前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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家族の章

自称・優しい人

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イワンやカーシャを、リーネやトーイの承諾なく引き取ったことをあれこれ言う奴もいるかもしれねえが、子供を生む時だって先に生まれた子の承諾なんか取るか? 

『実の兄妹を作ることと、赤の他人の子供を引き取ることを一緒にすんな!』

とかホザく奴もいるだろうが、知らねえな。他所様の家庭の事情に何の権利があって口出しするのか分からねえ奴の寝言なんざ、聞こえねえよ。

それに、勝手なことをしてリーネやトーイの反発を受けることは、覚悟の上だ。加えて、イワンやカーシャにばかりかまけてリーネとトーイを蔑ろにするつもりもねえ。

下の子にばかりかまけて上の子を蔑ろにするような親の言うことなんざ聞く耳持たねえよ。

だが同時に、この調子で次々子供を引き取ってくるのもマズいと俺も分かってる。捨て犬や捨て猫をホイホイ拾ってきて飼いきれなくなって劣悪な飼育環境に陥るという本末転倒な<自称・優しい人>と同じになっちゃ意味がねえのも分かってる。

だから自制しなきゃならねえってのもな。

でも、だからこそ、自分で生きていけるようになってもらわなきゃとも思ってるんだ。

その辺りのバランスも考えなきゃな。

ただ、トーイはともかくリーネはもう、自分の力だけでも生きていけそうになってるとは感じる。カーシャの面倒まで押し付けようとはまだ思わないが、自分のことは自分でできるようになってるんだよ。家事はほぼ完璧だしな。

リーネがいるからこの家は回ってるってのもあるのは間違いない。だからこそ、

「いつもありがとうな」

と、ちゃんと口に出して労う。前世で女房やリサに対してはまったくしてこなかったことを、今はする。それをしなかったから後悔しかない人生の終わりを迎えたんだと思い知らされたからな。

高齢者施設にいた時にも、

『ガキは厳しく躾けるもんだ!』

とか考えて若い職員を『躾け』るんじゃなくて、ちゃんと労ってりゃ疎まれることもなかったんだって、分かるだろう?

その当たり前のことをしなきゃと思ってるだけだ。

そしたらリーネも、

「トニーさんこそ、いつもありがとうございます。私、トニーさんのところに来れて本当に良かった……♡」

なんて、嬉しいことを言ってくれるんだよ。女房やゆかりは言ってくれなかったことを、言ってくれるんだ。

前世じゃなんでそんなことにも気付かなかったのかねえ。俺は……

そんなこんなで、家のことはリーネに任せつつ、俺はカーシャを連れて村に下りる。村でも、カーシャに乳をくれる女に、

「いつもすまねえな」

丁寧に感謝するんだ。そしたら、

「いいっていいって。こっちも出過ぎて困ってるんだからさ♡」

言ってくれるんだ。

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