275 / 398
家族の章
彼女が窮状を訴えてるのに
しおりを挟む
俺が仕事をしてる時には、カーシャは俺の背中側にカゴを置いてそこに寝かせてる。鍛冶の仕事でガンガンと五月蠅いものの、彼女はそれについては早々に慣れてくれたようだ。そして、俺の体が盾になることで、その上でカゴの上に覆いをして火の粉が飛んだりはしないようにしてる。
さらに、
「ふ…ふあ……」
ぐずり出したらすぐにウサギの胃袋で作った水筒に保存してある乳を与えたり、小便や糞をしていたら風呂場に連れて行ってさっさと洗ってやった。暖炉で常に保温してる状態だからな。レンガで作ってあるからか割と湯も冷めにくく、暖炉の火が消えてからでも完全に水になってしまってることもない。
だからちょうどよかった。風呂場自体、暖炉のおかげでサウナ状態で寒くないしな。
それもあってか、カーシャは、ここの乳児によく見られるような肌荒れがほとんどなかった。ぐずらないのは、肌荒れが少なくて不快さが少ないからというのもあるのかもしれない。肌荒れで痒かったり痛かったりすれば、当然、ぐずるだろうしな。
そうして綺麗になったらまた母屋に戻って俺は仕事を再開する。
『リーネにやらせりゃいいじゃねえか』
と思うかもしれないが、それはリーネに責任を押し付けることになるだけだ。それに、リーネにも少しずつ手伝ってもらって、やり方を学んでいってもらってる。丸投げするんじゃなくてこうやって徐々に学んでもらうだけでいい。嫌でも大人になって子供作ればやる羽目になるんだからよ。その時に、
『そう言えばこんな風にしてたな』
って思い出してもらえればそれでいいんだよ。やり方が分からなくて苛々されたりオタオタされたりしないように。
子供に子供の面倒見させて事故を起こされてちゃ意味がないだろ。しかもその責任を子供に押し付けようとか、何のつもりだ。自分が手を抜きたいから押し付けておいて、その上、責任までおっかぶせるのか? 正気の沙汰とは思えないな。
俺はそんな大人でいたくねえぞ?
いずれにせよ、カーシャは元気に育ってくれてる。目は見えてねえが、生まれつきそうだから、本人には『目が見える』という感覚はそもそも生じないだろう。耳や鼻や触覚という、他の感覚でこの世界というものを知覚していくだけだろ。
その中に、俺という存在が大きくあって、そのことが安心感になってりゃそれでいいんだよ。
そして俺は、カーシャが機嫌よくしてる間に集中して仕事を行うようにした。で、彼女がぐずり出したら、
「どうした? カーシャ」
と穏やかに声を掛けるんだ。彼女が窮状を訴えてるのに無視したりはしない。
そんなことしてて信頼が得られるか。
さらに、
「ふ…ふあ……」
ぐずり出したらすぐにウサギの胃袋で作った水筒に保存してある乳を与えたり、小便や糞をしていたら風呂場に連れて行ってさっさと洗ってやった。暖炉で常に保温してる状態だからな。レンガで作ってあるからか割と湯も冷めにくく、暖炉の火が消えてからでも完全に水になってしまってることもない。
だからちょうどよかった。風呂場自体、暖炉のおかげでサウナ状態で寒くないしな。
それもあってか、カーシャは、ここの乳児によく見られるような肌荒れがほとんどなかった。ぐずらないのは、肌荒れが少なくて不快さが少ないからというのもあるのかもしれない。肌荒れで痒かったり痛かったりすれば、当然、ぐずるだろうしな。
そうして綺麗になったらまた母屋に戻って俺は仕事を再開する。
『リーネにやらせりゃいいじゃねえか』
と思うかもしれないが、それはリーネに責任を押し付けることになるだけだ。それに、リーネにも少しずつ手伝ってもらって、やり方を学んでいってもらってる。丸投げするんじゃなくてこうやって徐々に学んでもらうだけでいい。嫌でも大人になって子供作ればやる羽目になるんだからよ。その時に、
『そう言えばこんな風にしてたな』
って思い出してもらえればそれでいいんだよ。やり方が分からなくて苛々されたりオタオタされたりしないように。
子供に子供の面倒見させて事故を起こされてちゃ意味がないだろ。しかもその責任を子供に押し付けようとか、何のつもりだ。自分が手を抜きたいから押し付けておいて、その上、責任までおっかぶせるのか? 正気の沙汰とは思えないな。
俺はそんな大人でいたくねえぞ?
いずれにせよ、カーシャは元気に育ってくれてる。目は見えてねえが、生まれつきそうだから、本人には『目が見える』という感覚はそもそも生じないだろう。耳や鼻や触覚という、他の感覚でこの世界というものを知覚していくだけだろ。
その中に、俺という存在が大きくあって、そのことが安心感になってりゃそれでいいんだよ。
そして俺は、カーシャが機嫌よくしてる間に集中して仕事を行うようにした。で、彼女がぐずり出したら、
「どうした? カーシャ」
と穏やかに声を掛けるんだ。彼女が窮状を訴えてるのに無視したりはしない。
そんなことしてて信頼が得られるか。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
ひだまりを求めて
空野セピ
ファンタジー
惑星「フォルン」
星の誕生と共に精霊が宿り、精霊が世界を創り上げたと言い伝えられている。
精霊達は、世界中の万物に宿り、人間を見守っていると言われている。
しかし、その人間達が長年争い、精霊達は傷付いていき、世界は天変地異と異常気象に包まれていく──。
平凡で長閑な村でいつも通りの生活をするマッドとティミー。
ある日、謎の男「レン」により村が襲撃され、村は甚大な被害が出てしまう。
その男は、ティミーの持つ「あるもの」を狙っていた。
このままだと再びレンが村を襲ってくると考えたマッドとティミーは、レンを追う為に旅に出る決意をする。
世界が天変地異によって、崩壊していく事を知らずに───。
【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める
シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。
メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。
しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。
【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる