそのまましか書けねえヘボに当たってくれることを願うぜ。

って、これも他愛のない妄想か……

なんてことを考えてるってことは、特別、記さなきゃいけねえ出来事が起こってねえってことなんだよ。そしてそれこそが<幸せ>なんだ。

今の暮らしを作り上げるまでは、確かに、鍛冶の仕事をできるようにしたり、風呂を作ったり、水の確保をどうしようか考えたり、食べ物をどうやって確保しようか考えたりみたいに、毎日のように新たにしなきゃいけないことがあった。でも、そういう<生活基盤>みたいなものが出来上がっちまうと、毎日なんか特別な出来事が起こるわけじゃねえし、そういうのはむしろ起こってほしくねえよな。

『何かイベントがなきゃ退屈で死にそう』

ってか? そういう奴は<刺激中毒>みたいなもんに陥ってんじゃねえのか? 俺は今、なんてことのない毎日が楽しくって仕方ねえんだけどな。

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